チェコ・フィルハーモニー管弦楽団日本公演 (2023)
指揮:セミヨン・ビシュコフ
ピアノ:藤田真央
チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
曲目
ドヴォルザーク:
序曲「謝肉祭」Op.92 B.169
ピアノ協奏曲 ト短調 Op. 33 B. 63
交響曲第7番 ニ短調 Op. 70 B. 141
ソリストアンコール曲
プーランク 15の即興曲 第12番
オーケストラアンコール曲
ブラームス ハンガリー舞曲 第5番
待ちに待った4年ぶりの来日。指揮はもちろん首席指揮者のセミヨン・ビシュコフさん。ビシュコフさんは前回に続き2度目のチェコ・フィルとの日本公演です。
前回はチャイコフスキー中心のプログラムでしたが今回は満を持してオールドヴォジャーク(ドヴォルザーク)プログラム。
ビシュコフさんは2018年に首席指揮者に就任してからチャイコフスキーの交響曲全集を一気に完成させ、今はマーラーの交響曲全集に取り掛かっていて、
まもなくドヴォジャークの後期交響曲やスメタナの『わが祖国』をレコーディング予定だそうです。
首席指揮者の任期も2028年まで延長予定と、チェコ・フィルとの良好な関係が続いているようで、否が応でも期待が高まります。
今回の来日は全7公演で、ドヴォジャークの交響曲第7番はこの日のみ。
チェコ・フィルといえばドヴォジャークですが、来日公演ではやはり第9番『新世界より』と第8番ばかりで、第7番の演奏は2004年のマカルさんの指揮以来、その前だと1991年のノイマンさん指揮なので、とても貴重な演奏会言えます。
会場は人気ピアニスト藤田真央さんのファンと、ドヴォジャークそしてチェコ・フィルが本当に好きな人が集まりほぼ満席でした。
19時定時に楽団員さんたちが次々と登場。
女性や若いメンバーが増えて華やかな雰囲気に包まれる中、往年の名奏者・・・いずれも30年くらい前からコンサーマスターをされていたヴァイオリンのボフミル・コトゥメルさんやチェロのフランティシェク・ホストさんが後方に座っていらっしゃるのが嬉しい、
そして頼もしく、これだけで胸にジーンと来るものがありました。
(チェコ・フィルは私の知る限りずっと、ヴァイオリンとチェロにコンサートマスターが置かれています。)
お2人とも演奏中はものすごいオーラを放っておられました。
『謝肉祭』
さすらいの旅人がふと巡り合った謝肉祭の様子を描いたとされる人気曲です。
おおらかで少しだけゆっくり目の演奏は完全にチェコ・フィルの音、語り口でした。
合奏部分はうるさ過ぎず、ちょうど良く混じり合う音がしみじみ心に響く。フルート奏者は日本人の佐藤さんで、中間部の叙情的な部分のソロが紛れもなくチェコ・フィルの音で感動的でした。
『ピアノ協奏曲』
いい曲なのですが演奏機会が極めて少ない曲。日本のオーケストラを全部集めてでもこの曲が演奏されるには年に1度あるかないかくらいでしょう。
それを本場チェコフィルの演奏で聴けるという喜び。
世界的人気奏者 藤田真央さんの演奏は驚くほど音が透明で、曲の素朴さと相まってこれ以上なく爽やかでした。
藤田さんとピアノが一体化しているというか、藤田さんがピアノの一部になっているような印象でした。
『交響曲第7番』
この曲をチェコ・フィルの生演奏で聴くのは32年ぶり。前回はヴァーツラフ・ノイマンさんとの最後の来日時でした。これは私の音楽人生で最高の演奏として鮮明に記憶に残っています。
素朴で端整な美しさと、どことなく漂うくすみと暗さに満ちたチェコ・フィルの音色そのものを現すような名曲です。
ビシュコフさんの演奏は、細かなフレーズから曲全体までどこを取ってもとにかくバランスがいい。個性的とも思えるちょっとした揺れや間があるのですが、あざとさや不自然さは一切なく、すべてをチェコ・フィルが受け入れ、チェコフィル伝統のドヴォジャーク演奏になっていました。音、休符に至るまで全てに意味がある。今後もビシュコフさんとチェコ・フィルの演奏で色々な曲を聴きたいと思いました。28年までの首席指揮者の任期中、毎年来日して欲しいです。
(2023.10.31 赤坂 サントリーホール)
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ちょうど1年前、泉岳寺に「ピルニーピヤーク」というチェコビールとチェコ料理のお店ができました。
ピルスナーウルケルやコゼルといったチェコビールは直輸入、チェコ料理は大使館関係の方から教わったというすごいお店です。演奏会後はここで美味しいビールとお料理と一緒にチェコ談議をしてきました。心身がさらに活性化しました。