YuHiのブログ

たまには勉強しましょう。論文:COVID-19で重症化した青年男性

以前、こちらでちらっと紹介した論文。
訂正)正確には4塩基欠損でした。
"In members of family 1, a maternally inherited 4-nucleotide deletion was identified"

【結論】
Findings
In a case series that included 4 young male patients with severe COVID-19 from 2 families, rare loss-of-function variants of the X-chromosomal TLR7 were identified, with immunological defects in type I and II interferon production.

2家系のCOVID-19重症若年男性患者4名を含むケースでは、
X染色体のTLR7のまれな機能喪失変異が同定され、
I型およびII型のインターフェロン産生の免疫学的欠陥が認められた。


【参考】
・TLR : Toll様受容体(トルようじゅようたい)

・TLR7 : 体内に侵入してきたウイルス由来のRNAを感知して自然免疫応答を引き起こすToll様受容体7(TLR7)と呼ばれるタンパク質。

・Toll様受容体TLR7はグアノシンおよび1本鎖RNAを認識する

Toll様受容体(Toll-like receptor:TLR)は1型膜貫通タンパク質であり,自然免疫において病原体のセンサーの役割を担う1).Toll様受容体は細胞外においてリガンドを認識するLRRドメイン,膜貫通領域,細胞内においてシグナル伝達にかかわるTIRドメインから構成され,病原体の分子パターンを認識して自然免疫を活性化する1).ヒトでは10種類のToll様受容体が同定されており,核酸,リポ多糖,リポタンパク質など,それぞれのToll様受容体が特定の分子パターンを認識する2). エンドソームに局在するTLR7,TLR8,TLR9は相同性が高く,TLR7サブファミリーを構成する3).TLR7はウイルスに由来する1本鎖RNAの受容体として同定され,ウイルスへの感染や全身性エリテマトーデスなどの自己免疫性疾患に関与する4-6)』

・ウイルスのRNAを感知するToll様受容体と輸送に関与するUNC93B1との複合体構造の解明

・インターフェロン:インターフェロン(英: Interferon、略号:IFN)とは動物体内で病原体(特にウイルス)や腫瘍細胞などの異物の侵入に反応して細胞が分泌する蛋白質のこと。ウイルス増殖の阻止や細胞増殖の抑制、免疫系および炎症の調節などの働きをするサイトカインの一種である

論文に戻ります。

『重度のCOVID-19により集中治療室(ICU)に入院した,選択基準を満たす病歴のない若い(平均年齢26歳)2兄弟。

血縁関係のない2家族の男性4名が,2020年3月23日~4月12日にオランダの4病院のICUに入院した。
家族1:患者 兄 32歳、弟 29歳。うち弟は最終的に細菌感染により死亡。
家族2:患者 兄 23歳 弟 21歳。

最終フォローアップ日は2020年5月16日まで。

家族1:両親、患者兄弟、未感染染の妹or姉。
家族2:母親、患者兄弟。
全員のDNAと遺伝的変異解析および機能実験を行った。

【実験手法】
① Genomic DNA Isolation
② Rapid Whole-Exome Sequencing
③ PCR and Sanger Sequencing Validation
④ In Vitro Peripheral Mononuclear Blood Cell Experiments
⑤ Real-Time Quantitative PCR of TLR7 and Type I IFN Genes in RNA From (Un)stimulated PBMCs
⑥ Enzyme-Linked Immunosorbent Assay Measurements
⑦ Statistical Analysis

(簡単に説明)
① 染色体DNAの抽出
② Exomeのシークエンス配列の決定
参考)キャプチャープローブを用いているのでこちらが参考になるかと。


③ PCR and Sanger Sequencing Validation
変異領域にあたりがついたところで、
そのDNA部分をPCR増幅した後、
サンガーシークエンスを行い塩基配列を決定した。


④ In Vitro Peripheral Mononuclear Blood Cell Experiments
血液サンプルを取ってきて、インターフェロンの生産量をアッセイ。

⑤ Real-Time Quantitative PCR of TLR7 and Type I IFN Genes in RNA From (Un)stimulated PBMCs
TLR7とType I インターフェロンの遺伝子の発現量を測定

⑥ Enzyme-Linked Immunosorbent Assay Measurements
サイトカインの量を測定する手法を用いて、実際タンパク質として発現しているインターフェロン IとIIの量を測定。

⑦ Statistical Analysis
データの統計解析。



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