チェコ・フィルハーモニー管弦楽団日本公演(1996)
ドヴォルザーク : 序曲『謝肉祭』
ドヴォルザーク : チェロ協奏曲
ドヴォルザーク : 交響曲第8番
チェロ : ミハエラ・フカチョーヴァ
指揮 : ウラディーミル・ヴァーレク
チェコ・フィル創立100周年の記念の年。
指揮者は当初、首席指揮者のアルブレヒトが予定されていましたが、
直前に辞任してしまったため、代役としてヴァーレクが来日。
ヴァーレクは当時、プラハ放送交響楽団の首席指揮者でした。
チェコ指揮界の重鎮でチェコ・フィルとも関係が深かったため、
抜擢されたようです。
曲目は予定通り、ドヴォルザーク、スメタナ、フチーク、ワインベルガーといった
お国もの一色の内容となりました。
チェコ・フィルはこの年の1月に、本拠地プラハのルドルフィヌムで創立100周年記念コンサートを開催しており、そこではビエロフラーヴェク、アルブレヒトが指揮をしていました。
チェコ・フィルの最初の演奏会を再現したプログラムで、
指揮者としては、クーベリック、ノイマンも参加する予定だったそうです。
しかし残念なことにノイマンは前年(1995年)9月、マーラーの交響曲第9番を録音した直後に急逝。
クーベリックは体調が思わしくなく、このコンサートの指揮台には上れませんでした。
チェコの名指揮者、コシュラーもこの頃亡くなっており、
今後のチェコ・フィルはどうなるのかと、心配で仕方のない時期でした。
当日の演奏は、どれもヴァーレクさんらしい、
スッキリした流れの良いものでした。
チェロ協奏曲は、フカチョーヴァさんの繊細で優雅な音が、
安定感抜群のチェコ・フィルの音と、
美しく馴染んでいました。
交響曲第8番も極めて自然な、テンポの良い演奏でした。
同郷の作曲家、オーケストラ、指揮者、ソリストによる演奏を
たっぷり聴けた満足感がありました。
が、多少印象が薄いコンサートだったということも、
正直な感想です。
(1996.4.13 池袋 東京芸術劇場)
スメタナ : 交響詩『わが祖国』全曲
指揮 : ウラディーミル・ヴァーレク
毎年「プラハの春」音楽祭のオープニングを飾る『わが祖国』全曲。
日本にいながらにしてチェコ・フィルの演奏で聴ける。
この日は物凄くわくわくした気持ちで会場に向かいました。
1曲目、『ヴィシェフラット』のテーマが冒頭のハーブの独奏から始まって、
オーケストラ全体で合奏されるまでの間だけでも、
堂々とした演奏展開、盛り上がりに、大きく感動しました。
それまでにも国内のオーケストラ(群響、都響など)で何度か聴いたことはあり、
それはそれでとても印象に残っていました。
が、この日の演奏は、やはり何かが違いました。
もちろん上手い下手の話ではありません。
このチェコの歴史と自然を高らかに歌い上げた曲を、
心の底からの共感と誇りを持って演奏しているのだと思いました。
『ブラニーク』の最後の盛り上がりまで、
あくまでも自然体の、しかし堅固な演奏が貫かれました。
『わが祖国』の後に、アンコール曲はありません。
ぽかぽかとした、懐かしいような気分で満たされながら、
チェコ・フィルの音と演奏スタイルはいつまでも変わらないでほしいなと思いながら、
会場を後にしました。
(1996.4.23 赤坂 サントリーホール)