ひろし君の読書や旅日記

昨日より今日が少しは面白くなるかな て思って

山上徹也はどんな「夢」を見ていたのか?

2024-05-04 14:53:52 | 読書感想
山上徹也は,2022年7月8日に奈良県大和西大寺の駅の近くで、参院選の応援演説に来ていた安倍晋三を手製銃で殺害してその場で現行犯逮捕された。それから2年がたって、今年の4月からやっと「公判前整理手続き」が開始されたと報じられている。この間、彼の精神鑑定が異例の長さで行われていた。その間は、基本的には彼の声は封殺されている。私達は、この世紀的な銃撃がどの様な背景と意図を持っていたのか、その影響がどの様な広がりを持っているのかを、これからも考え続ける事になると思う。
     『山上徹也と日本の失われた30年』を読みつつ
五野井郁夫と池田香代子の共著のこの本は、1980年生れの山上徹也を同時代の1979年生れの五野井郁夫が分析していく内容になっている。その手法は時系列的な社会現象(就職氷河期や親ガチャなど)などと山上個人の1364件のツイートを絡ませながら政治的・歴史的な分析を行うと言うもので、サラサラと読めてしまいます。しかし、読んでいて何か山上徹也と言う一人の人間の像が、平坦な表情しか感じ取れなくて分析の光の当たらない陰の部分も気に掛るままに終わつてしまったと思います。
     『オウム真理教の精神史』も
太田俊寛のこの本は、山上徹也と直接的には関係していないのだけれど、「統一教会」と「オウム真理」と言うカルト宗教を巡る共通項に注目して考えると理解の幅を広げる様に思います。太田は、「宗教とはなにか」という切り口を掲げながら、宗教をより大きな歴史的な流れの中に位置付けようとします。それは18世紀以降の近代の思想の流れである「ロマン主義」と「啓蒙主義」によって、このカルト宗教の存在に切り込もうする方向性です。この事は、現代にあって人間存在はどの様な「夢」を見る事が可能か、という事を投げかけているのです。その「夢」の見方に依って、我々の意識が逆に規定されてしまい現実がその場に止まるか、「夢」に回収されてしまうかが起こるのです。
政治的には、安倍晋三の死は大きなインパクトを裏金問題や保守勢力の分裂などとして表れていますが、思想的にはまだ解明途中という感じがします。  そんな時、彼はどんな「夢」を観ているのでしょうか?

コメントを投稿