スノーズヒルからスタントンまで…軽い散歩のつもりだった。ところが、道を間違えて遠回りをしてしまったらしい。半日がかりのウオーキングになってしまった。スノーズヒルのB&B「シープス・コーム」に着いた時は2人とも疲労困憊していた。
その夜、娘が熱を出した。彼女にとっては生まれて初めての海外旅行なのだ。カルチャーショックもあったかもしれない。緊張も続いていたのだろう。今朝から食欲もなく、なんとなく元気がないのが気掛かりではあったのだが…。
娘に症状を聞くと、寒気がするという。雪の中を何時間も歩いて来たのだから、おそらく風邪をひいたのだろう。彼女の様子からそう感じた私は、オーナーの奥さんに頼るざるを得ないと思い、階下へ降りて行った。
奥さんに、昼からの娘の様子を説明した。英語が不得手なところに、気も動転しているものだから、ブロークンイングリッシュもいいところ。でも、事態が事態なだけに懸命に訴えかけた。すると、何とか通じたようだった。
寒気がすると言っているし、熱があるから風邪だと思う。医師に診てもらうほどではないが、今夜様子を見て、明日判断したい、そんな状況を伝えた。
「自家用の風邪に効く薬があったはずだから」と戸棚の中を探してくれた。
薬を手に娘のところに戻ると、奥さんとのやりとりが聞こえたらしく…。
「お母さん、駄目だよ!聞きたいことはちゃんと調べて整理してから質問しないと。すぐ言葉がでないから、奥さん困ってたじゃないよ。電子辞書だってあるんだし…」とのたまうではないか。
「そんなこと言ったって、辞書で調べる余裕なんてないよ。とっさに言葉が出てこなかったんだもん」
これじゃ、どっちが親だか、病人だか…?!分かったもんじゃない。
「そんな正しい英語を話そうとしなくていいと思うよ、お母さんは。通じることが大事なんだから」
そう言ったが、A型の娘は納得しないようだった。ちなみに私はO型、鷹揚というか、大雑把というか…。
英会話の議論どころじゃないじゃないのよ~。
「薬を飲む前に何か少しでも食べた方がいいんじゃない?」私が聞く。
「お母さん、味噌汁ある?」と言ったもんだ。
「ないよ。残念だね~。でもひょっとしたら1袋ぐらいあるかも…」
一呼吸置いてから、「インスタント味噌汁ありました!最後の1袋。良かったね~」
「うん」と満足そうに味噌汁を飲んだ。
「美味しいよ、お母さん!」
そして、生姜湯と薬を飲ませ、ベッドに休ませた。
後日談だが、この時、味噌汁が1袋残っているのを娘は知っていた。彼女の方が上手だったということか。日本を出発する前の日、私が味噌汁や生姜湯、せんべい、飴玉などをカバンに積めこんでいると…。
「なんで、そんなの持ってくの?私いらないからね」そう言っていた娘だった。
そして「あの味噌汁美味しかった!」としみじみと言った。
私はというと、小梅ちゃんや1口せんべいなどに気をとられて、肝心な風邪薬を入れ忘れたのだった。ほんとにドジな母親だこと…。
少ししてから、奥さんがケーキを持ってきてくれた。
「2階の部屋が空いているので、隣りに私も泊まりましょうか」―心配そうに言ってくれたが、丁寧にお断りした。
「何かあったら、下にいるので呼んでください」そう言って下りていった。
隣りにバスルームがあるので、タオルが熱くなると水で冷やして娘の額に乗せた。
昼、奥さんが貸してくれた日本人が書いた単行本「イギリスの小さな村を訪れる歓び」(※)を読みながら、娘を看病した。タオルがすぐ熱くなり、バスルームと部屋を何度も往復した。夜半に娘が目をさまして言った。
「お母さん、汗かいたよ」
「じゃー下着取り替えなさい」
熱も少し下がったようだ。着替えを済ませてさっぱりした顔をしている。
「さっき奥さんがケーキ持ってきてくれたよ。ショコラかな、少し食べてみる?」
「うん、少しね」
「そうだ、手作りのスコーンも持ってきてくれたんだけど、両方食べる?」
「う~ん、スコーンがいいかな。ケーキあとで食べるよ」
紅茶を入れて、しばしお茶の時間。熱が下がり、食べる意欲が出てきた娘を見て、私はほっとした。娘が寝てからもしばらくは本を読んで起きていた。一冊読み終えて、寝る前にもう1度娘の顔をのぞくと、スヤスヤ寝息をたてている。安堵感から私も深い眠りに落ちていった。
昼、スタントンをウオーキングで往復して無理をしてしまったのだろう。
帰路は、B&Bオーナーに来てもらおうと、言ったのだが…。
娘は「大丈夫だよ」と言い張るばかりで、私の提案を受けつけなかったのだ。ついつい我慢してしまう娘に、
「我慢も限界を過ぎると、時によっては悪い結果を招く事があるから。人に迷惑をかけることになるから、気をつけて!」
すっかり回復したあとで娘に言った。
すると「うん、分かった」と答えたのだった。
※「イギリスの小さな村を訪れる歓び」木島タイヴァース由美子著/インデックス・コミュニケーションズ発行―本の中でこのB&Bが紹介されているというので、オーナーの奥さんが見せてくれたのだった。
その夜、娘が熱を出した。彼女にとっては生まれて初めての海外旅行なのだ。カルチャーショックもあったかもしれない。緊張も続いていたのだろう。今朝から食欲もなく、なんとなく元気がないのが気掛かりではあったのだが…。
娘に症状を聞くと、寒気がするという。雪の中を何時間も歩いて来たのだから、おそらく風邪をひいたのだろう。彼女の様子からそう感じた私は、オーナーの奥さんに頼るざるを得ないと思い、階下へ降りて行った。
奥さんに、昼からの娘の様子を説明した。英語が不得手なところに、気も動転しているものだから、ブロークンイングリッシュもいいところ。でも、事態が事態なだけに懸命に訴えかけた。すると、何とか通じたようだった。
寒気がすると言っているし、熱があるから風邪だと思う。医師に診てもらうほどではないが、今夜様子を見て、明日判断したい、そんな状況を伝えた。
「自家用の風邪に効く薬があったはずだから」と戸棚の中を探してくれた。
薬を手に娘のところに戻ると、奥さんとのやりとりが聞こえたらしく…。
「お母さん、駄目だよ!聞きたいことはちゃんと調べて整理してから質問しないと。すぐ言葉がでないから、奥さん困ってたじゃないよ。電子辞書だってあるんだし…」とのたまうではないか。
「そんなこと言ったって、辞書で調べる余裕なんてないよ。とっさに言葉が出てこなかったんだもん」
これじゃ、どっちが親だか、病人だか…?!分かったもんじゃない。
「そんな正しい英語を話そうとしなくていいと思うよ、お母さんは。通じることが大事なんだから」
そう言ったが、A型の娘は納得しないようだった。ちなみに私はO型、鷹揚というか、大雑把というか…。
英会話の議論どころじゃないじゃないのよ~。
「薬を飲む前に何か少しでも食べた方がいいんじゃない?」私が聞く。
「お母さん、味噌汁ある?」と言ったもんだ。
「ないよ。残念だね~。でもひょっとしたら1袋ぐらいあるかも…」
一呼吸置いてから、「インスタント味噌汁ありました!最後の1袋。良かったね~」
「うん」と満足そうに味噌汁を飲んだ。
「美味しいよ、お母さん!」
そして、生姜湯と薬を飲ませ、ベッドに休ませた。
後日談だが、この時、味噌汁が1袋残っているのを娘は知っていた。彼女の方が上手だったということか。日本を出発する前の日、私が味噌汁や生姜湯、せんべい、飴玉などをカバンに積めこんでいると…。
「なんで、そんなの持ってくの?私いらないからね」そう言っていた娘だった。
そして「あの味噌汁美味しかった!」としみじみと言った。
私はというと、小梅ちゃんや1口せんべいなどに気をとられて、肝心な風邪薬を入れ忘れたのだった。ほんとにドジな母親だこと…。
少ししてから、奥さんがケーキを持ってきてくれた。
「2階の部屋が空いているので、隣りに私も泊まりましょうか」―心配そうに言ってくれたが、丁寧にお断りした。
「何かあったら、下にいるので呼んでください」そう言って下りていった。
隣りにバスルームがあるので、タオルが熱くなると水で冷やして娘の額に乗せた。
昼、奥さんが貸してくれた日本人が書いた単行本「イギリスの小さな村を訪れる歓び」(※)を読みながら、娘を看病した。タオルがすぐ熱くなり、バスルームと部屋を何度も往復した。夜半に娘が目をさまして言った。
「お母さん、汗かいたよ」
「じゃー下着取り替えなさい」
熱も少し下がったようだ。着替えを済ませてさっぱりした顔をしている。
「さっき奥さんがケーキ持ってきてくれたよ。ショコラかな、少し食べてみる?」
「うん、少しね」
「そうだ、手作りのスコーンも持ってきてくれたんだけど、両方食べる?」
「う~ん、スコーンがいいかな。ケーキあとで食べるよ」
紅茶を入れて、しばしお茶の時間。熱が下がり、食べる意欲が出てきた娘を見て、私はほっとした。娘が寝てからもしばらくは本を読んで起きていた。一冊読み終えて、寝る前にもう1度娘の顔をのぞくと、スヤスヤ寝息をたてている。安堵感から私も深い眠りに落ちていった。
昼、スタントンをウオーキングで往復して無理をしてしまったのだろう。
帰路は、B&Bオーナーに来てもらおうと、言ったのだが…。
娘は「大丈夫だよ」と言い張るばかりで、私の提案を受けつけなかったのだ。ついつい我慢してしまう娘に、
「我慢も限界を過ぎると、時によっては悪い結果を招く事があるから。人に迷惑をかけることになるから、気をつけて!」
すっかり回復したあとで娘に言った。
すると「うん、分かった」と答えたのだった。
※「イギリスの小さな村を訪れる歓び」木島タイヴァース由美子著/インデックス・コミュニケーションズ発行―本の中でこのB&Bが紹介されているというので、オーナーの奥さんが見せてくれたのだった。
予想外で、雪の中を半日も歩くなんて大変でしたね。雪山で遭難死するように身体の芯が冷えたのと疲労ですね。ああいう時にアルコールなんかが入ってると、死を早めちゃうようです。水死とかもそれが原因で身体を冷やしてしまうそうです。数年前、応急手当のクラスでそう言ってました。でも、娘さん、しっかりしててよかったですね。性格の違いがわかって面白かったです。
やっぱ、熱が出ましたか。
ユウさんも、疲れているのに看病で大変でしたね。
旅先で、体調が悪くなるとホントに困りますね。
水とか食べ物とか、疲れとか精神的な疲労とか…
環境の変化に要注意ですね。
我が家は5人とも0型なので血液型分析はできないのですが、
一度、受けなければと思いながら…
まだ受けていません。
駄目ですね。
チョコレートや水で生き延びたという話は聞きますが、アルコールは危険なんですね。
勉強になりました。
旅先で看病するとは…予定にありませんでしたが。
物は考えようで、イギリスに関する本を一冊読破(?)し、いろいろ勉強になりました。
家族全員O型というのは珍しいですね!
わが家は4人全員違って…
A型・B型・AB型・O型全部揃うのも珍しいかな?
ユウさんは丈夫ですねえ