【第一話、第二話、第三話、第四話をどうぞ】
暗闇のなかでふわふわとした浮遊感に包まれたまま、ミシェルが意識を取り戻すと、見覚えのある小さな女の子の姿が映った。
「姉さん・・・・」
その傍らで泣きじゃくる小さな影。あれは、紛れもなく幼い頃の自分だった。
『ミシェル、ミシェル。大丈夫よ、姉さんがいるもの』
ジェシカは幼いながらも気丈な顔をして、繋いでいるミシェルの小さな手を強く握った。
『ほんとう?どこにも行かない?』
両親を失ったばかりの弟を守れるのは自分だけだ、とジェシカはこの日に決意をした。
『うん。どこにも行かないよ』
『よかった。じゃあ、あんまりさみしくないね』
ミシェルは泣き腫らした目を細めて笑顔を作ると、姉の身体に抱きついた。その身体はか細くて、いつまでもしがみついていないと消えてしまいそうだった。
「そうだ、俺たちは両親をなくして二人きりで・・・」
助け合って生きていた。お互いがお互いを守る対象と認識し、いたわるように寄り添っていたんだ。あの頃の心細さを思い出していると、また聞き覚えのある声がした。
『なぜお前はそんなに弱いのだ?』
振り返ってみると、今度は空から降ってくる偉そうな声の主のハイソックスの足元で幼い自分は泣きじゃくっていた。
『だってぇ』
『しょうがないヤツだな。よし、これからは私が守ってやる』
『ほんと?クラン』
『誰かにいじめられたら、次は私に言え』
『ありがとう!』
クランはミシェルをひょいとすくい上げると肩に乗せ、笑顔を作った。
小さな記憶のかけらがふわりと舞い上がり、暗黒の中でキラキラと乱反射した。次々と色々な点がミシェルの中で繋がり始める。
姉はいつの間にか大人びて、きりりとした軍人の制服を身にまとったまま、生気のない顔で倒れていた。その日に感じた大きな罪悪感と後悔を忘れていないことをミシェルは思い出した。
「だから自分はもう失いたくなかったんだ」
人なんて簡単に死んでしまう、そんな絶望感にミシェルは感情を無くしていた。
『ばっかもーんっ!お前と言うヤツはっ!!』
また振り返ると、小さなクランがプリプリと怒っていた。
『いちいち言わんとわからないのか!?私は死なない!』
ふんぞり返って小さな胸を張るクランにミシェルはぷっと吹き出した。
『はいはい、巨乳ちゃんだねー』
『なっ?!』
いつものミシェルの軽口にクランの頬がみるみる赤く染まっていった。
『しっ失礼にもほどがあるっ!!今日と言う今日は勘弁ならんっ、成敗してくれる!!』
『おっとー、逃げろー』
待てーっと短い腕を振り回して追いかけてくるクランにミシェルは涙が出るほど笑っていた。
「でもクランは本当にいつもいてくれた」
そうだ、とミシェルは改めて確認した。それが自分は心地よかったんだ。自分は彼女を大切に思っている。大切すぎて手が出せないほどに。大切すぎて失いたくないほどに。愛のない情事にまみれた自分が恋愛感情を持つなんて、それ自体が彼女を汚す行為のような気すらした。そして何より、それを認めた後に失うことが怖かった。
それでもあの銃声と爆音が乱れる中、巨大化カプセルの中から泣きそうな顔をして致命傷を受けた自分を見るクランに、ミシェルは本当の気持ちをつぶやいた。最後だから、本当の気持ちを。彼女に自分を失うという思いをさせてしまうことは不本意だったが、彼女の想いは自分に届いていること、そしてまた、自分も彼女を想っている事を伝えることで、少しでも喪失感を軽減できるなら。
しかし、自分は戻ってきた。失っていた記憶もこれで大方取り戻したのだ。何より、記憶喪失の間に感じたあの純粋な愛しさは今までのミシェルの負い目を払拭し、これからに希望を抱かせるのに十分だった。
ミシェルは決めた。明日目が覚めて、クランに会ったらすべてを伝えよう。そして全身全霊で彼女を愛そう。
「そうだ。だから、クラン・・・・」
宇宙空間に吸い出されたときと同じような浮遊感に漂いながら、ミシェルは再び目を閉じた。
「ミシェル、起きてるか」
クランはいつものように朝の光が柔らかくなり始めた頃に病室を訪れcた。ミシェルはその時間にはだいたい起きているのだが、今日はまだ眠っているようだった。その安らかな寝顔に少女のようにくすっと笑うと、クランは中庭を臨む窓のブラインドを開けた。中庭の花壇には新緑が目立ち始め、鼻歌でも歌っていそうな足取りでスプリンクラーの水滴が踊っている。戦闘種族であるはずのゼントラーディの自分がようやく訪れた安らかな時間にこんなに安堵しているとは。少しまぶしいくらいの光にミシェルが起きてしまうのではないかと心配したクランは、彼の顔が陰になるように窓際に立った。
ミシェルが救出されてからもうそろそろ一ヶ月が経とうとしていたが、一向に彼の記憶が戻る気配はなかった。新しいミシェルはとても優しいうえに素直で一途で、きっと彼はクランを幸せにしてくれるだろう。それはある意味、彼女の願望だったのだ。それなのにどうしようもなくミシェルを求めている自分にクランは気づいていた。クランは影になっているミシェルの寝顔をもう一度見つめて、そのままいつものように彼から目が離せなくなったまま立ち尽くしていた。おでこから鼻筋への曲線をさえぎる睫毛のライン。学生時代より少しシャープになった頬、そして秘めていた恋心を伝えたあと、一度だけ触れた、ミシェルの唇。同じサイズになった今、自分は背伸びをしなくてもその唇に届くことができる。
(記憶が戻ったら、自分がどんなに心配して、どんなに悲しくて、どんなに恋しかったのか思い知らせてやる)
そうしたら、きっとミシェルはまた減らず口をきいて自分をからかった後、優しい目で悪かった、と言うのだろう。そして、自分はまた彼を許してしまうのだろう。ゆずりようのない感情を確認したクランはミシェルを叩き起すことにした。
「こらーっ、ミシェル、起きろ!何時だと思ってるんだ!」
まるで昔のような言い方で第一声を浴びせた後、薄手の掛布をガバッと引き剥がした。
「!?みっ」
目に飛び込んできた想定外の真紅のいびつな円にクランは目を疑った。掛布の下のミシェルのガウンには、大きく血がにじんでいる。全身の神経が一度強い力で引っ張られたような衝撃を受けた後、まるで動く気配のないミシェルの身体にそっと触れると、ゾクリと爬虫類のような冷たい体温が伝わった。
「ミシェル!!」
パニックを起こしそうになる自分をどうにか落ち着けて、クランは震える手でエマージェンシーのボタンを押した。
『どうしました?』
「はっ早く、ドクターを!ミシェルが、ミシェルが出血をしたまま意識を失っている!!」
そのあとは何がどう起こったのか、クランはよく覚えていない。気がついたらミシェルはメディカルスーツの大群に囲まれていて、自分はネネと寄り添うように病室の外のベンチに座ったまま、力いっぱい彼女の手を握っていた。
「お姉さま、きっと大丈夫ですわ」
心配そうにネネが覗き込むので、クランはああ、とだけ答えた。
(神様、どうか)
宗教と言う概念が自分にあったのかどうかわからないが、今は祈らずに入られない。クランはぎゅうっと瞳を閉じた。
(どうか、二度までも私からミシェルを奪わないでください)
ようやく求めていたものが手に入ったと思っていたのに。
どれくらい時間が経ったのか、いつの間にかメディカルスーツの団体は姿を消し、ドクターは簡潔にクランに面会を、と伝えた。ついてこようとするネネを無言で止めると、クランは少しだけ微笑んだ。彼女をこれ以上心配させたくなかったし、こんな場面は軍人なら経験済みのことなのだ。
さっきまでの喧騒が嘘のように静かでひんやりとした病室に、一ヶ月前に回収されたときと同じように安らかな顔のミシェルは横たわっていた。
(・・・・一度失っているのだ。同じことだ。)
彼がいなくなった日と同じ日々が戻ってくるだけのことだ。そうクランは自分に言い聞かせようとした。それなのに平静を装おうとすればするほど止め処もなく涙が頬を伝った。
「ミ、シェル・・・ミシェル、ミシェル!!」
押さえられず彼の名前を声に出してクランはミシェルの上に崩れ落ちた。取り替えられた真っ白なガウンを力いっぱい握って手繰り寄せ、頬をミシェルの胸に押し付けるようにして声を上げて泣いた。その拍子にミシェルの胸に置いてあったエマージェンシー用のボタンに額をしたたかにぶつけてしまったが、それどころではなかった。
「ミシェルーッ!!」
「・・・い、いたたた・・・」
かすれるようなその声が耳に入って、クランはミシェルの腹筋が小刻みに震えていることに気がついた。
「ミッミシェルッ!?」
「あいたたたた・・・・すごい頭突きだったぜ・・・息が止まるかと・・・」
「ミシェル!!!」
ミシェルが生きているのを確認すると、横たわったままの彼にクランは飛びついた。
「まっ、まて・・・く、苦しい・・・」
「なぜ生きているのだ!また死んだかと思ったぞ!」
「いや、傷口が開いたらしくて出血多量で・・・・それにしても、クラン、お前、おでこは大丈夫か?」
はっと気がついて自分のおでこに触れると、クランの手にぽっこりとしたたんこぶが触れた。
「は、ははは、やっぱり遺伝子からして不器用なんだな」
その瞬間、クランは理解した。目の前にいるのはクランの知る、ミシェルだったのだ。
「ミシェル!!!」
「いたっ、いたたたた、クラン・・・くるし・・・」
そんなかすれ声の抗議などまったくクランの耳に届いていないことを理解したミシェルは、自分の首にかじりついているクランの細い腰に腕を回して強く抱きしめた。もう触れることなどないと思っていた愛しい人。そして瞳を閉じると彼女の耳に最初に言うべき言葉を囁いた。
「・・・ただいま」
ここが自分のいる場所、そして帰る場所なのだ。するとそれに答えるようにクランの吐息がお帰りなさい、とミシェルの耳をくすぐった。そのあまりにも優しい振動に、不覚にもうっすらと涙が浮かんでしまったが、ミシェルはそれを上手に隠した。
「ねぇクラン・・・ドアに鍵かけようか」
「・・・・ばか」
最後まで読んでくださってありがとうございました!ミハクラ最高!
やっぱミシェルはエロくなきゃ\(^O^)/に賛成の方、クリックどうぞ!
次はアルシェリも考えてます。もちろんカオス桃太郎の続きもやらにゃーいけません(´ω`) なので、また来てね\(^O^)/
この話のおまけ書いちゃいましたw
暗闇のなかでふわふわとした浮遊感に包まれたまま、ミシェルが意識を取り戻すと、見覚えのある小さな女の子の姿が映った。
「姉さん・・・・」
その傍らで泣きじゃくる小さな影。あれは、紛れもなく幼い頃の自分だった。
『ミシェル、ミシェル。大丈夫よ、姉さんがいるもの』
ジェシカは幼いながらも気丈な顔をして、繋いでいるミシェルの小さな手を強く握った。
『ほんとう?どこにも行かない?』
両親を失ったばかりの弟を守れるのは自分だけだ、とジェシカはこの日に決意をした。
『うん。どこにも行かないよ』
『よかった。じゃあ、あんまりさみしくないね』
ミシェルは泣き腫らした目を細めて笑顔を作ると、姉の身体に抱きついた。その身体はか細くて、いつまでもしがみついていないと消えてしまいそうだった。
「そうだ、俺たちは両親をなくして二人きりで・・・」
助け合って生きていた。お互いがお互いを守る対象と認識し、いたわるように寄り添っていたんだ。あの頃の心細さを思い出していると、また聞き覚えのある声がした。
『なぜお前はそんなに弱いのだ?』
振り返ってみると、今度は空から降ってくる偉そうな声の主のハイソックスの足元で幼い自分は泣きじゃくっていた。
『だってぇ』
『しょうがないヤツだな。よし、これからは私が守ってやる』
『ほんと?クラン』
『誰かにいじめられたら、次は私に言え』
『ありがとう!』
クランはミシェルをひょいとすくい上げると肩に乗せ、笑顔を作った。
小さな記憶のかけらがふわりと舞い上がり、暗黒の中でキラキラと乱反射した。次々と色々な点がミシェルの中で繋がり始める。
姉はいつの間にか大人びて、きりりとした軍人の制服を身にまとったまま、生気のない顔で倒れていた。その日に感じた大きな罪悪感と後悔を忘れていないことをミシェルは思い出した。
「だから自分はもう失いたくなかったんだ」
人なんて簡単に死んでしまう、そんな絶望感にミシェルは感情を無くしていた。
『ばっかもーんっ!お前と言うヤツはっ!!』
また振り返ると、小さなクランがプリプリと怒っていた。
『いちいち言わんとわからないのか!?私は死なない!』
ふんぞり返って小さな胸を張るクランにミシェルはぷっと吹き出した。
『はいはい、巨乳ちゃんだねー』
『なっ?!』
いつものミシェルの軽口にクランの頬がみるみる赤く染まっていった。
『しっ失礼にもほどがあるっ!!今日と言う今日は勘弁ならんっ、成敗してくれる!!』
『おっとー、逃げろー』
待てーっと短い腕を振り回して追いかけてくるクランにミシェルは涙が出るほど笑っていた。
「でもクランは本当にいつもいてくれた」
そうだ、とミシェルは改めて確認した。それが自分は心地よかったんだ。自分は彼女を大切に思っている。大切すぎて手が出せないほどに。大切すぎて失いたくないほどに。愛のない情事にまみれた自分が恋愛感情を持つなんて、それ自体が彼女を汚す行為のような気すらした。そして何より、それを認めた後に失うことが怖かった。
それでもあの銃声と爆音が乱れる中、巨大化カプセルの中から泣きそうな顔をして致命傷を受けた自分を見るクランに、ミシェルは本当の気持ちをつぶやいた。最後だから、本当の気持ちを。彼女に自分を失うという思いをさせてしまうことは不本意だったが、彼女の想いは自分に届いていること、そしてまた、自分も彼女を想っている事を伝えることで、少しでも喪失感を軽減できるなら。
しかし、自分は戻ってきた。失っていた記憶もこれで大方取り戻したのだ。何より、記憶喪失の間に感じたあの純粋な愛しさは今までのミシェルの負い目を払拭し、これからに希望を抱かせるのに十分だった。
ミシェルは決めた。明日目が覚めて、クランに会ったらすべてを伝えよう。そして全身全霊で彼女を愛そう。
「そうだ。だから、クラン・・・・」
宇宙空間に吸い出されたときと同じような浮遊感に漂いながら、ミシェルは再び目を閉じた。
「ミシェル、起きてるか」
クランはいつものように朝の光が柔らかくなり始めた頃に病室を訪れcた。ミシェルはその時間にはだいたい起きているのだが、今日はまだ眠っているようだった。その安らかな寝顔に少女のようにくすっと笑うと、クランは中庭を臨む窓のブラインドを開けた。中庭の花壇には新緑が目立ち始め、鼻歌でも歌っていそうな足取りでスプリンクラーの水滴が踊っている。戦闘種族であるはずのゼントラーディの自分がようやく訪れた安らかな時間にこんなに安堵しているとは。少しまぶしいくらいの光にミシェルが起きてしまうのではないかと心配したクランは、彼の顔が陰になるように窓際に立った。
ミシェルが救出されてからもうそろそろ一ヶ月が経とうとしていたが、一向に彼の記憶が戻る気配はなかった。新しいミシェルはとても優しいうえに素直で一途で、きっと彼はクランを幸せにしてくれるだろう。それはある意味、彼女の願望だったのだ。それなのにどうしようもなくミシェルを求めている自分にクランは気づいていた。クランは影になっているミシェルの寝顔をもう一度見つめて、そのままいつものように彼から目が離せなくなったまま立ち尽くしていた。おでこから鼻筋への曲線をさえぎる睫毛のライン。学生時代より少しシャープになった頬、そして秘めていた恋心を伝えたあと、一度だけ触れた、ミシェルの唇。同じサイズになった今、自分は背伸びをしなくてもその唇に届くことができる。
(記憶が戻ったら、自分がどんなに心配して、どんなに悲しくて、どんなに恋しかったのか思い知らせてやる)
そうしたら、きっとミシェルはまた減らず口をきいて自分をからかった後、優しい目で悪かった、と言うのだろう。そして、自分はまた彼を許してしまうのだろう。ゆずりようのない感情を確認したクランはミシェルを叩き起すことにした。
「こらーっ、ミシェル、起きろ!何時だと思ってるんだ!」
まるで昔のような言い方で第一声を浴びせた後、薄手の掛布をガバッと引き剥がした。
「!?みっ」
目に飛び込んできた想定外の真紅のいびつな円にクランは目を疑った。掛布の下のミシェルのガウンには、大きく血がにじんでいる。全身の神経が一度強い力で引っ張られたような衝撃を受けた後、まるで動く気配のないミシェルの身体にそっと触れると、ゾクリと爬虫類のような冷たい体温が伝わった。
「ミシェル!!」
パニックを起こしそうになる自分をどうにか落ち着けて、クランは震える手でエマージェンシーのボタンを押した。
『どうしました?』
「はっ早く、ドクターを!ミシェルが、ミシェルが出血をしたまま意識を失っている!!」
そのあとは何がどう起こったのか、クランはよく覚えていない。気がついたらミシェルはメディカルスーツの大群に囲まれていて、自分はネネと寄り添うように病室の外のベンチに座ったまま、力いっぱい彼女の手を握っていた。
「お姉さま、きっと大丈夫ですわ」
心配そうにネネが覗き込むので、クランはああ、とだけ答えた。
(神様、どうか)
宗教と言う概念が自分にあったのかどうかわからないが、今は祈らずに入られない。クランはぎゅうっと瞳を閉じた。
(どうか、二度までも私からミシェルを奪わないでください)
ようやく求めていたものが手に入ったと思っていたのに。
どれくらい時間が経ったのか、いつの間にかメディカルスーツの団体は姿を消し、ドクターは簡潔にクランに面会を、と伝えた。ついてこようとするネネを無言で止めると、クランは少しだけ微笑んだ。彼女をこれ以上心配させたくなかったし、こんな場面は軍人なら経験済みのことなのだ。
さっきまでの喧騒が嘘のように静かでひんやりとした病室に、一ヶ月前に回収されたときと同じように安らかな顔のミシェルは横たわっていた。
(・・・・一度失っているのだ。同じことだ。)
彼がいなくなった日と同じ日々が戻ってくるだけのことだ。そうクランは自分に言い聞かせようとした。それなのに平静を装おうとすればするほど止め処もなく涙が頬を伝った。
「ミ、シェル・・・ミシェル、ミシェル!!」
押さえられず彼の名前を声に出してクランはミシェルの上に崩れ落ちた。取り替えられた真っ白なガウンを力いっぱい握って手繰り寄せ、頬をミシェルの胸に押し付けるようにして声を上げて泣いた。その拍子にミシェルの胸に置いてあったエマージェンシー用のボタンに額をしたたかにぶつけてしまったが、それどころではなかった。
「ミシェルーッ!!」
「・・・い、いたたた・・・」
かすれるようなその声が耳に入って、クランはミシェルの腹筋が小刻みに震えていることに気がついた。
「ミッミシェルッ!?」
「あいたたたた・・・・すごい頭突きだったぜ・・・息が止まるかと・・・」
「ミシェル!!!」
ミシェルが生きているのを確認すると、横たわったままの彼にクランは飛びついた。
「まっ、まて・・・く、苦しい・・・」
「なぜ生きているのだ!また死んだかと思ったぞ!」
「いや、傷口が開いたらしくて出血多量で・・・・それにしても、クラン、お前、おでこは大丈夫か?」
はっと気がついて自分のおでこに触れると、クランの手にぽっこりとしたたんこぶが触れた。
「は、ははは、やっぱり遺伝子からして不器用なんだな」
その瞬間、クランは理解した。目の前にいるのはクランの知る、ミシェルだったのだ。
「ミシェル!!!」
「いたっ、いたたたた、クラン・・・くるし・・・」
そんなかすれ声の抗議などまったくクランの耳に届いていないことを理解したミシェルは、自分の首にかじりついているクランの細い腰に腕を回して強く抱きしめた。もう触れることなどないと思っていた愛しい人。そして瞳を閉じると彼女の耳に最初に言うべき言葉を囁いた。
「・・・ただいま」
ここが自分のいる場所、そして帰る場所なのだ。するとそれに答えるようにクランの吐息がお帰りなさい、とミシェルの耳をくすぐった。そのあまりにも優しい振動に、不覚にもうっすらと涙が浮かんでしまったが、ミシェルはそれを上手に隠した。
「ねぇクラン・・・ドアに鍵かけようか」
「・・・・ばか」
最後まで読んでくださってありがとうございました!ミハクラ最高!
やっぱミシェルはエロくなきゃ\(^O^)/に賛成の方、クリックどうぞ!
次はアルシェリも考えてます。もちろんカオス桃太郎の続きもやらにゃーいけません(´ω`) なので、また来てね\(^O^)/
この話のおまけ書いちゃいましたw
ちょっとツンデレな優男のほうがミハエルらしいですし。
初期の科学ネタ投入に中盤の催促ありがとうございました!最後も「不器用な遺伝子」というフレーズが光るようにがんばりました。
どの作品も思いきり笑わせてくれたり時にほのぼのと癒やしてくれたり…しかし、このミハクラは反則でしょうって位泣かせてもらいました。素敵すぎです。
劇場版でもこうゆう感じに幸せになってもらいたいです。
これからも頑張って素敵な作品をよろしくお願いします!^^
そのコメントに私のほうが泣きそうです!睡眠削って書いてるかいがありましたー(TдT)喜んでいただけてよかったです!劇場版は私も同時上映でミハクラやって欲しいくらいですwいくつか自分で書いたせいかも知れないんですけど感情移入しまくりでやばいくらいミハクラ(*´艸`*)
コメントありがとうございました!これからもがんばって書いていくのでよろしくお願いいたします(゜∀゜)
ハッピーエンドで2人が本当に報われてよかったです!
小さい頃の2人も大好きなので回想部分もたまりませんでした。
素敵なお話をありがとうございました。
遅くなりましたがgooブログへのコメント、ありがとうございました。
いつも来てくださってありがとうございます!楽しんでいただけてよかった(≧∀≦)今後もミハクラに限らず、色々とあげていこうと思ってるのでよろしくお願いします(´∀`)
名前にリンクされてたミハクラサイト拝見させていただきました(゜∀゜)デフォルメミハクラがかわいい(≧∀≦)
やっぱミハクラはいいですね♪
素敵な小説をありがとうございましたm(__)m
読めてよかったです!!
な、なんというオズマ・リーw
はやく次の話来ないかと巡回していた甲斐がありました(笑)
次回、アルシェリですか?@@
楽しみにさせて頂きます ★ミ
>相良さん
コメントありがとうございます!ミハクラいいですよね♥ また機会があったら書きますのでまたいらしてくださいね(゜∀゜)!
>通りすがりさん
再びコメントありがとうございます!やっぱフラグブレイクがフロンティアではないかとwww アルシェリはアルト奴隷話にしようと思ってますが、どうなることかw またお待ちしてまーす\(^O^)/
ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm2230144
1:25あたりから聴いてみてくださいよw