稲荷町猟奇亭~妖美(よみ)

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日本文学史上に残る傑作。『国枝史郎/神州纐纈城』

2021年03月08日 18時20分07秒 | 読書ーミステリ
◆大昔に出た作品らしいのだが、出た当時はあまり騒がれなかったらしい。しかし後に三島由紀夫が大絶賛したことが原因となって再評価されたそうだ。とはいえ、一般的な文庫に収録されたりはしなかったんじゃないかな?そのあたりは大昔の事なので自分には不明。1976年だったかな?講談社から「国枝史郎伝記文庫」というシリ-ズが出て、これで一般的に入手出来るようになったんじゃないかと思う。ちなみにこの講談社文庫版では全巻が「横尾忠則による装丁」だった。



自分なんかもこのヴァ-ジョンで国枝史郎とやらを初めて知り、第1回配本だったこの作品を始めとする数冊を購入。しかしこれも2年くらいしたら絶版。次に復刊されたのは1995年だったんじゃないかと思うのだが、講談社の「大衆文学館」という文庫シリ-ズの1冊として発売された。



長らく絶版状態になっていたこともあり、この時にはかなり話題になって爆発的に売れた事を覚えている。何しろ大規模書店の文庫売上ランキングを見るに、当時はこれが軒並み第1位になっていたもんな。読みたくても読めなかった人達が、わっ!‥‥と飛びついたのだろう。しかしこれも1990年代の終わり頃には絶版。現在では河出文庫で唯一読める。



自分は冒頭に書いた通り1976年に出た「国枝史郎伝記文庫」(講談社)で初めて読んだ。確か小学6年の3月か中学1年の4月だったような気がする。年齢的に「怪奇小説的なもの」を期待して読んだわけだが、期待外れ。そりゃそうだ。これは本来「怪奇小説」ではないし、そんな年齢時にこの作品を読んでも真価は理解出来るはずがない。テ-マすら理解できないだろうよ。20歳くらいになって、ふと改めて読み返した時、この作品のテ-マや奥の深さがようやく理解出来たような気がした。なるほど三島由紀夫が絶賛したのも納得がいく。日本文学史上に残る傑作!ちなみに自分がこの作品で一番好きな場面は、後半で出てくる「光明優婆塞と陶物師との対話」のシ-ン。圧巻!
◆1つ前の記事にも書きましたけどね、『クリスティ-/死との約束』のTVドラマ化について。舞台を日本に移してのドラマ化。ポアロも日本人探偵に転じて‥‥となりますと、ケチはいくらでもつけられるかもしれない。しかし自分としてはケチをつけるつもりはさらさらない。それだけあのTVドラマ版は面白くて完成度も高くて楽しめた。しかしここで取り上げたいのは、あのように「クリスティ-作品を、舞台を日本に移して」というアイディアはどちらが先だったのか?‥‥という事。というのも、クリスティ-『ABC殺人事件』『青ざめた馬』の二作にて、舞台を日本に移し、ポアロなどの登場人物を日本人にして‥‥というアイディアは、漫画家の星野泰視も数年前の漫画作品で試みている。ちょっと気になったのでネットで調べてみたところ、あのTV番組版は第1作目が2015年の『オリエント急行』、2作目が『アクロイド』をペ-スにした2018年の『黒井戸殺し』、そして今回の2021年『死との約束』。ほほお‥‥全然知らなかったのですが、TV版第1作目は2015年だったのですか。そして2015年、2018年、2021年‥‥というペ-スでこのTV番組が作られているという事は、次回作は2024年ですかい?ええええっ、そこまで待てと?あと3年も待つんですかい?自分としてはあれだけの完成度のTV番組なら、もっと早く観たいのですが‥‥。まあ、慌てて雑な造りの番組にされてしまっても困るので、無理は言いませんが‥‥。話を戻すと、星野泰視の漫画版も2015年頃に第1作目が出ていたような気がする。まあ、どちらが先でもいいのだが、いずれにしても「クリスティ-作品で舞台を日本に、登場人物を日本人に替えて‥‥」というアイディアは流行りなんですかね?そして自分としてはこの機会に「星野泰視の漫画版クリスティ-」も今一度評価されて欲しいよな‥‥という事が言いたいのである。最近は絶版のサイクルが速くて、星野泰視の漫画版『ABC殺人事件』『蒼ざめた馬』も入手困難らしいので。ちなみにこの漫画版、『ABC』は「まあまあ」といった出来だったのだが、次に出た『蒼ざめた馬』は本当に素晴らしかった。もっと話題になっても良かったと思うんだがな。




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