何かほのぼのする話はない物かと考えてみる…。
先日のお話なのですが、職場で初診の方が受診されました。
子供さんの矯正の相談で、
「かかりつけの医院に掛かっているけれど、他の医院さんの意見も聞いてみたい」
という理由で受診されました。
「相談かぁ。それなら、そんなに時間かからないだろうな～」
と、アポ帳を見ながら思う。
そろそろ時間だなと、患者さんが来るのを待っていると、女の子が一人入ってきました。
「あ、初診の子だな」と思っていると、
男の子が一人、もう一人男の子。そしてお母さんが入ってきました。
そして、お母さんの背には赤ちゃんが…。
子供さん4人！！久しぶりに見た！！子育て大変だぁ！！
…と、心の中でそう思いながらも表面は平常心。
受診するのは一番上の子。小学校３・4年生かな？
一番上の子はやんちゃそうだけど、しっかりしている。
その下は男の子と女の子。どちらが上かはわからない。
男の子の方は大人しそうだけど、女の子はなかなか自由な子の様子。
女の子は長めの椅子で横になりリラックスモード。お母さんに叱られています。
しかし、いつもの事なのであまり気にしない。悪い事や仕事の邪魔にならなければ特に気にしないタイプ。
お兄ちゃんに付いて来て、治療を待ってる時間って長く感じるよね。解るよ。
そう思いながらいつもの仕事をこなす。
小さい子が来ると、先生はご褒美にいつも「この中から一つ選んでね～」とシールを渡します。
いつもの事なので、私もとくに気にしていませんでした。
お兄ちゃんの診察が終わり、帰る頃になると、女の子が何やら泣いていました。
何だろうと思ったら、シールを全部欲しいというのです。
それはダメだとお母さんが叱ります。すると、女の子は大泣きして暴れます。
久しぶりに見たなぁ。女の子のギャン泣きする姿。
そう心の中で思いながら笑っていました。お母さんは大変だ。
お兄ちゃんも宥めすかしますが、泣き止みません。
変に口出しも出来ないので、とりあえず、お母さんが「迷惑を掛けている」と焦って不安がらないように
不機嫌な顔だけはしないようにしました。
（子供を見てるのは嫌いじゃないですが、子供を扱うのは実は苦手なのです…。）
すると、騒ぎを聞いて、歯科衛生士さんが一人来ました。
中学生くらいの子供さんがみえるお母さんなので、子供さんの扱いも慣れている方です。
女の子に「どうしたの～？」と優しく声を掛けながら話を聞きます。
「〇〇のシールが欲しかったの？じゃあ、３枚持って行ったら？」
しかし、女の子は泣き止みません。
お母さんに叱られて、勢いで衛生士さんを「パシン」と叩いてしまいました。
更にお母さんに叱られてしまいます。衛生士さんは気にしていません。
なんとか少し落ち着いた所で、次の予約を取り、お母さんが女の子を外に連れて行きます。
私も玄関まで見送りに行きました。そしてお母さんは女の子に靴を履かせて、車に連れて行きました。
一番上のお兄ちゃんは普通に外に出て車へ移動したのですが、
もう一人の男の子は靴も履かずに外に出て、静かに泣いていました。
女の子が大泣きしている姿を見て感化されたのか、お母さんが怒っている姿を見て怖くなったのか、
なんだか寂しくなってしまったのかはわかりません。でも、気持ちは何となくわかります。
男の子に少し声を掛けて、なんとか靴を履いて貰って、お母さんの方へ促すと、走って行ってしまいました。
さて、嵐が去った。久しぶりに女の子の元気に泣く姿を見て、ちょっと新鮮だったな。
…と、のんきに思っている有貴さんです。
先ほど女の子に声を掛けていた衛生士さんにも「お疲れ様です」と声を掛けて、
少し話をしてから、仕事に戻りました。
すると数十分後。
お母さんが女の子を抱いて戻ってきました。
女の子はお母さんの腕の中で泣いています。
ビックリして「どうしましたか？」と声を掛けます。何か忘れ物をしたのでしょうか？
するとお母さんが、
「さっき叩いちゃったから謝りたいと泣いているので」
と言ってきました。
わざわざ謝りに来たんだ！！可愛いな～！！
と思いながら、謝って来たので、先ほどの衛生士さんも呼んできます。
すると「さっき叩いてごめんなさい」と、女の子が衛生士さんに謝りました。
「気にしてないからいいよ、大丈夫だよ」
と声を掛けていました。そしてお母さんと一緒に帰って行きました。
その姿を見ながら衛生士さんと2人で「素直で可愛い子だねぇ」と笑いながら話をしました。
子供を４人も育てていて、うち一人はまだ立つことも出来ない赤ちゃんとなると、
お母さんは赤ちゃんに付きっきりになり、
子供は寂しくて自分を見て貰おうと主張するものです。
物分かりの良い子もいますが、この女の子のようにわがままを言って自分を特別扱いして貰いたがる子もいます。
それは子供のうちは仕方のない事だと思います。
衛生士さんもそう思っていたので怒らなかったのでしょう。
一時的なわがままで騒いで、他人に迷惑をかけた、叩いてしまって罪悪感がある、だから謝りたい、
そう感じて、お母さんに頼んできちんと謝りに来たので、
「とても素直で良い子だな」と思いました。
…というお話です。