フランク・ザッパに憧れた。
正確にはそのギタープレイに、である。
私は10代の時、ギターを弾き始めた。最初はとにかくヘタクソだった。
1年、2年と弾くうちに少しずつ、なんとかギターの演奏らしくなってきた。
とにかく上手くなる為に、いろいろなギタリストを参考にし真似してみた。
自分の中に取り入れることが出来そうなスタイル、要素を探しまくった。
数え上げれば、きりがない。
スティーヴ・ヴァイ、ポール・ギルバート、ヴィニー・ムーア、
ジョン・サイクス、エディ・ヴァン・ヘイレン、スティーヴ・モーズ、
アンディ・ティモンズ、アラン・ホールズワース、スコット・ヘンダーソン、
フランク・ギャンバレ、ジョージ・ベンソン、アル・ディメオラ、
パット・メセニー、リー・リトナー、アンディ・サマーズ、
ロバート・フリップ、アレックス・ライフソン、デイヴ・ギルモア、
ライ・クーダー、ジョニー・ウインター、タル・ファーロウ、
バーニー・ケッセル、ウエス・モンゴメリー、パット・マルティーノ、
などなど・・・
でもある時、気がついた。
『この人達、みんな上手すぎて参考にならない・・』
これらのプロの中でもトップクラスのプレイヤーと自分とでは、テクニックの
ギャップが有りすぎて、そのエッセンスをうまく自分の中に取り入れることが
出来なかったである。
・・・悩んだ。
自分はもうこれ以上ギターが上手くならない・・・と落ち込んだ。
18才くらいの時である。
その当時一応、フランク・ザッパの名前は知っていた。
あのスティーヴ・ヴァイやエイドリアン・ブリュー、テリー・ボジオ、
ジョージ・デュークなどの多くの有名ミュージシャンの師匠。
オーディションがとても厳しい、世界一のハイテク集団の親分。
(これはスティーヴ・ヴァイの発言より・・・)
音楽雑誌には必ず『大先生』の敬称で紹介されてる大物。
奇才。天才。変人。(言いたく無いが) 変態ギタリストとも。
しかし、肝心の音が無い。どんな音楽、ギタープレイなのか確認出来ない。
周りにアルバムを持ってる人も皆無だった。
不幸な事に、当時(1980年代中期頃)はザッパの日本盤はほぼ流通しておらず、
私の住んでいた山陰地方での購入はまず不可能。東京に旅行に行った時に
やっと現物を手に取る事が出来た。(その後、1990年代になってから、
ようやく日本盤CDが順次出回るようになる。けれど相変わらず田舎の
CDショップでの購入は難しかった。だって超大物なのに、まず売れないもん。)
とにかく聴いてみようと渋谷のタワレコで『Shut Up 'N Play Yer Guitar』の
輸入盤CDを購入。聴いてみる。
・・・ぶっ飛んだ。こんなすげえギターを弾く人がいる!! と驚いた。
CD二枚組のこのアルバム、ザッパがファンサービス用にライヴでの自分の
ギターソロ部分のみを取り出して編集した曲ばかり。最初から最後まで、
コテコテのギターインスト集となっている。
(つまり、御本人は自分のギターソロだけでも商売になるくらい、自分の
ギタープレイにはファンがたくさんいるという点をちゃんと把握していた。)
以下、凄い点を。
ライヴ録音なのに全体的に音質が非常に良い点。ギターの音も実は歪みよりも、
パワーが強い音であること (ギターを弾く人なら分かるが、こういう音を出す
セッティングって実はかなり難しい)。ギターの演奏がほぼアドリブ一発である点。
そのアドリブも単純なペンタトニックではなく、4声以上のめんどくさいコード上
(♭5とか9thとかが付くコード) で行われている点。本人のリズム感とタイム感が
(このリズム感とタイム感というのがくやしいほど身に付かない!) 尋常でないほど、
絶妙である点、など。
正直テクニックだけで言えば、たくさんの弟子達や息子 (ドゥイージル・ザッパ)
に数段劣る、とギターマニアに言われているが、それはおっしゃる通り。
反論しません。音聴くと分かるけど、スマートさは無い。
そもそも、年齢的にも基本がブルースプレイの世代の人だし。
しかし、前述のリズム感やアドリブセンスなどは、アラン・ホールズワースや
マイケル・ブレッカー、あるいはチック・コリアといった現代屈指のテクニカルな
ソロプレイヤー達とも充分に互角、またはそれ以上、というのがザッパマニアや
音楽研究家の間では定説となっている。
しかも、おっさんだ!! CDのジャケット見ると、ほんとにおっさん。
ただのヒゲのおっさん。まったく中年のおっさんなのに、ベックや
クラプトンみたいな、華やかなロックスターのオーラなんてないのに、
音が、ギターが、音楽がかっこいい。
しかも一番びっくりしたのは、ギターの音が絶品で、録音もクリアーで、
自分とバックの演奏も超絶なアドリブ合戦で、全てがハイレベルなのに・・・
突然、ピー!!!とかギターをハウらせてる!!!
・・・フィードバック奏法などではなく、明らかにハウリング。
え!?
ここまで凄いのに、あんたシロートかい???
でも御本人、気にしてない。カットせずにCDにして売っちゃってるし。
でも、このピー!!!で吹っ切れた。結局ギターって何でもアリじゃん、
と思えるようになった。だって、ザッパ大先生だってピー!!だもの。
楽器の上達で悩んでる人へ。
天才スティーブ・ヴァイや超人テリー・ボジオなどをあそこまで鍛え上げた、
鬼の師匠のザッパ大先生でも、ピー!!なのだ。
シロートの自分たちがいろいろと上手くいかなくても、深刻になる必要なし。
(でも、努力はするべきだけど・・)
この時から、またギターを前向きに弾くようになった。
その後、ザッパのCDを次々に聞いてみて、その音楽にどっぷりとハマる。
なぜ『大先生』なのか、どこが『奇才』なのか、どうして録音がきれいなのか、
あんなに音にパワーが有るのか、やたらとアドリブ中心のソロばかりなのか、
なぜリズム感が絶品なのか、いつから『変態』と言われているのか、
なぜギターのピー!!が平気なのか、うすうす理由も分かった。
(とても長くなるので、今ここでは披露しません・・)
その後、ザッパは93年にガンで他界。
私は相変わらずギターを弾き続けるが、あまり上達していない。
けれども落ち込んだりしたときは、やっぱりザッパのCDを聴いてしまう。
で、『ピー!!』を聴いては、鼻で笑って前向きになるのだ。
ひげのおっさん・・・だけど、名演だらけ。
正確にはそのギタープレイに、である。
私は10代の時、ギターを弾き始めた。最初はとにかくヘタクソだった。
1年、2年と弾くうちに少しずつ、なんとかギターの演奏らしくなってきた。
とにかく上手くなる為に、いろいろなギタリストを参考にし真似してみた。
自分の中に取り入れることが出来そうなスタイル、要素を探しまくった。
数え上げれば、きりがない。
スティーヴ・ヴァイ、ポール・ギルバート、ヴィニー・ムーア、
ジョン・サイクス、エディ・ヴァン・ヘイレン、スティーヴ・モーズ、
アンディ・ティモンズ、アラン・ホールズワース、スコット・ヘンダーソン、
フランク・ギャンバレ、ジョージ・ベンソン、アル・ディメオラ、
パット・メセニー、リー・リトナー、アンディ・サマーズ、
ロバート・フリップ、アレックス・ライフソン、デイヴ・ギルモア、
ライ・クーダー、ジョニー・ウインター、タル・ファーロウ、
バーニー・ケッセル、ウエス・モンゴメリー、パット・マルティーノ、
などなど・・・
でもある時、気がついた。
『この人達、みんな上手すぎて参考にならない・・』
これらのプロの中でもトップクラスのプレイヤーと自分とでは、テクニックの
ギャップが有りすぎて、そのエッセンスをうまく自分の中に取り入れることが
出来なかったである。
・・・悩んだ。
自分はもうこれ以上ギターが上手くならない・・・と落ち込んだ。
18才くらいの時である。
その当時一応、フランク・ザッパの名前は知っていた。
あのスティーヴ・ヴァイやエイドリアン・ブリュー、テリー・ボジオ、
ジョージ・デュークなどの多くの有名ミュージシャンの師匠。
オーディションがとても厳しい、世界一のハイテク集団の親分。
(これはスティーヴ・ヴァイの発言より・・・)
音楽雑誌には必ず『大先生』の敬称で紹介されてる大物。
奇才。天才。変人。(言いたく無いが) 変態ギタリストとも。
しかし、肝心の音が無い。どんな音楽、ギタープレイなのか確認出来ない。
周りにアルバムを持ってる人も皆無だった。
不幸な事に、当時(1980年代中期頃)はザッパの日本盤はほぼ流通しておらず、
私の住んでいた山陰地方での購入はまず不可能。東京に旅行に行った時に
やっと現物を手に取る事が出来た。(その後、1990年代になってから、
ようやく日本盤CDが順次出回るようになる。けれど相変わらず田舎の
CDショップでの購入は難しかった。だって超大物なのに、まず売れないもん。)
とにかく聴いてみようと渋谷のタワレコで『Shut Up 'N Play Yer Guitar』の
輸入盤CDを購入。聴いてみる。
・・・ぶっ飛んだ。こんなすげえギターを弾く人がいる!! と驚いた。
CD二枚組のこのアルバム、ザッパがファンサービス用にライヴでの自分の
ギターソロ部分のみを取り出して編集した曲ばかり。最初から最後まで、
コテコテのギターインスト集となっている。
(つまり、御本人は自分のギターソロだけでも商売になるくらい、自分の
ギタープレイにはファンがたくさんいるという点をちゃんと把握していた。)
以下、凄い点を。
ライヴ録音なのに全体的に音質が非常に良い点。ギターの音も実は歪みよりも、
パワーが強い音であること (ギターを弾く人なら分かるが、こういう音を出す
セッティングって実はかなり難しい)。ギターの演奏がほぼアドリブ一発である点。
そのアドリブも単純なペンタトニックではなく、4声以上のめんどくさいコード上
(♭5とか9thとかが付くコード) で行われている点。本人のリズム感とタイム感が
(このリズム感とタイム感というのがくやしいほど身に付かない!) 尋常でないほど、
絶妙である点、など。
正直テクニックだけで言えば、たくさんの弟子達や息子 (ドゥイージル・ザッパ)
に数段劣る、とギターマニアに言われているが、それはおっしゃる通り。
反論しません。音聴くと分かるけど、スマートさは無い。
そもそも、年齢的にも基本がブルースプレイの世代の人だし。
しかし、前述のリズム感やアドリブセンスなどは、アラン・ホールズワースや
マイケル・ブレッカー、あるいはチック・コリアといった現代屈指のテクニカルな
ソロプレイヤー達とも充分に互角、またはそれ以上、というのがザッパマニアや
音楽研究家の間では定説となっている。
しかも、おっさんだ!! CDのジャケット見ると、ほんとにおっさん。
ただのヒゲのおっさん。まったく中年のおっさんなのに、ベックや
クラプトンみたいな、華やかなロックスターのオーラなんてないのに、
音が、ギターが、音楽がかっこいい。
しかも一番びっくりしたのは、ギターの音が絶品で、録音もクリアーで、
自分とバックの演奏も超絶なアドリブ合戦で、全てがハイレベルなのに・・・
突然、ピー!!!とかギターをハウらせてる!!!
・・・フィードバック奏法などではなく、明らかにハウリング。
え!?
ここまで凄いのに、あんたシロートかい???
でも御本人、気にしてない。カットせずにCDにして売っちゃってるし。
でも、このピー!!!で吹っ切れた。結局ギターって何でもアリじゃん、
と思えるようになった。だって、ザッパ大先生だってピー!!だもの。
楽器の上達で悩んでる人へ。
天才スティーブ・ヴァイや超人テリー・ボジオなどをあそこまで鍛え上げた、
鬼の師匠のザッパ大先生でも、ピー!!なのだ。
シロートの自分たちがいろいろと上手くいかなくても、深刻になる必要なし。
(でも、努力はするべきだけど・・)
この時から、またギターを前向きに弾くようになった。
その後、ザッパのCDを次々に聞いてみて、その音楽にどっぷりとハマる。
なぜ『大先生』なのか、どこが『奇才』なのか、どうして録音がきれいなのか、
あんなに音にパワーが有るのか、やたらとアドリブ中心のソロばかりなのか、
なぜリズム感が絶品なのか、いつから『変態』と言われているのか、
なぜギターのピー!!が平気なのか、うすうす理由も分かった。
(とても長くなるので、今ここでは披露しません・・)
その後、ザッパは93年にガンで他界。
私は相変わらずギターを弾き続けるが、あまり上達していない。
けれども落ち込んだりしたときは、やっぱりザッパのCDを聴いてしまう。
で、『ピー!!』を聴いては、鼻で笑って前向きになるのだ。
ひげのおっさん・・・だけど、名演だらけ。