老齢と、万全ではないご体調を強調される一方、
現行規定の「摂政」は好ましくないとのご趣旨
きょう8月8日午後3時、今上天皇*註1によるビデオメッセージが各種メディアを通じて、(少なくとも)日本全国に一斉に流された。
およそ10分間のメッセージ放送だったが、終始ひらたい言葉遣いの語り口であり、その趣旨も明瞭かつ誰にでも容易に理解できるような形に仕上がっていた。思えば、在位中の天皇がラジオ、テレビなどのメディアを通じて直接国民に語りかけるのは、昭和天皇が1945年、昭和20年8月15日にラジオを通じて「終戦詔勅」を発して以来、2回目ということになるのだろう。
メッセージの主要な内容
自身がさらに年齢を重ねてゆくと国事行為、公務を遂行していくことが困難になるのではないかと案じられる、との胸の内を率直に述べた後、そうした天皇の“仕事”をどんどん減らしていくわけにはいかないとしたうえで、現行制度にある摂政を置くことに言及された。すなわち、「摂政を置くとしても、天皇はその職責を果たせないままに在位していることになる」との趣旨を述べられ、明白にこれを否定したものと感じられた。
さらに、在位中の天皇が崩御すると社会全体に甚大な停滞を生じる*註2ことになると述べ、崩御ののち2か月から1年間も喪儀が続くことなどにも言及、生前退位の意向を言外に強調するメッセージとなった。
クンちゃんのかたよった見解
クンちゃんは今上天皇のメッセージを聞きながら、天皇が日清製粉の正田家から美智子さまを妻に迎えた遠い日(1959年、昭和34年4月10日)を思い出していた。国中が祝賀ムードに沸き、買ったばかりの白黒テレビにかじりついて、祝賀パレードに歓声をあげた家庭も多かったはずだ。テニスウェアでさっそうと登場した皇太子夫妻も、そして小学校3年のわが身もずいぶんと年をとってしまったものだと実感する。
さて、むづかしいことはとんとわからないクンちゃんだが、天皇ご自身の胸のうちには、言葉にはあらわれない複雑なお気持ちがあったように思えてならない。
最近の天皇の即位の年齢と崩御された年齢を掲げてみよう。
明治天皇 14歳で即位 崩御59歳
大正天皇 32歳で即位 崩御46歳
昭和天皇 25歳で即位 崩御87歳(即位前に大正天皇の摂政となる。)
今上天皇 56歳で即位 現在82歳
断然、昭和天皇の摂政時代を含めた在位期間が長く、高齢になっても長生きする時代をあらわしているのだろうが、それだけに今上天皇は皇太子にとどまっている期間がだいぶ長かったことになる。56歳即位というのは、この時代の「55歳定年」からみても、やはり遅すぎという感触がいずこにあってもおかしくはない。
そうして、現在の皇太子“ナルちゃん”も、たちまちにして56歳となっている。前記、今上天皇の即位の年齢と同じである。
こうした傾向は、一世一元、崩御がなければ皇位継承はない、というシステムが存続する限り、さらに顕著になっていく可能性を否定できまい。
ここらへんに、いま「生前退位」があらわれてきたひとつの大きな要因があるとクンちゃんは感じているのだが、もちろん天皇のお心は到底推し量ることはできない。
いずれにしても、天皇ご夫妻がなんの憂いもなく健やかにお過ごしになることを祈念するのみである。
*註1 「きんじょうてんのう」=在位中(存命)の天皇。“いまの天皇”。
明治天皇、大正天皇、昭和天皇など天皇の前に付く元号の明治とか大正、昭和は「諡(おくりな)」であるから、存命の天皇に付することはできない。もし各種メディアなどで現段階の天皇を「平成天皇」と誤って表現・表記したとすると、世が世なら“おとりつぶし”は避けられず、関係者は当分、または永久に帰宅できないことになったと言っても過言ではない。
*註2 昭和天皇が重態から崩御された、昭和63年の晩秋あたりから翌年正月を経て春過ぎぐらいまでの社会情勢を指しておられるものとみられる。歌舞音曲禁止ではないが、何につけても自粛ムードが高まったことを記憶されている方も多いことと思う。