知財でビジネス活性化

知財経営、弁理士試験対策、知財制度情報等々あれこれ書き綴ります。

知財コンサル研究(6)

2009-08-27 17:54:42 | 日記
知財コンサルといっても会社の規模や考え方によってやるべきことは様々です。
たとえばファイナンス面で行き詰っている会社に、知財で競争優位性向上を、なんて言ってもしょうがないですし、体力のある大企業には目先の利益向上から離れた支援も可能でしょう。

私が主に支援したいと考えている企業は、新商品を開発できる程度の体力はあるが、知財環境の構築のような直接利益が増えるかどうかわからないことよりも利益向上に結びつく支援を欲している企業です。そして、このような企業こそが真に知財戦略コンサルティングが必要な企業であり、我が国の産業政策上の知財強化対象ということになるのだと考えています。
さらに言うと、こういう企業の支援をしないとわれわれ弁理士の仕事は増えないということも言えると思います。

このような企業が支援対象だとすると、当然支援する側においては会社に利益をもたらすコンサルティングをしなければならないということになります。
売り上げを伸ばすのでもいいですし、無駄を排除して効率を上げて利益率を向上させるのでもいいです。しかし、しずれにしろ成果が具体的な数字として表れるようにしなければ企業は支援を望まないでしょうし、成果を図ることもできませんからお金をもらいようがないのではないでしょうか?
ではまた

広いクレームって

2009-08-21 09:05:15 | 日記
クレームは広い方がいいという神話めいた言葉があります。
確かに、広い範囲で権利化できればそれに越したことはないでしょう。
しかし、具体的な実施態様もないのに理屈上考えられるからと言ってクレームの範囲に入れてしまうのは自分の首を絞めてしまいます。
化学分野では顕著です。たとえば、以下のようなケースです。
出願a:クレーム「置換基としてAを用いうる旨記載」
    実施例「Aについては記載なし」
出願b:出願a公開後の出願
    クレーム「Aを置換基として有する」
    実施例「置換基がAのものを記載」

上記ケースでは出願bは出願aを引例として29条2項(または1項3号)で拒絶されます。
しかも出願aでも置換基としてAを有するものについては36条の問題があるため権利化できません(権利化できても無効理由を含むことになります)。
えっ、そんなことあるの?と思われる方もあるかも知れませんが、化学分野では多いです。出願が多くなると訳わからなくなるのでしょうかね?
機械分野でも、たまにクレームに記載した態様を実施例で書いていない明細書を見ます。昔の1発明のときの考え方から抜け切れていない方の作った明細書なのでしょうが、たとえ下位概念であってもやってみないとどんな優れた効果が生じるかわからない面もあると思いますので、上のケースと同じようなことが生じ得ます。

要は広いクレームといっても、実際に検証していないものをクレーム(または明細書)に具体的に記載するのは非常に危険であることをしっかりと認識することが重要で、ポートフォリオにはその点もきちんと加味していくことが必要だと思います(結局しっかりとポートフォリオを作ることが重要)。
ではでは

21年特許の問題

2009-08-14 22:51:02 | 弁理士試験
先日、受験生の方から、今年の特許の問題Iについてメールをいただき、話をさせていただきました。
問題(1)では分割を書くべきかどうかということが問題になりました。私は直接受験機関の説明を聞いたわけではないので不正確なコメントになるかもしれませんが、どうも受験機関の説明では、分割を書くのかどうかということだけを問題にしていてその背景にある事柄に気を配っていない、もしくはきちんと受験生に伝えていないのではないか?と思ってしまいます。
 この問題に対する私の見解は以下のとおりです。
・問題Iで特許庁の論点としては補正と分割しか挙げられていませんが、本問ではそれらの当然の思考の前提若しくは背景として単一性が問われていると思います。私に言わせれば平成17年の問題の焼き直しです。
(1)については以下のような思考の流れになると考えます。
①請求項1に新規性なし→削除補正
 ↓
②請求項2(発明Pを含む発明)はこれで目的を達成できるのでそのまま残す
 ↓
③目的達成のためには新たにA+C(発明P’)をクレームアップ
 ↓
④発明Pを含む発明と発明P’とを対比すると両者は新規性のないAにおいての
み共通
よって、単一性を満たさない
 ↓
⑤両発明は分割しておいた方がいい
このような思考の流れを条文に即して説明することが必要なのであって、各論点が書いてあるとないとかいうことを独立に論じることに何の意味があるのでしょうか?
ちなみに私は③まで書いてあれば落第点はつかないと思います。
私はゼミでリーガルフローチャートを作成してもらっていました。実務上も自分でフローチャートをかけるということが重要なので、思考の流れを自分で構築することができるようになるための訓練としてです(たぶんリーガルフローチャートを最初に受験指導の場に持ち込んだのは司法試験の伊藤真先生だと思います。私のも真似です)。実務に精通されている方は意識していなくても頭の中でフローを書いてクライアントに選択肢を提供している(または手を打っている)と思います。

 受験機関は、もうそろそろいいかげんに上っ面の論点表だけで話をするのはやめて受験生に本質を考えさせることもやっていかないと、受験機関が弁理士のレベルを下げているといわれるのでは?

試験勉強雑感

2009-08-13 09:09:06 | 弁理士試験
夏ゼミを過去2年間担当してきましたが、今年は受講希望者が少なくて取りやめになってしまいました。10人集まらなかったら取りやめということでしたので仕方ないです。千葉での開講でしたので、千葉を希望する方が少なかったということもあるのですが、私の考え方と受講生のニーズとがあっていないですね。実感です。
もっとも私は自分なりの使命感を持って講師をやっているので受講生のニーズに合わせようとはしていませんから合わないのは当然ですね。
思うに、受講生の方は使い勝手のいい資料をもらったり、手取り足取り指導してくれるようなゼミに入りたいようです。お金払うのですから当然ですね。
確かに、要領よく1・2回の受験で試験を突破する方には、他人の資料をそのまま覚えこんだ方もいらっしゃいますし、講師に頼りっきりの方でも講師とフィーリングが合えばうまく合格する場合もあります。
しかし、3回以上受験している方は、そんな勉強方法ではなかなか合格しないと思います。よしんば合格したとしても実務に入ったときに苦労します。実際、各事務所で指導する方の話としては「最近の合格者は言われたことはできるけど応用力がない」という話をよく聞きます。要は自分で問題点を見出して解決手段を提案する(それもクライアントが取捨選択できる用に複数の選択肢を提示し、自らのコメントを添える)という基本中の基本ができないということです。
そうなるのは当然でしょう。受験勉強という絶好の機会に受け売りの勉強しかせず、自分で考えること、すなわちリーガルマインドの育成も問題解決能力の育成もしていないのですから。
ただでさえ、択一合格者のレベルが落ちているのに、こんな姿勢で勉強する合格者ばかり輩出していると弁理士業界全体のレベルが落ちて弁理士業界の信頼性が低下するのではないかと感じてしまいます。

広報活動の重要性

2009-08-12 03:43:31 | 日記
知財が経営にとって必要不可欠で、知財戦略を立てなければ事業戦略が絵にかいた餅になってしまうということは、このブログをご覧になっていらっしゃる方にとっては周知だと思います。
でも、先日も書いたように一般にはまだまだ知られていません。
このことをより広く周知にするためには、地道に広報活動を行っていくしかないのでしょうね。
先日もある金融関係の方とお話をさせていただいた際に、競争優位性をもたらすのは広い意味での知的財産、知的資産であり、自社の知的資産を把握することが重要だという話をしても、自分の会社については適用されない話だと思われていました。
私は製造業に的を絞って活動するつもりでいるのですが、知財・知的資産は製造業に限ったものではなく他のサービス業などにもあるものだという感覚が持てないようです。すぐにビジネス特許の話だと思われてしまうありさまですから・・・
本当に広報活動が重要です。ほんと・・・