興譲館、圧倒する大応援 選手に元気
三塁側アルプススタンドには、興譲館の生徒や地域住民ら約3千人が陣取った。好機のたび、チームカラーである緑色のタオルやメガホンがスタンド中で揺れ、相手チームを圧倒する応援で選手らを元気づけた。
三塁側アルプススタンドから大きな声援を送る興譲館の応援団=阪神甲子園球場で
「観客が思ったより多く、最初は焦ってしまった」と、生徒会長の前原翔太さん(17)。次打者名を書いたプレートを広いスタンドの6カ所に配置し、その間を生徒らが何度も往復して一体となった応援を繰り広げた。
スタンドの通路には生徒や地域の子どもたちからなるチアリーダー約100人がずらりと並び、黄色いポンポンを力いっぱい振り続けた。子どもと一緒に応援に訪れた佐藤美幸さん(34)は「精いっぱい力を出し切ってほしい」。チアリーディング部部長の佐能沙耶香さん(17)も「地域の方々の声援と興譲館のパワーを合わせたい」。
先発の妹尾投手は味方の好守備にもり立てられ、2回まで1安打に抑えていた。相手打線が一巡した3回、妹尾投手の父幸弘さん(44)は、息子が相手を三者凡退にしとめた瞬間、真っ先に立ち上がり「よし!」と大声を上げた。
4回、1点を先制されなおも無死満塁のピンチに、「妹尾」コールがわき起こった。犠飛などもからめ計3点を失ったが、応援団長の鶴谷祐大さん(17)は「3点差ならひっくり返せる。自分たちの応援で相手にプレッシャーをかけたい」と闘志をみせた。
逆に3連打などで走者を三塁にまで進めた7回の攻撃では、観客は小躍りしながら大声援。しかし、好機を三本間の挟殺や空振り三振で阻まれ、植木選手の父英正(ひでお)さん(42)は「1本打ってくれてほっとしたけど……。良い試合なので逆転を信じてます」。
ブラスバンドに参加してトロンボーンを吹き続けた黒木克美(かつよし)さん(39)は「早く1点を、という気持ちもあるけど、9回のドラマを楽しみにしてます」と期待を寄せた。
9回表。ひときわ大きな声援の中、最後の打者が三ゴロに打ち取られると、「ああー」と大きなため息がもれた。だが、悲鳴はすぐに選手らへの温かい拍手に変わった。
三宅主将の母千恵さん(38)は「甲子園に連れてきてもらっただけでもありがたい。いつも通りの元気な全力疾走を全国の人に見てもらえて良かったです」と話した。