さて、この前なにかとお騒がせな浪速帝国大学でこれまた
お騒がせな事件があった。
医学部の学部生である、K沢某という人物がIF=8の著名
誌ネイチャーメディスンにファーストオーサーとして書いた論
文が実はペテンだったというお話である。
(写真は浪速違いのJR難波駅行きの103系)

肥満を制御するたんぱく質「PTEN」をコードしてる遺伝子
をノックアウトしたマウスは、飯を食っても太らない、とまぁそ
ういう話だったのだが。
まず、医学学生K沢君について考えてみる。
多少、理系の大学の雰囲気になじんだ人間であれば自明な
ことだが、学部生がネイチャーメディスンレベルの学術誌に、
論文をファーストオーサーで書くのは、かなりすごいことである。
そもそも、医学部というもの、学部の6年の期間は試験・実験
のすし詰めで、勉強やってかつ基礎系の実験までやって更に
論文を書くだけでもすごいことである。普通はそこまでやるガッツ
はない。
なので、彼がこれを発表した時点で、学部を卒業したら、それ
だけで、まともな研究所への就職は間違いなしといわれていた
らしい。
しかも、彼はマルチな才能を発揮しており、大学3年にして、
すでに数冊の著書がある。
今となっては空々しく響くコメントが痛々しい他、何分にも写真
写りが悪いと来ている。掲載しつづけるのは結構だが、写真位
張り替えるべきではないかと思うのは私だけだろうか。
脱線してしまったが、まぁ、こんな時代の寵児のような青年がし
でかした捏造だけに私のような人間の耳目を集めてしまうわけだ。
次に、インパクトファクターであるが、これは、論文を掲載する雑
誌の格をあらわす数値で、 このネイチャーメディスンのIFは「8」。普通の雑誌だと「2」とかその辺らしいから、相当高い。
だ、もんで次の彼の論文には13人の大人が「コレスポンディング
オーサー」としてぶら下がっている。
科学論文の世界では、実際に論文を執筆した人が「ファースト」で
それ以外に実験に協力したり、指導した人物が「コレスポンディング
オーサー」として名を連ねる。13人も名前が連なるだけに、この論文
への期待が大きかった事が伺える。
最後の著者「ラスト」が所謂師匠にあたる人で、今回の場合は、件
の研究室の下村教授ということになる。
以下、参考として筆者の一覧を掲げる。
Nobuyasu Komazawa1, Morihiro Matsuda2, Gen Kondoh1, Wataru Mizunoya3, Masanori Iwaki2, Toshiyuki Takagi2, Yasuyuki Sumikawa4, Kazuo Inoue3, Akira Suzuki5, Tak Wah Mak6, Toru Nakano7, Tohru Fushiki3, Junji Takeda1, 8 & Iichiro Shimomura2, 9, 10
1 Department of Social and Environmental Medicine, Graduate School of Frontier Bioscience, Osaka University, 2-2 Yamadaoka, Suita, Osaka 565-0871.
2 Department of Medicine and Pathophysiology, Graduate School of Frontier Bioscience, Osaka University, 2-2 Yamadaoka, Suita, Osaka 565-0871.
3 Laboratory of Nutrition Chemistry, Division of Food Science and Biotechnology, Graduate School of Agriculture, Kyoto University, Kitashirakawa, Sakyo-ku, Kyoto, 606-8502.
4 Department of Dermatology, Osaka University, 2-2 Yamadaoka, Suita, Osaka 565-0871.
5 Department of Biochemistry, Akita University, 1-1 Hondou, Akita, Akita, 010-8543, Japan.
6 Advanced Medical Discovery Institute, University of Toronto, Toronto, Ontario M5G 2Cl, Canada.
7 Department of Pathology, Graduate School of Medicine, Osaka University, 2-2 Yamadaoka, Suita, Osaka 565-0871
8 Center for Advanced Science and Innovation, Osaka University, 2-2 Yamadaoka, Suita, Osaka 565-0871
9 Department of Internal Medicine and Molecular Science, Osaka University, 2-2 Yamadaoka, Suita, Osaka 565-0871.
10 PREST, Japan Science and Technology Agency, 4-1-8 Honcho, Kawaguchi, Saitama 332-0012, Japan.
いやぁ、死屍累々である。 そして、彼はこの論文のファーストだった。どれだけすごいことかがわかる。
まずは、問題の蛋白「PTEN」である
が、某ちゃんねるでは「ペテン」と呼ばれているが、どうやらこ
れは「ピーテン」と発音するらしい。
サンケイ新聞の用語集によると、
がん細胞の増殖を抑制する遺伝子の一つ。1997
年、米・コロンビア大などの研究チームが発見した。
PTEN遺伝子に異常が認められる前立腺がんに同
遺伝子を導入し、がん細胞増殖が抑制されたといった
研究報告がある。
と、ある。つまり、もともとペテン蛋白は癌の抑制の作用をもつ
蛋白として脚光をあびたものらしい。
癌と肥満に関係があるのだろうか。
共同通信2004/10/30配信の記事に拠ると、
【2004年10月18日】 特定の酵素を脂肪組織からなくすと、たくさん食べても体重が減ることを下村伊一郎(しもむら・いいちろう)・大阪大教授(内分泌代謝学)らがマウスの実験で突き止めた。肥満による糖尿病などの生活習慣病治療につながる可能性があるという。米医学誌ネイチャー・メディシンに18日発表した。
下村教授らはマウスが太ると脂肪組織内で増える酵素「PTEN」に着目。脂肪組織だけでPTENをなくしたマウスを作成し実験した。
このマウスは、普通のマウスと比べ食事量が約2割増えたのに、体重は25%減った。マウスの体内では、脂肪組織のエネルギーを燃やすミトコンドリアが増え、血糖量を低下させるインスリンが効きやすくなっていた。
肝臓などでPTENをなくすと発がんにつながるとの報告があり、下村教授は「治療に使うには、脂肪組織だけでPTENを抑える薬を効かせる技術が必要になる」と話している。
とあり、やはり癌の抑制因子のPTENと肥満に着目して彼らは研究をしていたらしい。
さて、彼はどこで「ペテン」をしてしまったのか。(つづく)