Coffee Break その２「清水次郎長の功徳」

　もうずいぶん前に本だったか新聞だったかで目にした話です。

　私は歴史に疎く、清水次郎長が実在した人物なのか架空の人物なのかは知りません。
　ですからこの話は単なる逸話として記憶しているだけです。
　もし次郎長が実在の人物だったのならこの話も実話なのでしょう・・・

　ある日、次郎長に対面した占い師が言ったそうです。

　　　「あんたの顔には死相が出ておる。 もう長くあるまい・・」

　その占い師はよく当たると評判で、さすがの次郎長もがっくりきた。
　で、今までの悪行を深く反省し、どうせ死ぬなら徳を積んで死にたいと思った。
　それからの次郎長は私財を投げ打って人々の為になるべく尽力したんだそうな。

　時は過ぎ、占い師が予言した次郎長の死期に近づいても何も起こらない・・
　いや、それからもずっと何も起こらなかった。
　タイムリミットをずっと過ぎてくだんの占い師に再会した次郎長が占い師に言うには・・・

　　　「やいやい、てめえが死ぬって言うから有り金はたいちまったがまだピンピンしてるぞ！ このインチキ占い師め！」

　で、占い師いわく。

　　　「おかしいな・・・。 そう言えばアンタの顔から死相が消えておるわ。 善行で徳を積んだおかげで命拾いしたようじゃな」

　それからも次郎長は世のために尽力を惜しまなかったという話でした。

　実は私はこれに似た話を２つ知っています。
　実際に私が出会って話を聞いたお二人です。
　お一人は占い師として、もうお一方は修験者として活躍され、もう齢も重ねておられます（お一人は80余歳、もうおひとりは70余歳。ともに女性です)

　お二人とも若い頃に死を宣告されたものの、神事に就いて悩めるお人を導き、徳を積み現在に至ると伺いました。

　徳ってお得！　・・・ですネ！


唯浄