すがわらの工房日記

東北は岩手県一関市の呉服屋。こつこつと友禅染めをしています。

友禅の事

2010-09-25 12:41:55 | 友禅

こんにちは

岩手県一関市の着物屋 京呉服すがわらです

工房名は「工房らくぜん」ですよ

 

本日は友禅染めのお話です

若輩者が何を言うかとお叱りの声が聞こえて来そうですが

           「友禅って何?」

実はこれ、今でもお客さんによく聞かれるんです。

その度に私なりにお答えはしているんですが、確かにネットで調べても、職人サイドからの説明が多いし、専門的で技術的、部分的な解説が殆どだと思います。「難しい、高い技術なんですよ。」的な説明。

でも一般の方々はそんなの実はどうでも良かったりして、結局は

           「だから何?」ってなもんです。

何故手描き友禅が良いのか、手描きでなくてはならないのか

ものすごく客観的に見てみたいと思います

まあ、私の個人的な雑感と思って、どうか広大無辺な心で読んでみて下さい

 

まず、友禅とは何か

それは「技法」です、特殊だけどただの技法。

 

布に水滴を落とすとたちまち滲んで形になりませんね

思い通りになんて描けようはずもありません

それをまるで紙に描いた様に絵を生地にうつすため

先人達が工夫して編出した技法が友禅です

それまで生地に模様を描くには絞り染か織り込むくらいしかなかったので、夢のような技術です

ただ、この工程が非常に多く、実に煩雑なわけです。

最低でも10工程、品物によってはもっと、いや、いくらでも増えていきます

 

これが壁に掛ける絵ならば話は簡単で、

いや、簡単って言ってもそれぞれそれなりに色々難しいモンではあるんですが

基本的には絵の具が剥落しないように膠とかメディウムとか油で

しっかりかっちり絵の具を重ねて固めて定着させて出来上がり

これが絵画を紙とか壁とかキャンバスに描く技法。あくまで技法。

上手に描けていれば尚良いですね

 

だけど着物でそんな事したらガビガビのゴチゴチでとても着てられない  

実は友禅染めの工程で行われる作業のほとんどは最後に洗い流される作業です

これ、友禅教室でも皆さん本当にびっくりされるんですけど

このブログでも、ほんの少しですが紹介した糸目だとか地入れだとか糊伏せだとか、

あれらは全て作業の補助で、染まりついた染料以外は全部洗い流します

一般に知られている鴨川の友禅流し、あれは最後の洗い流しの工程です。

 

つまり職人の苦労を水で流して美しい模様だけを残す工程… 素敵。イカス!

 

職人に課せられた条件は唯一つ、生地の風合いを守った上で彩色する事。

それには手作業がやはり最も適しているわけです。

着物である以上は着心地の良い物であることが絶対条件です。

実は絹というのはこの世界で最も優れた繊維なんですが

染める事でせっかくの絹の性能を殺してしまっては絹の着物を着る意味が有りませんね

衣類の性能とはつまり肌触りとか保温性とか、触感につきるんですが

それらは季節気候で変わります。

それらを確認しながら加工することができる技術。

絹の性能を最大限に生かし、尚且つ美しい模様を纏う悦びを実現するための

最も確実賢明な手段が「手描き友禅」という技法です

 

       つづく

 

コメント
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