形式・テーマ:特になし
なお、例会以外にもいつでも作品の批評を求められるようにします
批評を求める場合は、本blogにその旨の書き込みをし、その上で参加者全員へメールで知らせてください。
批評を求められた場合は、参加者の義務としてきちんと批評しましょう。
(文責:Σ)
※「構成」「文体」「人物」「総合」を分けての評価をしてなかったので後付けですが追加しておきます。
「ワスレガタキ」 りょく作
構成「A」
文体「A」
人物「A-」
総合「A」 (文句を付けるとすると小奇麗にまとまり過ぎている点。いやミステリ的には褒め言葉でしかないのですが……)
短編ミステリ劇としては申し分ない。完成度高し。
ミステリ視線で読むと早い段階で物語の構造は見えるのだが話がどう進むかわかっていても読者をひっぱれるだけの書き手の力があった。一種のホラーとして読めるからというのもあるかもしれない。
地の文はほぼ必要十分な説明がなされている。心内突込み的な文章が気になったりもするが、それは文体だと割り切れる。
キャラクターは探偵役の人物が非常によかった。普段駄目駄目なのに急所で冴えるというのは一つの黄金パターンだろう。主人公はラノベの王道「周りの女性から好かれる(色んな意味で)」「受け身」「突っ込み」を満たしている。
ラノベ系短編ミステリ賞みたいなのがあったら受賞するだろう。
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「ミケといた夏」 カオス作
構成「B+」プロットがあったお陰で大きく物語が暴走することはなかった
文体「B+」よい文体とは何なのか?
人物「B+」容姿を描写すべし
総合「B+」
欠点が多過ぎる。
必要十分という描写ができていない。不必要な部分を多く書き、必要な部分を少なく書いている感じ。
そのためにキャラクターに魅力が出ていない。キャラぶれもある漢字。
話の大筋、構造自体は悪くないと思うのだが全部読んで全部腑に落ちる感はあまりないのではないか。
有亜はそもそもプロット完成時点で登場する予定のないキャラだったが適当に出してみたら物語のキーパーソンになってしまった。書き終わって「こういう話だったのか」と自分の中では腑に落ちたので、もう一度最初から書き直したら読める話にはなるかもしれない。
政治家の秘書ってそんな仕事じゃないよね……。あれ? 冒頭の小島は関係ないの? 突っ込みどころは満載されているはず。あばば。
既存の物語や疾病の概念を一つずらすという手法は「ワスレガタキ」「ミケといた夏」共に同じなのだが完成度の点で前者が優れている。
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詩 シャオリン作
総合「C+」(指摘部分で才能を見せた表現を加えることができればB~B+)
「渡り鳥」
吐き出した吐瀉物は一体なんだったのだろう?
身の丈に合わない夢とか、作り過ぎたガンプラとか、息苦しい人間関係とか、笑えることが一つもないその地での思い出とか、国籍とか、親とか、アイデンティティとか……。
「捨てる」ではなく「吐き出す(おそらくは鳥だからということだろう)」のだからその時の心情を吐露しろということなのだろうか。
1段落使ってその吐き出す具体的なものを羅列すれば印象に残る詩になりうるのではないか。その時の固有名詞の選び方が詩のセンスということになるのだろう。
「若者」
彼が「誰にも気付かれないように」空を睨む理由は何か? 彼は他の人から見れば普通に日常を送っているということなのだろう。例えば普通に社会人生活を送っている。それでも破滅願望のようなものを持っているのだ。
では彼が見上げる「空」はどんな空なのだろうか。それを書くことで若者の心はより鮮明に浮かび上がるのではないか。私なら「透き通るように高い空」「過去の憧憬を映す秋の夕空」などを入れるかもしれない。「暗雲経ちこめる空」などではないはずだ。人は美しすぎるものを見た時のほうが死にたくなる時だってあるのだ。
二作とも短いのが悪いわけじゃなくておそらくはその詩をもっとも特徴付けるであろう描写の部分を書いていないのが少々残念。
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「別ルート」 まよいまつり作
構成「B-」(大きな構造はこれでいいがさらに細部の構造を考えるべき)
文体「B」(僕もよくしてしまうことであるが表現が面倒臭いところを省略してしまう嫌いがある。)
人物「B-」(斬新)
総合「B」
(文章作法)
・「・・・」の三点リーダは普通「……」で表すことが多い。
・「あなたは狂ってなんかいないわよ。証拠にあなたしか知らないことも知っているわ。たとえば・・」のたとえばを具体的に書くと面白そう。
(お話)
とても他人ごととは思えない設定の小説。現代内向オタクのための私小説といったところか。
別ルートの僕がこんな超絶魔法的なことができるのはどうしてだろうか? という疑問は残るが、別ルートの僕は向こうで本物の「D2」に出会ったのかもしれない。そして「自殺は辞めようよ。別ルートの君と入れ替わるという方法があるわ」と唆されたのかもしれない。別ルートに行くことになる僕は向こうでまた本物のD2と出会うことになるとする。そしたら僕は別ルート´の僕と入れ替わるという行動をするのではないか。次々と置換していく数学の構造が連想される。