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24/5/30木11:41セブン&アイが北米責任者に「年77億円」払う理由 業績連動で膨張、報酬額は井阪社長の22倍にAVGO1378.73$

2024-05-30 11:39:00 | 米国株

セブン&アイが北米責任者に「年77億円」払う理由業績連動で膨張、報酬額は井阪社長の22倍に冨永 望 様記事抜粋<

セブン&アイ・ホールディングスの取締役専務執行役員である、ジョセフ・マイケル・デピント氏の2023年度役員報酬が77億円に達していたことが、29日わかった。

同日開示された、セブン&アイの有価証券報告書で明らかになった。同氏は前期も37億円超の役員報酬を受け取っており、配当収入などを除いた役員報酬としては日本の上場企業の中で2番目の多さだった(詳細はこちら)。今回の「昇給」でトップに躍り出る可能性もある。

米国子会社のインセンティブで増加

77億円の内訳をみると、セブン&アイの取締役としての報酬はわずか2200万円。残りのすべては、同氏がCEO(最高経営責任者)を務めるセブン&アイの北米コンビニ子会社、セブンーイレブン・インク(SEI)取締役としての報酬となっている。

SEIからの報酬はなぜここまで膨らんだのか。SEIの報酬体系が、業績連動型となっていることが一つの要因だ。

セブン&アイの井阪隆一社長CEOの報酬は、7割が業績連動型報酬となっている。一方でSEIでは9割以上が業績連動型報酬だ。SEIでは短期(直近1年)、長期(直近3年)での業績・企業価値向上度合いによってインセンティブを設けており、今回の査定対象期間は短期が2022年、長期が2020年~2022年だった。また円安も報酬額を引き上げる要因

デピント氏はアメリカの競合コンビニチェーン首脳を経て、セブン&アイ・ホールディングス発足前の2002年にSEIに入社した。翌年にはバイスプレジデント(副社長)に就任しており、以来20年以上、SEIの陣頭指揮を執ってきた。

SEIはセブン&アイ完全子会社となった2005年には店舗数6000弱、営業利益300億円台と、グループの1事業に過ぎなかったが、2023年度には店舗数1万3122、営業利益4139億円とグループ最大の中核事業となった。その最大の功労者がデピント氏であることは間違いない

戦略の主柱はM&Aだ。日本のコンビニ市場はトップ3チェーンのシェアが93%を占めるが、北米は首位のSEIを含む上位10チェーンを合わせても全体の2割に満たない。そんな環境でSEIは2005年から2022年まで50件のM&Aを実施。7000店舗以上を取得

スピードウェイ買収で存在感

中でも象徴的なのは2021年に実施した、当時のアメリカで第3位チェーンであったスピードウェイの買収だ。

日本のセブンーイレブン事業がコロナ影響で低迷する中、スピードウェイを連結化したことで2021年度から全体収益に占める海外コンビニ事業の比率が膨張。2020年度には収益ともに連結業績の3割程度だったSEIは、スピードウェイが初めて通期貢献した2022年度には売り上げにして全体の74%、営業利益の78%を占める規模にまで成長した。

あるグループ中堅幹部は「スピードウェイ買収を機にグローバル(企業)という意識が高まり、(資本市場からの目に)耐えられるようなガバナンス体制や事業構造改革の議論が本格化した」と話す。デピント氏はそんな一大案件の立役者と呼ばれており、別のグループ関係者も「デピントはとにかく優秀」と手放しで評価する。

今回デピント氏の報酬が膨らんだのも、このスピードウェイ買収によりSEIの規模が拡大したことが大きい。さらに2022年度の業績が当初の計画を大きく上回ったことが、同氏のインセンティブを引き上げた

ただ、すべてが順風満帆というわけではない。今回の査定対象期間からは外れるが、昨2023年度はSEIにとっては逆風の強い1年だった

2023年度の北米市場は、コロナ禍で実施されてきた多額の財政出動が順次停止され、そこに高インフレや金融引き締めが加わり、厳しい消費環境が続いた。中でも現地のコンビニの主要顧客である低所得者層への影響は大きい。既存店売上高の伸び率は、当初計画の4.5%増を大きく下回り、わずか1%増にとどまった。

また、SEIの主力商品であるガソリン販売で、1ガロンあたりの粗利額が前年を下回ったことも響いた。結局SEIの売上高はドルベースで前期比10%以上も減少した。

そんな状況下でも、存在感を見せつけたのがデピント氏だった。規模を生かしたメーカーとの原価交渉やオペレーションの見直しに取り組む「コストリーダーシップ委員会」を主導。実現した経費削減額は年間で3億ドル超に達した。その結果、円安の後押しもあり、2023年度は円ベースで4%以上の営業増益を果たした。

2024年度はさらに3.5億ドルのコスト削減を行う計画だ。取引先との交渉継続のほか、スピードウェイ店舗へ日本流「単品管理」を可能にするシステムを導入。逆にスピードウェイが得意とする効率的なガソリン物流の仕組みを、一部セブンーイレブン店舗に拡大するなど、統合シナジーの発現を推し進める。厳しい外部環境で減収(ドルベース)が続く見通しだが、増益(同)に持ち込む計画

株主総会で報酬の議論は一切なし

スピードウェイという大型買収の影響でデピント氏の報酬総額ははね上がった。その一方で、セブン&アイの井阪社長の報酬は3.4億円、セブンーイレブン・ジャパン社長を兼ねる永松文彦取締役は1.7億円にとどまる

デピント氏の77億円に対し、永松文彦セブンーイレブン・ジャパン社長の報酬は1.7億円。日米で大きな差がついた(撮影:今井康一)

今回の報酬面での「親子間格差」は、日米の役員報酬のあり方の違いだけでは説明がつかない。セブン&アイはコンビニ事業に経営資源を集中させており、その中でも伸びしろの多い海外事業、特に北米の重要性が年々高まっていた。そうした変化を如実に表したものといえるだろう。

本来、取締役の報酬は株主総会の決議によって決めるものだ。セブン&アイでは取締役の報酬総額を年間10億円と定めている。デピント氏のSEIからの報酬は、直接的にセブン&アイ取締役としての報酬ではないため、この総額には含まれない。

5月28日に開催された定時株主総会でも、セブン&アイの取締役の報酬総額が10億円の枠に収まっているため、報酬が議題になることはなかった。株主からの質問も、国内コンビニ事業に集中し、海外事業やそれを担う事業会社のマネジメントに対する質問はゼロだった。

取締役メンバーの実質的な報酬がここまで多額であることを、どこまでの株主が認識していたか。今回のデピント氏の破格の役員報酬は、株主のガバナンスを海外子会社まで及ぼすことの難しさを表しているともいえそう

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