医者の妄言

臨床医の戯れ言です。興味があればコメントよろしく。

天皇の政治的影響力

2006-08-01 22:08:32 | 社会
私が今回の富田メモ騒動で考えさせられたのは、この国における天皇の影響力というものについてである。

富田メモなるものの公表後、世論調査では首相の靖国参拝に否定的な数字が跳ね上がっている。メモの真偽、天皇の真意、その他もろもろの詮索も盛んである。

戦後60年以上経過してなおかつ天皇という存在のもつ潜在的な政治的影響力というのはものすごいものがあると言わざるを得ず、これに比べて議会や総理大臣なるものの影響力は吹けば飛ぶようなものに見えてしまう。

天皇の政治的利用ということを考えると、戦前の悪夢の再来というのは全く荒唐無稽な話ではないのかもしれない。

靖国問題及び富田メモ

2006-07-23 14:38:22 | 社会
靖国神社はA級戦犯を昭和殉難者として讃えており、このような立場からはA級戦犯の合祀は当然である。そして一宗教法人である靖国神社がかつての戦争、A級戦犯に対してどのような見解を抱こうが自由である。

これに対して日本政府はかつての戦争あるいはA級戦犯に対して靖国神社とは全く異なる公式見解を一貫して表明している。私はこれまでこの日本政府が公式にとってきた見解を賢明なものとして支持する。従って政府要人の靖国神社への関与は形式的には憲法に定めた政教分離原則に反する疑義があるのみならず、国内、国外政策的に整合性がとれないため反対する。

これに対し天皇の個人的見解なるものはある観点からは非常に興味深いものではあるが、私は靖国問題の核心部分とは本来何ら関係のないものであると考える。したがって天皇の個人的見解なるものよって私の意見は全く影響を受けない。

これに対しある立場の人たち、例えば“国家の為に戦った戦没者を慰霊するのは国家の義務であり、靖国神社以外にそのような場は考えられない”とする人たちは、仮に“昭和天皇が個人的にA級戦犯合祀に不快感を示していた”ということが事実であったとして、それに対して何故過剰な反応を示す必要があるのか教えて欲しいものだ。

金正日の暴走はあるか?

2006-07-19 22:42:42 | 社会
北朝鮮の金政権が瓦解の過程にあり、もはや長期的には日本にとって脅威足り得ないという認識は今日一般的だろう。しかし短期的には追いつめられ窮鼠猫を噛むが如き暴走、暴発があり得るのでこれに備えて先制攻撃も辞さずとの威勢のいい議論があるが、これに対しては異論を呈せざるを得ない。

およそ歴史的に見て権力者とは独裁的であればあるほど我が身が可愛く自己保身を第1の信条としているようである。大国アメリカに追いつめられたフセインはどのように暴発したか。暴発するどころか国内を逃げ回ったあげくに捕らえられたではないか。ベルリンの壁が崩壊し多くの東欧の一党独裁的政権が倒れたが、暴発した権力者は存在したか。ルーマニアのチャウシェスクの惨めな最後はどうか。東南アジアのかつての独裁的権力者はどうであったか。歴史が示すところでは権力者が追いつめられた時考えることは暴走などではなく、逃亡である。かつての皇国日本も原爆投下という事態にあって政権中枢が考えていたことは“決戦”などではなく、“国体護持”の保証であった。

いまや北朝鮮の命運を最終的に握っているのは中国と考えてほぼ間違いないと思うが、中国が現政権を見放した時点で起こり得ることは内部抗争及び金一族亡命の企てと考えるのが合理的な予測というものだろう。