中央高速須玉インターで下りて、瑞牆(みずがき)湖で朝食にした。朝7時前だった。陽は登ったばかりで、山はまだ闇の面影を残し眠たげだ。寒い、セーターに防寒ヤッケを着込んでもまだ寒さがしみて来る。少し窮屈だが車の中で食べることにした。
小尾のを通り抜け、信州峠を越し長野県にはいった。とたん景色が一変した。
川上村に入ってからは両側に広い高原野菜の畑が続く。視界をさえぎるものがないのが心地よい。右折し千曲川を遡り、支流金峰山川の合流地点で再び右折した。 8時過ぎ、牧丘林道の分岐にある無料駐車場に車を止めた。
冬季の激しい風雪のせいだろうか、白樺がアーチ型を描いて折れ曲がっている。林道歩きの途中、たくさんの車が追い抜いて行く。
歩くこと30分少々、やっと金峰山荘前に着いた。
一周3時間のカモシカ遊歩道コースを歩くことに決めた。テントがたくさん設営されているキャンプ場の中を突っ切って行く。
薄暗い森の中をゆっくりと登りつめる。寒いので殆ど汗はでない。落ち葉が多く、時おり道を見失いがちになる。頼りはカラマツの枝に結ばれた赤いテープ。見上げるとそのカラマツの紅葉がやけにきれいだ。
やっと唐沢の滝まで来た。水量は思ったより少ない。
登ること2時間、小川山登山道との分岐に着く。ここからは尾根筋となりカモシカ遊歩道もカモシカ登山道と名称が変わった。
岩陰の風の来ない所で小休止とする。この辺は空路になっているのか、飛行機が時々轟音を撒き散らしては飛び去って行く。
風が出てきた。見上げると雲がめまぐるしく通り過ぎ、消えてはまた下から湧き上がり、新しく思いも寄らない形をつくっている。言葉を忘れ暫く見入っていた。
青白のツートンカラーに塗り分けされた空。
下りの岩場では道を間違えた。暫く行ったら行き止まりになったので引き返し、何とか下り口を見つけることが出来た。 そそり立つ岩の下には登ってきたキャンプ場が見える。
一時間ほど下るとカラマツの林に再び入った。岩が土となり、下りは次第に緩やかになってやがて平らになった。
白樺の白い幹とカラマツの燃えるような黄色、そしてナナカマドの真紅。 何と言う素晴らしいカラフルな取り合わせだ
人声が聞こえてきた。どうやら再びキャンプ場まで戻ってきたようだ。あちらこちらから昼餉の煙が立ち昇っている。
向こうの山の尾根に奇岩が見える。
駐車場までは車の多い林道を避け、シャクナゲ遊歩道を歩いた。ここにも変わった形の岩があった。
12時半になった。まだまだ時間に余裕があるので、千曲川源流の毛木(もうき)平まで足を伸ばすことにした。
古びた道祖神があった。これより左 江戸道、右 山道とある。
カラマツに囲まれた河原で、コンロを炊いて遅めの昼食をとった。古来たくさんの人が同じようにこの河原で休み、食べ、語らったことだろう。河原で流れを見ているといろんな想念が湧いてくる。川は人に哲学を教えてくれる。
言葉では言い表せぬ至福の時がゆっくりと過ぎて行く。
宿のある南相木村へ行く途中、千曲川にかかる橋の上から八ヶ岳が望めた。
この流れは200km先の新潟県境で信濃川と名を変え、更にその先150kmの旅をして日本海に流れ込む。