THE WIND SYMPHONY

2016年度全日本吹奏楽コンクール課題曲Ⅰ“マーチ・スカイブルー・ドリーム”の作曲者、矢藤学のブログです。

【作曲】-(境界線)

2022-03-15 22:44:08 | 作曲・編曲作品

初演動画(演奏:鈴木啓介 氏)
https://www.youtube.com/watch?v=7gg9QUUzpHI

曲名  :ー(境界線)
様式  :作曲(ソロパーカッション+ピアノ)
演奏時間:第1楽章/3分00秒 第2楽章/4分20秒 第3楽章/7分00秒
グレード:★★★★★
特殊楽器:第3楽章のみ多数使用。
備考  :難しい

打楽器奏者・鈴木啓介氏 委嘱作品
2022年2月25日㈮ 常葉大学短期大学部専攻科音楽専攻第51回修了演奏会で初演

異なる形態のソロパーカッションのための組曲です。曲名は委嘱者様につけていただきました。
以下、委嘱者の方に送付した楽曲の紹介です。あまり長々と解説するのは得意ではありませんが…。

~ ~ ~

生と死の境界線、黄泉比良坂。神秘的で蠱惑的なその場所は、それでいてイザナギとイザナミの物語を加味すれば、どこか強烈なユーモラスさも感じられる。神話とはかくも七色の印象を与える不思議なものである。本作は黄泉比良坂にまつわる印象を、登場人物になぞらえながら綴った3つの小品である。

第1楽章 無伴奏スネアドラムソロ
カグヅチはイザナミより生まれた火の神。母・イザナミが死んでしまい、父・イザナギに殺されてしまうというエピソードはカグヅチというキャラクターを強く印象付ける。苛烈でどこか孤独なその印象は無伴奏スネアドラムの荒々しさに、何か通ずるものがあるだろう。

第2楽章 ソロスネアドラム+ピアノ
イザナギを追い回すヨモツシコメの軍勢はさぞや恐ろしいものであっただろう。その一方で、イザナギの出す山葡萄や筍に気をとられ、貪るその姿はどこか動物的で滑稽なもの。入り乱れる変拍子と密集した和音の一方で、一定のリズムと単純な和音はその象徴ともいえるだろう。

第3楽章 ソロマルチパーカッション+ピアノ
イザナギとイザナミの仲を取り持ったククリヒメはどのような存在であったか、どこにも書かれていない。だが、どこにも書かれていないのに確かに存在する。人はそこに想像をはたらかせる。マルチパーカッションの種々の楽器を駆使し、見えないククリヒメに姿を与えようと試みた。

全体を支配する統一のモチーフを自由に展開させ、黄泉比良坂を描いた。神秘的で諧謔的なその世界観に多くの日本人が魅了されたであろう—その詳細は知らずに。伝承とはそのようなものであり、私もその伝承の一端を担ってみようと思う。今夜、委嘱初演を手掛けてくださった鈴木啓介氏もまた、独自の視点から伝承していただけることと思う。


~ ~ ~

管理人の思いを十二分にくみ取るどころか、管理人の思惑を超えたところまで導いてくださった鈴木啓介氏とピアノ伴奏の稲垣満有子氏には本当に感謝しかありません。また、演出や演奏方法、楽器の変更など、本作には鈴木啓介氏のアイデアも多分に含まれていることをここに記しておきます。

なお、本作はホームページによる依頼で承りました。
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