LO(O)SE40!

緩く自由に色んな物をどんどん海に投げていく旅の始まり

一寸先は目を閉じれば闇。

2017年07月04日 08時08分10秒 | Weblog
角田光代「笹の舟で海をわたる」読了。
毎度毎度思うけど、この人の本はグーっと引き付ける力が本当に強い。戦後、小さな幸せを望みながら自分で選択する事をせず、そういうもんかと人に流され、耐えず他力本願で理由を探しながら孤独な老後に辿り着いた主人公とその横に流れる戦後~平成の時代の移り変わり。
自分で選択をすれば責任が伴うから選択しない。というのは間違いで、選択をしない事を選択した。という事なので、いずれにせよ自分の人生を誰かのせいにする事は出来ない。
自分の親世代(団塊)は専業主婦が多く、この主人公みたいに思考停止状態で「普通はこうする。よそ様はみんなこうする。」に縛られた親が多かった。なので私(団塊ジュニア)世代はそんな親や世間に反抗するという文化が出来た。
同世代が読んだら、読んでて胸がムカムカする位、自分に当てはまる事が多いだろう。親である主人公に、その正反対な選択を積極的にする友人に、選択できない親に反抗する娘に。
自分から選択し枠をはみ出る事が無ければ不幸は起きないと消極的に生きてきた主人公は不幸だらけだ。
でも人生なんてそもそも不幸だらけだから、幸せな時にはその幸せをより噛み締められるもので、何でだろう?、何もしてないのに何で不幸になるんだろう?と、理由を探し続ける主人公は幸せをいつまでも感じる事が出来ない。
ずーっと眉間にシワを寄せて、う~んとなりながら読んでいました。そして角田作品は読んでると消耗するので耐えず何かを食べながら。

晩年の夫の言葉。「いや、悪も正義も、人生にはかかわりがない。違うかね」「きみ、もっと本を読みたまえよ」
これでも主人公は気付かない。というか分からない。

アリとキリギリスみたいな話だったな。
読んでて本当に気分悪くなるし、頑張って自分が乗り越えてきた事を思い出したり、誰にもある嫌な心を見せられるのもムカムカするけど、目が離せなくて、一気読み。

角田光代は世代、時代、性別、年齢飛び越えて手を変え品を変え生きることを突きつける。毎回毎回人は孤独だと思い出させる。
でもそれでいいんだと読後力強く思える。私は角田作品を読む時は角田作品を読む必然がある時、マメに買う作家ではないけど、ふっと手にとって読み終わると。あー今の私に必要だったんだな、ていつも思う。

で、今は真山仁「標的」を読み始めています。
面白くなりそうです。