1 登庁時刻
9:00。
ただし、5分前登庁である。
よって、8:55までには登庁しなければならない。
私が8:55に登庁すると、すでに他の修習生と事務官が揃っていた!
すごく早起きなんだなあ、と私は彼らに尊敬の念を抱いた。
(まったく権力におもねるのが大好きなんだな、と軽蔑のまなざしで彼らを一瞥した、なんてことはゼッタイ、ゼーッタイ無いですから!)
2 司法修習生室へようこそ
私が名前を告げると、「では行きましょうか」と事務官が発し、我々はこれに付いていった。
そのまま牢屋にでもぶち込まれて「今日は皆さんに、ちょっと殺し合いをしてもらいまーす!」とか言われたら面白いなあ、などと思ったが(映画の見過ぎ)、連れてこられたのは、司法修習生室というけっこう広い部屋だった。
修習生の人数分の机と、その上にPCが備え付けてある。机は普通の事務机だから(客観)、結構大きい(主観)。おそらく、捜査資料を広げてもPCを使えるように配慮しているのだろう。
PCにはLANケーブルがつないであり、これで決済メモのひな形などを共用PCから取り込むらしい。
机上にはファイルが一冊置かれており、日誌の書き方から、決済メモ作成の要領など和光で配布済みのものまで、いろいろと挟んであった。
ロッカーもあるし、ポットもある。他の配属庁の修習生室(そんなものがあるかどうかも知らないが)の設備も聞いてみたいものだ。
しかも、ここは裁判所と違って、空調がよく効いている!いや、裁判所の空調が切れていただけなのかもしれない。
そして、部屋の中にはいくつか仕切り(といっても高さ1.5mくらいだから、声は通るし、上からは丸見え。)で囲われた空間があり、机を挟むようにして椅子が2つ、という構造になっていた。取調べブースというらしい。
「えーっ、こんなところで取調べするんかいな!プライバシーもへったくれもないな。」
という声を必死に呑みこんだのは、ここだけの話。
日弁連は取調べ可視化とか何とか言ってるらしいが、要するにこういうことだろ?
取調べされる側にしてみれば、相当のストレスに違いない。日弁連のセンセイ方は、自分が修習生だった頃にこういう違和感を持たなかったのだろうか?それとも、もうそんなことはとっくに忘れてしまったのだろうか。いずれにしても、取調べ可視化は、かえって被疑者の人権保護に欠ける、と私は思った。
というか、取調べ中、他の修習生は同じ部屋で作業してていいのだろうか?
まあ、その辺もおいおいわかるだろう。
いずれにしても、検察修習のすべてがこの部屋で完結するようになっている。この部屋が、特別権力関係に組み込まれた私にとってのアジールだ、そう言い聞かせてみた(ブラセボ並)。
3 課長挨拶
椅子に座って数分間、事務官の説明を聞く。それが終わって数分すると、今度はナントカ課長を名乗る人物が部屋に入ってきた。
「検察庁は…(中略)…5分前行動を厳守するように!」
最初の挨拶がこれだ。
やはりここは軍隊だ。しかも、5分前行動といえば我が帝國海軍の伝統である(海軍では、「乗船遅刻=敵前逃亡=死刑」だった(海軍刑法73条~77条)。だから、寝坊して死刑という最悪の事態を避けるため、5分前行動を徹底していたのである。)から、検察庁は海軍の系譜を引いているんだな、と一人合点を打った。
遅刻なぞしようものなら、精神注入棒で臀部に気合いを注入されるに違いない。これが「意に反する苦役」(憲法18条)じゃない、というんだから、最高裁の判断なんてあてにならんな。
4 修習開始式
修習開始式は9:40から始まる。
私たちは5分前行動なので、9:35には式場にいなければならない。
ということで、9:33くらいから移動を始める。
式場という名の会議室に入り、指定された椅子に座り、待つ。
待っていると、ぞろぞろと人が入ってきて、前の椅子に座っていく。
なるほど、この人たちは、修習でも給費され、その後もこうやって税金で食ってるのか、ふむふむ。
9:40、検事正が入場。
件の事務官が進行を務め、式が始まった。
(1)検事正挨拶
検事正というのは、地検のトップらしい。(その程度の知識すら無くても修習生はやっていける、ということを示した)
意外なことに、2分くらいで終わったので、何を話したかも記憶に残っていない。
(2)列席者から一人一言
誰がなんだかさっぱりわからなかった。
(3)修習生挨拶
代表して班長からあいさつが行われた。
私は班長じゃないので、ただ立って礼していればよい。楽ちん♪
(4)終了
15分程度で終わった。実のあることは一つもなかった。だったら15分遅らせて9:10登庁でもよかったのでは?と思ったのは、ここだけの話。
5 あいさつ回り
開始式が終わると、件の事務官とナントカ課長がやってきて、庁内の各部署に挨拶に行くことになった。
1時間くらいかけて、10か所以上回った気がする。どこがなんだかさっぱりわからないままに、とりあえず挨拶して回る。
我々は40日も居ないのだから、おそらくこの挨拶以降、一生会わない人というのもいるだろう。そんな人にまであいさつして回るのだ。こんなことに何の意味があるのか知らないが、まあ、彼らにとっては「実に意義深い」行為なのだろう。私は、どこぞの秘境を訪問して、当地の部族の珍妙な祭りに参加したような気分になった。
しかも、我々の班は、班長が面倒くさい人で、細々した事までわざわざご丁寧に班員に平等に割り振ってくれるものだから、私も一言挨拶しなければならなくなってしまった。実に面倒である。
5 指導係検事による講義
11:00ころから、指導係検事による講義が行われた。
講義というよりレクチャーに近いものだった。
一言でいうなら、「自分で悩まず相談に来てくれ」ということだろう。
(この辺のスタンスは、各検事の個性により差が出るらしく、修習生で知恵を出し合って解決しろ、という人もいるらしい。)
6 昼休み
12:00-13:00の1時間。
裁判所に比べて15分長い。
庁内に食堂のない地方修習では、この15分があるかないかで雲泥の差が出る(顕著な事実)。
7 弁解録取傍聴
さっそく、指導係検事が弁解録取を行うことになったため、傍聴。
メモ禁止。ただひたすら見るのは、なかなか眠い。
それはさておき、被疑者は、録音録画までされた上に、横にはギッシリと修習生が座っている。こんなんではさぞ落ち着かないだろう。
まあ、●●罪の被疑者になるくらいだから、この程度で落ち着かなくなるなんてこともないか。
(被疑者のプライバシーに配慮して、罪名は伏せておきました。)
共犯事例だったので、3人合わせて1時間半くらいかかった。
8 配点
刑事事件が発生すると、たいていは警察が捜査を行う。
そして、警察から検察庁に、捜査記録が送付される。
送付された記録は、次席検事が一瞥し、そこから検察官に回され、検察官が事件処理を進めていくことになる。
検察官に事件処理を命じることを配点という。
そして、検察修習では、修習生も配点を受ける。
といっても、被疑者の身柄を確保していない「在宅事件」ばかりだ。
つまり、身柄を確保する必要もないような、軽微な事件ばかり、ということだ。
私にも配点があったが、高齢者の万引き事案ばかりであった。300円とか500円とか、被害者の方には申し訳ないが、あえて語弊を恐れずに言うなら、誠にしょぼい事件である。
ただ、地方修習なので、そもそも事件処理に当たる検察官の数が少ない。その上、修習生の数も少ない。
そのため、通常は、大都市修習よりも事件配点数が多くなる。
東京修習の連中は、今頃、検察起案の練習をみっちりやっているに違いない。
そう思うと、最高裁に対して無性に腹が立ってきた(今に始まったことではない)。
9 退庁
17:00が修習生の退庁時刻である。
記録を読む以外、やることがないので、とっとと帰宅するに限る。
検察修習は激務と聞いていたが、最初のうちはそれほどでもない、ということがわかった。
9:00。
ただし、5分前登庁である。
よって、8:55までには登庁しなければならない。
私が8:55に登庁すると、すでに他の修習生と事務官が揃っていた!
すごく早起きなんだなあ、と私は彼らに尊敬の念を抱いた。
(まったく権力におもねるのが大好きなんだな、と軽蔑のまなざしで彼らを一瞥した、なんてことはゼッタイ、ゼーッタイ無いですから!)
2 司法修習生室へようこそ
私が名前を告げると、「では行きましょうか」と事務官が発し、我々はこれに付いていった。
そのまま牢屋にでもぶち込まれて「今日は皆さんに、ちょっと殺し合いをしてもらいまーす!」とか言われたら面白いなあ、などと思ったが(映画の見過ぎ)、連れてこられたのは、司法修習生室というけっこう広い部屋だった。
修習生の人数分の机と、その上にPCが備え付けてある。机は普通の事務机だから(客観)、結構大きい(主観)。おそらく、捜査資料を広げてもPCを使えるように配慮しているのだろう。
PCにはLANケーブルがつないであり、これで決済メモのひな形などを共用PCから取り込むらしい。
机上にはファイルが一冊置かれており、日誌の書き方から、決済メモ作成の要領など和光で配布済みのものまで、いろいろと挟んであった。
ロッカーもあるし、ポットもある。他の配属庁の修習生室(そんなものがあるかどうかも知らないが)の設備も聞いてみたいものだ。
しかも、ここは裁判所と違って、空調がよく効いている!いや、裁判所の空調が切れていただけなのかもしれない。
そして、部屋の中にはいくつか仕切り(といっても高さ1.5mくらいだから、声は通るし、上からは丸見え。)で囲われた空間があり、机を挟むようにして椅子が2つ、という構造になっていた。取調べブースというらしい。
「えーっ、こんなところで取調べするんかいな!プライバシーもへったくれもないな。」
という声を必死に呑みこんだのは、ここだけの話。
日弁連は取調べ可視化とか何とか言ってるらしいが、要するにこういうことだろ?
取調べされる側にしてみれば、相当のストレスに違いない。日弁連のセンセイ方は、自分が修習生だった頃にこういう違和感を持たなかったのだろうか?それとも、もうそんなことはとっくに忘れてしまったのだろうか。いずれにしても、取調べ可視化は、かえって被疑者の人権保護に欠ける、と私は思った。
というか、取調べ中、他の修習生は同じ部屋で作業してていいのだろうか?
まあ、その辺もおいおいわかるだろう。
いずれにしても、検察修習のすべてがこの部屋で完結するようになっている。この部屋が、特別権力関係に組み込まれた私にとってのアジールだ、そう言い聞かせてみた(ブラセボ並)。
3 課長挨拶
椅子に座って数分間、事務官の説明を聞く。それが終わって数分すると、今度はナントカ課長を名乗る人物が部屋に入ってきた。
「検察庁は…(中略)…5分前行動を厳守するように!」
最初の挨拶がこれだ。
やはりここは軍隊だ。しかも、5分前行動といえば我が帝國海軍の伝統である(海軍では、「乗船遅刻=敵前逃亡=死刑」だった(海軍刑法73条~77条)。だから、寝坊して死刑という最悪の事態を避けるため、5分前行動を徹底していたのである。)から、検察庁は海軍の系譜を引いているんだな、と一人合点を打った。
遅刻なぞしようものなら、精神注入棒で臀部に気合いを注入されるに違いない。これが「意に反する苦役」(憲法18条)じゃない、というんだから、最高裁の判断なんてあてにならんな。
4 修習開始式
修習開始式は9:40から始まる。
私たちは5分前行動なので、9:35には式場にいなければならない。
ということで、9:33くらいから移動を始める。
式場という名の会議室に入り、指定された椅子に座り、待つ。
待っていると、ぞろぞろと人が入ってきて、前の椅子に座っていく。
なるほど、この人たちは、修習でも給費され、その後もこうやって税金で食ってるのか、ふむふむ。
9:40、検事正が入場。
件の事務官が進行を務め、式が始まった。
(1)検事正挨拶
検事正というのは、地検のトップらしい。(その程度の知識すら無くても修習生はやっていける、ということを示した)
意外なことに、2分くらいで終わったので、何を話したかも記憶に残っていない。
(2)列席者から一人一言
誰がなんだかさっぱりわからなかった。
(3)修習生挨拶
代表して班長からあいさつが行われた。
私は班長じゃないので、ただ立って礼していればよい。楽ちん♪
(4)終了
15分程度で終わった。実のあることは一つもなかった。だったら15分遅らせて9:10登庁でもよかったのでは?と思ったのは、ここだけの話。
5 あいさつ回り
開始式が終わると、件の事務官とナントカ課長がやってきて、庁内の各部署に挨拶に行くことになった。
1時間くらいかけて、10か所以上回った気がする。どこがなんだかさっぱりわからないままに、とりあえず挨拶して回る。
我々は40日も居ないのだから、おそらくこの挨拶以降、一生会わない人というのもいるだろう。そんな人にまであいさつして回るのだ。こんなことに何の意味があるのか知らないが、まあ、彼らにとっては「実に意義深い」行為なのだろう。私は、どこぞの秘境を訪問して、当地の部族の珍妙な祭りに参加したような気分になった。
しかも、我々の班は、班長が面倒くさい人で、細々した事までわざわざご丁寧に班員に平等に割り振ってくれるものだから、私も一言挨拶しなければならなくなってしまった。実に面倒である。
5 指導係検事による講義
11:00ころから、指導係検事による講義が行われた。
講義というよりレクチャーに近いものだった。
一言でいうなら、「自分で悩まず相談に来てくれ」ということだろう。
(この辺のスタンスは、各検事の個性により差が出るらしく、修習生で知恵を出し合って解決しろ、という人もいるらしい。)
6 昼休み
12:00-13:00の1時間。
裁判所に比べて15分長い。
庁内に食堂のない地方修習では、この15分があるかないかで雲泥の差が出る(顕著な事実)。
7 弁解録取傍聴
さっそく、指導係検事が弁解録取を行うことになったため、傍聴。
メモ禁止。ただひたすら見るのは、なかなか眠い。
それはさておき、被疑者は、録音録画までされた上に、横にはギッシリと修習生が座っている。こんなんではさぞ落ち着かないだろう。
まあ、●●罪の被疑者になるくらいだから、この程度で落ち着かなくなるなんてこともないか。
(被疑者のプライバシーに配慮して、罪名は伏せておきました。)
共犯事例だったので、3人合わせて1時間半くらいかかった。
8 配点
刑事事件が発生すると、たいていは警察が捜査を行う。
そして、警察から検察庁に、捜査記録が送付される。
送付された記録は、次席検事が一瞥し、そこから検察官に回され、検察官が事件処理を進めていくことになる。
検察官に事件処理を命じることを配点という。
そして、検察修習では、修習生も配点を受ける。
といっても、被疑者の身柄を確保していない「在宅事件」ばかりだ。
つまり、身柄を確保する必要もないような、軽微な事件ばかり、ということだ。
私にも配点があったが、高齢者の万引き事案ばかりであった。300円とか500円とか、被害者の方には申し訳ないが、あえて語弊を恐れずに言うなら、誠にしょぼい事件である。
ただ、地方修習なので、そもそも事件処理に当たる検察官の数が少ない。その上、修習生の数も少ない。
そのため、通常は、大都市修習よりも事件配点数が多くなる。
東京修習の連中は、今頃、検察起案の練習をみっちりやっているに違いない。
そう思うと、最高裁に対して無性に腹が立ってきた(今に始まったことではない)。
9 退庁
17:00が修習生の退庁時刻である。
記録を読む以外、やることがないので、とっとと帰宅するに限る。
検察修習は激務と聞いていたが、最初のうちはそれほどでもない、ということがわかった。
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