原発や今後必要なエネルギーを考えるブログ&五行詩

原発は基本的に反対です。

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原発どんなに安全につくっても、防災的に無条件に危険である

2012年04月07日 | 原発の防災は無条件に危険である

原発はどんなに安全につくっても

防災計画が全くなく無条件に危険である

「エネルギーと原発のウソをすべて話そう」から

武田邦彦著 産経新聞出版

 

委員会・審議会委員

  • 内閣府原子力委員会
  • 内閣府原子力安全委員会
  • 文部科学省中央教育審議会
  • 文部科学省科学技術・学術審議会

などの専門委員を歴任

驚くべきことに、事故を想定した防災計画が無かったに等しい

原発事故は人災である。(政治的な圧力とカネが絡んで国民が犠牲を強いられている)

 

私が名古屋市で原発事故勉強会として進めていることを例にしてお話します。いままでも自治体は原子力発電の安全性をチェックする役目がありましたが、事故で分かったように、実際のところは何もチェックできていませんでした。電力会社から官僚的な説明をされても、知識がないから太刀打ちができないというのが現実です。しかも、そこに政治的な力とお金が絡み、地元は原子力発電の安全性を納得させられてきました。しかし、それでは無用な被ばくをさせられることが福島の事故で明らかになりました。

 

基本的に、中部電力の浜岡原発だけでなく、敦賀原発も、福島第一原発のように地震で壊れるというのが私の考えです。いままでの安全基準でつくられた原発は、地震が起きれば福島第一原発と同規模の災害を起こす可能性があります。

 

ですから地震で壊れないように、国や中部電力が原発の安全基準を見直すのは当然ですが、私たち住民は原発が壊れた時のことを想定し、次のような防災計画が必要です。

・事故の規模を想定する

・放射能物質はどの範囲まで被害を及ぼすか、その予想は誰が行って、どう発表するか。

・被ばくする地域の住民をどのように避難させるか、手段として雛先の確保。

・住民の被ばく測定と健康診断の方法

 

そのうえで、たとえば名古屋市の水源である木曽川がどの程度、汚染されるか、水道水が飲めなくなる期間は事故後どのくらいか、その間220万人の住民の飲料水をどのように確保するか、食料品をどのように確保するか、なども想定すべきでしょう。また、避難させない地域についても、マスクを装着するよう指導したり、被ばく量を検査するなど具体的な防災計画を作成する必要があります。防災計画ですから、名古屋市の計画を話し合うために私は市の職員とともに消防隊の司令とお会いしました。

 

たとえば飛行機ではライフジャケットが個々の乗客に用意されていますが、その使い方につては非常に丁寧に説明されるはずです。同じように、原発も事故を想定して、ライフジャケットの準備とその使いかたの説明が必要なのです。

 

原発事故を想定する場合、福島原発事故でもわかるように、退避先の住居をつくる必要がありますから大規模な計画です。これは全国の原発で必要になるものですから、たとえば東日本に一つ、西日本に一つ「原発退避村」をつくればいいのかもしれません。逃げる方法にしても、自動車で逃げるか、バスで逃げるのか、オートバイに乗るのか、考えなければなりません。原子力発電を行うのであれば、そこまで想定しなければならないのです。

 

この防災計画について中部電力と話し合う機会を設けましたが、福島原発があのような状態になっているのにまったく危機感がなく驚かされました。こんなところに呼び出されて迷惑だと言わんばかりで、当事者意識のかけらもありません。本来であれば、「不安を与えていて申し訳ありません」と言うべきでしょう。

 

その話し合いの場で、私は次のように尋ねました。

「もしも、原発が事故を起こし、水源が汚れて市民が水をのめなくなったらときのために、電力会社は住民のためにペットボトルの水を用意していますか?」

「もし、原発が事故を起こし、児童が被ばくしそうになった時に備えて、電力会社は疎開先の学校を準備していますか?」

もしも原発が事故を起こし、土地が汚れたときには、電力会社は土地を綺麗にしてくれますか?」

このみっつの質問に対して、電力会社はいずれも「ノー」と答えました。この答えは、福島原発の事故を見ていても、東京電力はそのような備えをしていませんでしたので予測はできたことです。

 

そこで私はさらに確認のために、「電力会社は原発を運転しているのに、原発が事故を起こして放射能物質が飛散したときに、それを片付ける意志はないのですか?それは法律的に義務がないということですか、それとも企業の社会的責任として行わなくてもいいというお考えですか?」

これに対して、電力会社からの答えはありませんでした。現代社会では、自社の製品に欠陥があった場合、企業が知らないふりをすることは考えられません。しかし、原発ではそうなっています。

 

しばらくして電力会社の人は「損害が起きた時の訴訟の対象は電力会社で、それは全部引き受けるつもりです」と言われました。それに対して私は「被害を受けてからの損害賠償をしても意味がないのではないでしょうか。むしろ被ばくをしないように全力を尽くすべきではないですか」といいました。

 

その後、自治体の人もこう聞きました。

「それでは住民を助けるのは自治体の役目でしょうか?」

すると自治体は、「法律的に地方自治体は原子力の危険を防止するような仕事ができません。原子力関係はすべて国が行うようになっています」と言うわけです。

つまり現在の日本では、福島原発事故が起こったにもかからわず、今後、原発事故が起こっても電力会社も自治体も住民を救うことができないシステムだということです。

 

人間は間違いを起こすことがあります。しかしそのときに、損害をできるだけ小さくするための手段があります。たとえば、船はときどき転覆事故を起こしますが、船にはボートを準備してあるので、それで助かる可能性があります。全員が救われるとは限りませんが、救われる命もあります。

 

ところが原発には、そうゆうシステムがありません。それではどんなに安全につくっても、危ないと言わざるを得ません。無条件に危険だということになります。

以上「エネルギーと原発のウソをすべて話そう」から転載しました。