チェコ・フィルハーモニー管弦楽団日本公演(2003)
ヤナーチェク : シンフォニエッタ
ノヴァーク : 交響詩『タトラ山にて』
ドヴォルザーク : 交響曲第9番『新世界より』
指揮 : ズデニェック・マカル
この年の来日公演の指揮者は当初、オンドジェィ・クカルさんと告知されていました。
チェコの期待の若手指揮者もしくは次期首席指揮者なのかと思い色々調べてみたのですが、
そのプロフィールは全く分かりませんでした。
その後ズデニェック・マカルさんの首席指揮者就任が発表され、
日本公演の指揮もマカルさんに変更となりました。
ビエロフラーヴェクさんが短期間で退任した後、約10年振りのチェコ生まれの首席指揮者ということで、
そのニュースや就任記念公演の様子は日本にも度々伝えられていて、
チェコの音楽ファンが大変盛り上がっていることがよく分かりました。
ある雑誌のインタビューでマカルさんは、「チェコ・フィルの昔の音を取り戻したい」と話していました。
私もその「昔の音」をぜひ聴いてみたいと思いました。
確かにチェコ・フィルは、アルブレヒトさんの時代にはしっかりと縦横の揃った演奏が、
アシュケナージさんの時代にはクリアで華麗な音色が印象に残っていて、
それそれでとても良かったのですがやはり、あの「どこか懐かしいような響き」で、
ドヴォルザークやスメタナの曲が聴きたいというのが本音でした。
もっともマカルさんのいう「昔の音」とは、私がギリギリ実演に触れている
ノイマンさんの時代の音ではなく、その2代前のターリッヒさんの時代の音とのことでしたが、
チェコ・フィルの伝統的な音色を大切にするということでは、大歓迎の思いでした。
ヤナーチェク:シンフォニエッタ
多数のトランペットのエキストラが活躍する曲で、
生演奏ではなかなかいい状態の演奏に出会えない曲だと思います。
しかしさすがチェコ・フィルの演奏といった感じで、
この曲の模範演奏を聴けたように思います。
ノヴァーク:タトラ山にて
初めて聴く曲でした。約20分、終始暗めで叙情的な旋律の続く、
しみじみとした味わいの深い曲、そして演奏でした。
ドヴォルザーク:新世界より
長らく待ち望んでいたチェコ出身の指揮者によるチェコ・フィルの『新世界』。
当然ながら全く気をてらうことのない演奏で、
すべての楽章のすべてのフレーズが、説得力のある演奏内容となっていました。
1楽章。実演では初めて「繰り返しあり」の演奏に出合いました。
一瞬ハッとしますが、聴き手としては、もう一度さらに緊張感を持って曲に臨む気分になりました。
2楽章はこちらの思い入れもあるのですが、奏者が皆ほのぼのとした雰囲気で、
懐かしみながらこの超名曲を大切に演奏しているように見えました。
イングリッシュホルンによる有名な旋律は、明るくはっきりとした音色でした。
全体としてもこの「明るくはっきりとした音色」が印象的で、
これがマカルさんのいう「ターリッヒ時代の音」なのかなとも思いました。
私の望む、私の好きな『新世界より』の演奏に久しぶりに出会うことができ、
本当に幸せな気分でした。
なお、今回の来日公演にはフランスの巨匠ジャン・フルネさんも同行し、
全10公演中4公演を指揮しました。
ドビュッシー、フォーレ、ラヴェルの名曲を演奏し、
こちらも大きな話題となっていました。
(2003.11.20 大阪 ザ・シンフォニーホール)