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面白い本が読みたくて

『愛のかたち』岸恵子



      国際的に活躍する女性の愛した人

『愛のかたち』岸恵子 文藝春秋 2017年 1500円 240頁
 
 2篇からなる作品集。

 「愛のかたち」、詩子は化粧品会社のパリにある宣伝部で働く女性で、その友人アンナは飛行訓練所の教官だ。アンナの夫は政治家で、2人の間に子どもはできなかったので、マテューという養子を育てている。しかしマテューは幼少期に引き取られているため、2人が実の親でないことをあるときまで知らなかった。

 あるとき詩子はアンナからダニエル・ブキャナンという男性を紹介された。見た目が日本人で、やはり両親は日本人とのこと。弁護士を生業にしている。

 マテューは年頃になり、自分の見た目が親と合わないことを気に病んでいたが、詩子の口から出自のことを勝手に話すわけにはいかない。

 マテューとダニエルはその生い立ちに重なる面があり、アンナは出産に関してある過去があり、アンヌとアランという2人も加わって人間関係が少々複雑で、詩子もそれらを抱えていくことになる。

 ダニエルはとある少年の弁護を買って出ている。しばらくするとダニエルの肉親にある出来事が起きて・・・。

 著者の『わりなき恋』がとても良かったので本書を手に取ったが、小説のテーマが日本在住の人ではない感じで、家族関係やアイデンティティを多文化の中で描いて見せている。ただドラマティックな面が日本で読むと非日常なため、少々作為的に見えてしまう。著者のように海外にいれば全く普通のこととして受け止められるものかもしれないのだが。

「南の島から来た男」、特派員記者の華子はパリで南の島から来た若者と出会う。一文無しだけれど、カシミヤや絹を身に着けて、どこかノーブルな雰囲気を漂わせていた。

 ひょんなことからその青年を部屋に泊めてやることに・・・。

 華子は会社から、初のドキュメンタリーを製作する許可をもらうが、取材場所はイスラエルでガザ地区など紛争地域のため万が一もあり得るが彼女はひるまなかった。

 それから仕事か私生活かどちらかを選ばなくてはならなくなるが、彼女の決断は・・・。80年代後半から90年代にかけての激動の世界史を追いかけつつ、華子のそばにいたのは彼女の母親ともう1人の存在。

 23年という歳月を生き抜いた人たちの姿が綴られている。
★★★
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