
この条例は生活困窮者から生活保護費を不当に徴収する「貧困ビジネス」の規制を行なうとともに適正化をはかり、被保護者等の自立支援を図るための検討委員会を設置しようとするものです。同様の条例は、今年3月埼玉県議会で全会一致により可決され、さいたま市では6月議会において全会一致で可決をされています。また大阪府にも同様の条例がすでに制定されています。
千葉市議会においても、これまで「貧困ビジネス」の問題は無料低額宿泊施設の劣悪な生活環境や建設をめぐり、かなり議論が行なわれてきました。千葉市では平成13年6月28日から「社会福祉法第2条第3項第8号に規定する宿泊事業を行う施設の整備及び運営に係るガイドライン」がつくられ施行されています。第2種社会福祉事業(ここでは無料低額宿泊施設)について、事前相談、地域住民への事前説明、設備や運営基準を示しています。
あくまでガイドラインであり、現状では新たな無料低額宿泊施設の建設は抑制されるものの、住居として妥当なのか、食事の提供に問題はないのか、居室面積の基準は、金銭感知上の問題はないかなど多くの問題があり、入居者の自立支援には程遠い状態となっています。
2010年6月18日、日本弁護士連合会は「無用低額宿泊施設」問題に関する意見書を発表しています。これは、第1種社会福祉事業の実態を有する無許可施設が第2種福祉事業として営業することを容認する厚生労働省社会・援護局通知「生活困窮者のために無料又は低額な料金で宿泊所を利用させる事業を行う施設の整備及び運営について」(2003年7月31日)の廃止を求めている内容です。
それは、そもそも社会福祉法では本来許可を得なければならない第1種社会福祉事業を営むことが出来ないにもかかわらず、この通知により無許可で営業していることを認めることは重大な人権侵害。さらに厚生労働省の誤った法解釈により地方自治体が混乱に陥り、規則・権限を適正に行使していないことが明らかであるとも指摘しています。
こうした経過を踏まえ、条例制定の検討委員会では日弁連の意見書や厚生労働省社会・援護局通知に対する千葉市としての見解・対応を明らかにし、千葉市における無料低額宿泊施設の実態、現在では「脱法ハウス」と言われる無届けの施設も視野に入れて適正化を図らねばなりません。
国の法制化が求められていますが、現状ではなかなか進んでいません。そこで、まず行政として「貧困ビジネス」を必要悪とする姿勢は早急に改めて、弁護士会や関係する市民団体など幅広く委員を組織して、「貧困ビジネス」の問題解決に向けて行動することがどうしても必要です。
まず千葉市における「貧困ビジネス」の実態を明らかにすることにより、市内の関連する施設全てを行政が把握し、指導できるようにしなければならないと考えます。
また、同じ課題を抱える他の自治体とも連携し、国にも解決を求めるなど、実効性ある条例にすることが必要です。この課題の基本は住居や福祉の問題でもあり、率直に非常に困難な側面があります。当然、千葉市だけで解決する課題ではありません。
だからこそ、千葉市がさいたま市に続いて「貧困ビジネス」の規制と適正化のための条例の制定を行い、問題解決に踏み出す時です。条例提案に同僚議員の賛同を求め、提案理由の説明を終わります。