シンクロニシテイ馬の骨

どこの馬の骨とも知れない男にも言わずにおけないことがあるのです

ドックレスキュー頑張る

2006-01-28 01:09:39 | Weblog

1月上旬、前日から激しい雪のつづく札幌で「ドッグレスキュー」の中村功一(64歳)さんに会った。2年ぶりの再会だ。中村さんは9匹の犬たちとともに、札幌市の真ん中を東西に貫く大通り公園のほとりに車を停めて寒そうに佇んでいた。

 ドッグレスキューは、人間に捨てられた犬たちに救いの手を差延べようという組織である。         もっとも組織とはいっても基本的に犬の日常生活の面倒を見るのは中村さんひとりだ。

  しかし市民の善意がその中村さんを支える。動物好きなボランテイアの人たちが手伝う。さらにそれを、餌の提供などで協力する人たちと、問題がおきたときに支援する人々が支える。人々がきわめて緩やかな組織を形成するのである 。

  いま中村さんが面倒見ている犬は51匹。猫も4匹いる。とてもひとりで世話できるような規模ではない。ひとりで犬たちのために格闘する中村さんの献身を見ていられなくなって、力を貸そうという心優しい人たちだ。

「わたしは子供たち(中村さんは犬たちをそう呼ぶ)と頻繁に街頭に立ちますが、それは募金が目的ではありません。犬やペットも人間と同じようにひとつの生命なのです。飽きたからといって玩具でも捨てるように捨てていいというものではありません。わたしたち人類は大昔から、生きるのに辛すぎるときどれだけ犬やペットたちに慰められ助けられてきたか知れないのです。だからね、いろいろ不都合なことが起こったとしても、家族のようにあるいは親友のように何とか折り合いをつけてともに生きていこうよーー捨てないで、と子供たちと一緒に訴えているのです」

わたしがはじめて札幌の街角で犬たちと立つ中村さんと出会ったのは、1997年初冬だった。そのとき中村さんはその理由をこのように語った。その5年前から中村さんはその活動に入っていたのである。

苫小牧市のゴルフ場の送迎バスの運転手をしていた中村さんは、ゴルフ場に捨てられた一頭の犬と出会う。保健所で処分されそうになったとき、その犬を引き取ったことからすべてがはじまったのである。

以後飼い主が飼いきれなくなった犬や捨て犬が次々に中村さんのところへ持ち込まれるようになったのだ。運転手をやめ、犬たちの世話にかかりきりにならざるを得なくなる。25頭に増えたとき、支笏湖に近い樽前山麓に土地を借り犬たちとの住処にした。そこで数年過すうち40頭を超え、臭気や吠える声、病気などが問題になり、追われるように小樽近郊の朝里川に移る。そこも数年で追われ、50数頭に増えた犬とともにさまようように札幌近郊の真駒内に、そしてさらに3年ほど前現在の札幌郊外中沼町に移転したのである。

人家の少ない場所を探して移動するのだが、数年もすると近辺に家が増えはじめいずらくなるのである。

さまよえる中村さんと犬たちが気になってわたしは毎年のように会い、新聞記事にし、テレビディレクターにも紹介してテレビ番組でも取り上げてもらったりした。

この地上にあるものはすべて、山川草木虫けらも犬も猫も鳥も人もみなお互いに活かし生かされあっているのだということを、中村さんはその困難な活動でわたしたちに教えてくれる。中村さんは捨て去った飼い主に代わって、多分人間の罪の贖いをしてくれているのだと思う。

久しぶりの中村さんはあまり食べないせいもあってずいぶん痩せたようだったが、気力だけはいつものように充実していた。少しからだの小さなキリストというような風貌になってきた。顔を拝見していると自然に頭を垂れたくなる。

いまの本拠中沼は札幌といっても電気も水道もないところである。吹雪が続くと道も完全に消滅し、車でそこから出ることが出来なくなる。そのため前日から弱い犬だけ連れて市内に出てきて知り合いの店の駐車場を借りて一夜を明かしたのだという。

その日夕方わたしはドッグレスキューの車に便乗させていただいて、多くの犬が待つ中沼町のドックレスキュー本拠地に向かった。市内から1時間半近く走るとそこは見渡す限り家もない雪の原野だった。一列に並ぶ木がかろうじてそこに道があったことを教えてくれる。行ける所まで車で入り、後は中村さんのあとをついて雪をこいでいくしかなかった。

間もなく雪に埋もれた三角形とんがり屋根の犬小屋の連なりが見えてきた。中村さんの気配を感じた犬たちが一斉に吠え始める。吹雪の中で一夜寂しかったのだろう、と中村さんは言う。犬たちに語りかける。餌はたっぷりあたえていったし水は雪を食べるので食事は大丈夫らしい。暗くなってからも犬たちと中村さんの交歓がいつまでもつづいていく。犬たちの嬉しそうな声が雪原に満ちて賑やかだ。

「子犬であれば貰い手もあるのですが、ほとんどが盛りを過ぎた子達ですから、多分ここで一生過すことになるでしょう。わたしとね、、、。ドッグレスキューがこの先どうなるのかわたしにもわかりませんが、わたしはこの子達のために1日でも長く生きて頑張っていかなければと思っているんです。これでも頼られているのですから」

中村さん、春までまだ大分あります。どうぞお元気で。また来ます。

ドッグレスキューの連絡先ーー007-0890 北海道札幌市東区中沼町135 ドッグレスキュー 中村功一

7年前から犬たちの餌と中村さんの食糧支援をつづけておられる札幌市のK・K子さんよりの手紙には、次のような一節があった。「中村さんももう65歳。暖かい布団の上でゆっくり寝みたいだろうなァ、、、と」。中村さんはいつも犬や猫たちの面倒を見ながら、一緒に寝てしまうのだ。

中村さんの写真は以後の更新で掲載しています。

 

                 

 

 

 


3 コメント

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今日中村さんに会いました。 (モック)
2007-03-16 00:49:59
今日、大通のそばで中村さんに会いました。
短い時間でしたがお話させていただき感銘を受けました。いてもたってもいられずインターネットで検索してこちらにたどり着いたしだいです。

どんな支援が一番必要とされているのでしょうか?
少しでも自分の出来る範囲で協力したいです。
sfumiaki@m2.dion.ne.jp
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ペットブームの陰で (窪庭忠雄)
2006-02-11 08:35:03
 テレビにときどき登場する、エルザとアトラス。北軽井沢の雪の運動場ではしゃぎまわる映像は、人の心を和ませるものでした。

 そうした日のあたる犬たちの陰に、飼い主に捨てられてドックレスキューに命をゆだねる犬たちがいることを知りました。

 写真とレポートから発信されるものは、犬と人のかかわりの深さでした。喜びも悲しみも共に分かち合う関係、人と犬が作り出すドラマが厳しい雪原をバックに胸をうちました。

 ペットを飼う人びとが、最後まで伴侶として命を慈しみ合うことを願ってやみません。
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なんと美しい物語 (くりたえいじ)
2006-01-28 15:34:59
ドックレスキュー、すっごく感銘しました。なんと美しい物語でしょう! それも雪深い北国での実話だけになおさらドラマチックです。

犬の命も、あらゆるペット類の命も、はたまた私たちが日常的に食べている動物類の命も、人間の命と同じ。それを人間だけが傲慢にも捨てたり食べたりしている。そこには感謝の念があるんでしょうか?

中村さんという人は、捨て犬を50数匹も救いながら、そして、ご自身を犠牲にしながら、万物の命を慈しんでおられるように思えます。崇高な精神ですね。

そのトゥルーストーリーに着眼し、着実にレポートされている旭丘さんの誠実さにも心を動かされます。

それにしても、こんな事態を動物保護団体や行政は、何も対処しようとしていないのでしょうか。

原野にも等しい大地で、中村さんの帰りを待つ[子供達]が悲しくてなりません。       以上 読者より
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