からかもめは、近く

からかもめは、近く

と面頬を下ろしたままだ

2015-07-28 11:05:02 | 日記


 カルテンは笑って、袋を返した。
「クリクと見習いだが、人目につかないようにしてたか」スパーホークが尋ねる。
 カルテンはうなずいた。
「奥の部屋を取ってたし、若いのはずっった。面頬を下ろしたまま酒を飲もうとするやつなんて、見たことがあるか。あれは最高だったね。それと地元の娼婦《しょうふ》が二人、そばに侍《はべ》ってた。今ごろはあの若い騎士も、手ほどきを受けてることだろうな」
「それもよかろう」
「やっぱり面頬を下ろしたままでやるつもりなのかね」
「ああいう女たちは順応性が高いからな」
 カルテンは笑い声を上げた。
「とにかく事情はクリクに聞いたよ。本当に誰にも気づかれずにシミュラじゅうを嗅《か》ぎまわれると思ってるのか」
「変装って手はどう百度SEOかと考えてた」
「付け鼻も使ったほうがいいぞ。そのひしゃげた鼻じゃあ、人混みの中にいてもすぐにばれちまう」
「よくそんなことが言えるな。この鼻を折ったのはおまえだぞ」
「あれはふざけてただけじゃないか」カルテンの口調は言い訳がましかった。
「いいんだ。もう慣れた。朝になったらセフレーニアに相談してみよう。何かうまい変装の手だてを考えてくれるかもしれん」
「ここに来てるそうだな。どんな様子だ」
「同じだよ。セフレーニアは決して変わらない」
「まったくだ」カルテンは革袋からもう一口飲むと、手の甲で口許をぬぐった。「なあ、おれはセフレーニアをいつもがっかりさせてるんじゃないかと思うんだ。あれだけ一所懸命に秘儀を教えてくれたのに、おれはスティリクム語もろくにできないんだからな。
〝オゲラゲクガセク〟なんて言おうとするたびに、顎《あご》がはずれそうになるんだ」
「オケラグカセク」スパーホークが訂正する。
「まあ何だっていいさ。とにかくおれは剣一筋に生きることにして、魔法はほかのやつに任せてある」カルテンは身を乗り出した。「ところで、レンドーではまたエシャンド派が盛んになってるそうだが、本当なのか」
「危険というほどじゃない」スパーホークは肩をすくめ、寝台の上で楽なDr Max教材姿勢を取った。
「砂漠でスローガンをがなり立てながら、互いのまわりをぐるぐる回ってるだけさ。まあそんなところだと思えばだいたい間違いない。ラモーカンドでは面白い話はないのか」
 カルテンは鼻を鳴らした。
「男爵連中が私闘に熱を上げてるよ。国じゅうが復讐熱に浮かされてるんだ。蜂に刺されたのが原因で戦争が起きたんだぞ。信じられるか。蜂に刺されたある伯爵が、その蜂の巣箱を持ってた農民の領主である男爵に宣戦布告したんだ。もう十年も戦いつづけてる」
「それがラモーカンドって国さ。ほかには」


中途半端な時間が鍵

2015-07-26 03:40:16 | 日記


「決まってんじゃない、人を殺すのに」
 と、金太郎は舌を出した。
「……このヤロウ、びっくりさせやがって! どうしました部長? ハナちゃん、水、水!! 部長があわふいちゃってるよ」
「……おれ、こういう、やたら伸び伸びした容疑者、いやだよ……」
 くわえ煙草伝兵衛は、ほとほと愛想がつきたかのように、頭をかかえこんだ。氷のうを頭にあて、うらめしそうに金太郎を見ている伝兵衛をよそに、留吉は宙を見つめ目を寄せて、気力の充実を待っていた。
「……じゃ、この熊田留吉が捜査のイニシアチブをとらしていただきます。熱海の浜辺、午後四時半。その時、大山金太郎と山口アイ子はいかにしていたか、デッサンさせていただきます。あれほどの騒がしさを満していた夏の海も、ついには一組の家族連れを残すだけになる。その家族連れも、子供の手をひき、帰り支度を始める。まだ陽は落ちない。太陽が夕陽になる前の、言葉には尽くせない虚《むな》しさ。やがてその親子の姿も見えなくなる。その非情な虚しさの中に、『幸せだな』と、女はふとつぶやく。期せずしてうつむく二人。小石を拾って真昼の太陽に向かって投げる」
「石投げちゃうの? このあと、太陽に挑戦させる耳鼻喉專科醫生んじゃないの。ハナちゃん、熊田君に任せたの失敗だったかなあ」
 との伝兵衛の言葉も、気負っている留吉には聞こえなかった。
「しかしだ大山、真昼の太陽に向かって投げるなんて、しまらないだろ。小石を拾って、夕陽に向かって投げるんだ。な、だから午後四時半だなんて、犯行の時間が中途半端なんだよ。やりづらくって、しゃあねえんだよ。おれはおまえと賭けてもいいが、おまえが死刑になるとしたら、この四時半という《かぎ》になるね。こんな時に、人が殺せる神経を持ってるやつなんて、信じられないからな。人を二、三人殺すよりも、たいへんなことなんだぞ。『真夜中』とか『明け方』とか『白昼』なんて、一般的な殺人の時間帯があるだろうが。言うな、言うな。時間がそばにあったから、って言いたいんだろ」
 伝兵衛とハナ子と金太郎の反応はない。しかし留吉は上機嫌に、ウン、ウンとうなずいて、腕まくりしていた。
「まあ心配するな。おれに任せとけ。この留吉さまに。若者は人を殺すのに、時間は選ばないってこと、立証してやっから。でだ、石投げるだろ、水面を伝って輪が二つ、三つ……。おまえ肩が強そ安利傳銷うじゃないか。強いだろうって聞いてるんだよ」
 金太郎も心配そうに、とりあえずうなずくだけで、あとは時折、伝兵衛とハナ子にすがるようなまなざしを送っていた。
「よおし、強い。な、そこでだ、何キョロキョロしてんだ、おれを信用しろ」
「あの、ぼくは工員でアイちゃんは女工でして、あんまり跳んだりはねたりできませんから」
「何かいちいちトゲのある言い方してくれるじゃねえか。それでさ、アイ子はたとえば、『わっ、すごいな』って、拍手するまではいかなくても、かなり喜ぶよな。おまえも自慢気にふり向くだろ。目と目が合う。『走ろうか!』っておまえは言う。『ウン』とうなずくアイ子、二人は浜辺を走る」
 伝兵衛は口をあんぐりとあけてあきれかえっていたが、留吉に向かって、うんざりしたように語りかけた。
「きみ、波の間からドーッとタイトルが出てくるんじゃないのか? 『青春野郎』とか『飛び出せ青春』とか。それだったら殺人事件は起こっちゃいないよ。次の日二人して、することもないから選挙でも見つけて投票にでも行ってるよ。これで、どうして殺人事件が起こるんだよ」


手の体験記はまった

2015-07-24 15:56:53 | 日記

私なんか、まじめでやさしいもんだから、二十五で若手で、三十二になったいまも若手で、きっと四十すぎまで若手をやらされるでしょう。親なんて、若いモンを心配したふりをして活力をたくわえていくのです。
 昔とちがって、いまは民主主義の時代です。四度や五度のやりなおしはきくもんです。
第一私がそうだった
 いよいよ受験生諸君は、今まで見たくなかった知りたくなかった自分の実力をはっきり認識しなければならない辛時期だと思う。だれしも自分の力を知るというのは屈辱的なことであり、できれば、知らずにいつまでも夢を見ていたいものである。

 私にしても、能力的にも体力的にも自分の力の限界を知るのが怖さに、いつもギリギリまであがいている。女房には常に「天才だ、不死身だ」とほめ続けてくれと頼み、書いたもの步行はすべてに「すごい〓」と言ってくれと言い続けている。ことに芝居の幕のあく前一週間の不安はひどく、たとえ「へ」をこいたときでも「すごい〓」と言われたいくらいなのだ。そのくせ初日があいて好評の時には「ああ、俺は天才じゃ」とわめき散らし、うまくいかない時は、「やっぱり俺はにせものだった」と節操なく揺れ動いている。
 おち込んでいるときはややもすると過去に評判のよかった芝居の批評や切り抜きを読み返してみたり、ビデオを映したり、蝶《ちよう》よ花よともてはやされた時のことを思い出してしまう。しかし、ひとたび立ち直ると「こんなもんふり返ってすがってちゃ人間としてダメになる」とビデオも切り抜きもすべて焼き捨て、あとになって資料がなんにも残ってなくて困っている。
 昔、血気盛んな頃、「赤いベレー帽をあなたに」という芝居をやったことがあった。これは、私の作品の中で最高のものだとの根強い評価があって、今でも時折「ぜひ再演を」との手紙をもらうことがある。
 ところが芝居の楽日に役者を全員集めてクビにし、劇団を解散し、台本を全部集めて燃やしてしまった。今台本は一冊も残っておらず〓“幻の処女作〓”と惜しまれている。若さゆえの自己嫌《けん》悪《お》とはいえ後悔はない。いまだにこれほど揺れ動いているのだから受験期は日々「天才だ」「能なしだ」とひどいものだった。
 私も螢《けい》雪《せつ》時代も高三コースもあらゆる受験雑誌を毎月とっていた。本が届くと「合格体験記」ばかりをむさぼり読み、「男はやはり、一年ぐらい浪人しても長い人生においては貴重な人生経験となる」とか、「東大だけが大学といった狭い考えを捨て、大学を人間形成の場と考えることだ」などの文章を見つけては一人得心していた。
そして親には、「いやぁ、やっぱり一年ぐらいは人間形成のために予備校へ行った方がいいんだって」とおおらかに言ってたら、ほんとに浪人してしまった。(これは、私が小学校の頃からの知米糠油能テストが異常によく出来て、〓“オレは頭がいいんだ〓”とのうぬぼれで勉強しなかったのが最大の原因なのだが)
 私の体験からはっきり言わせてもらうが、この手の体験記はまったくの嘘《うそ》である。まず大学は、有名な一流大学ほどいいのだし、なにがどうでも東大が一番なのだ。

 げんに私の劇団では、劇団員を募集すると三千人からの応募があるので一人一人会っていられないため、履歴書をみてバカな大学の奴から落としていっている。芝居は頭が悪くてはやっていけない。実際私の劇団では東大落ちて早稲田の政経へ入った者、京大落ちて早稲田の文学部へ入った者、その他慶応、早稲田の教育学部と、皆現役合格のものばかりである。私のところのようにたかだか七、八人の小さな組織でさえこうなのだから、三井や三菱などの大きくて立派な仕事をしている会社が、本気でしちめんどくさい面接試験なんかするはずがない。


赤ん坊の名前つけてもらおうと

2015-07-24 11:57:12 | 日記

銀ちゃんと違っ!「また銀ちゃんなの!「カヨさん、聞いて下さいよ。あたしら銀ちゃんと違って大部屋なんですから、でも、言われたとおりやることはやってますよ。銀ちゃんに、男なら風呂付きの部屋ぐらい借りてやれって言われて、風呂付き借りましたよ。こんな狭い台所の隅にあるちっぽけな風呂で、申し訳ないとは思ってますよ。でも、俺にとっちゃ、せいいっぱいなんですよ。カヨさんならわかってくれると思いますが、俺らぶん殴られて五千円、蹴っ飛ばされて八千円ですからね。車は買えませんよ「そういうつもりで、小夏さん言ったんじゃないんじゃないの「銀ちゃんは、会えば『食うもん食わせてるか。栄養つけさせてるか』って言うんです。つけさせてますよ。せいいっぱいのことやってるつもりなんですよ、少ない稼ぎの中で。落っこちたり飛び込んだりもう体ボロボロ詩琳なんだよ。俺の身にもなってくれなきゃ「ヤスさん、しつこいとこなんか、銀ちゃんに似てきたね「カヨさん、そりゃ似ますよ。小夏よりつき合い長いんだから、大切な人なんだから。俺は大好きなんだから銀ちゃんのこと。万が一流産させて、銀ちゃんを悲しませるようなことはしたくないんですよ「あたしたちもう帰らしてもらうよ「ちょっと待ってよ。今日はトメさんに聞いときたいことがあるんだから ヤスは、すごい形相でトメさんをにらみつけ、コップにウイスキーをドボドボついで一気に飲み干した「あんたたち、銀ちゃんに俺のこと告げ口してんじゃないの。最近おかしいんだよ、銀ちゃん、俺を見ると避けるんだよ。思ってんのに会ってくれないんだよ「俺はなにも言わないよ「しかしどうして俺だけ、バッタリ銀ちゃんから仕事こなくなったの「…………「たしかに俺は出産詩琳費用稼ぎ出すために、銀ちゃんの仕事だけ待つってわけにいかなくなったけど、ちゃんと『階段落ち』があるんだからさ「え?『階段落ち』は中止になったんじゃないの とわたしが言うと「バカなこと言わないでくれよ。中止になるわけないじゃないか。『階段落ち』がなかったら、橘が主役に見えちゃうぜ。それでいいのか、トメさん。俺たちがここまで来れたのは、銀ちゃんのおかげだぜ。レコードの話だって立ち消えになったし、『突撃』だって、正月のカレンダーだって、みんな橘にさらわれたっていうじゃねえか!! 大事な銀ちゃんが、橘の脇につかされてたまるかよ「万が一のことになったら、あたしはどうなるの「心配するな、手は打ってあるよ。そうそうカヨさん、『階段落ち』でうまく死んだら、トメさん名義で入ってる保険金三百万円そちらにいくからね。そのかわり、香典はふんぱつしてよね、小夏の出産費用になるんだから「なによ、三百万って!「『階段落ち』やる日のセットの前には、香典を入れる箱を用意しといて、香典をもらうようになってんだよ。だから、親しい人には、その香典のお返しに生命保険に入っておくってのがしきたりになってんだよ トメさんたちが帰ったあとも手帳を取り出し、保険金が入る人達の名前と金額をこれみよがしに読み上げた「銀ちゃんとおまえの名義で一千万円ずつな。どうだまいったか「はっきり言うけど、あたしは、もう銀ちゃんに、これっぽっちも未練はないの「会ってんだろ、ちょくちょくおまえら「会ってないよ「ま、いいよ。だけどやっぱり、銀ちゃんに仲人やってもらいたかったよなあ「バカなこと言わないでよ「どうしてバカなことなんだ、おまえだって、銀ちゃんとまんざらの仲じゃなかったのに。いいんだよ、俺はお飾りで。いつだって、俺は銀ちゃんが来さえすれば部屋に二人っきりにして、外で週刊誌の記詩琳者見張っててやるのに「いいかげんにしてよ「それに、なんで銀ちゃん、新婚旅行についてこなかったんだろうね「常識で考えて来るわけないでしょう「常識なんて言葉、おまえから聞くとは思わなかったよ「今さらそんなこと言われたって、もうあたしはあんたの女房なんだから「おまえが言ったのか、ついて来ないでって「言ってないわよ「おまえが、なんか銀ちゃんに嫌われるようなことしたんじゃないか「嫌われたってもういいわよ「前は電話があるとホイホイ出てったじゃないか。会ってなにしてたんだ。会っておまえら、なに話してたんだ「昔の話でしょ「聞きたいんだよ「お茶飲んでただけだよ「まさか ヤスの卑屈な、いやらしい笑いに


不精ひげいっぱいの顔に

2015-07-22 15:29:47 | 日記

スタジオの中は、うだるような暑さだ。頭の上から十キロワットの照明が三十台もギラつき、天窓も通気孔もなく、鉄の扉を閉めると空気は淀《よど》んだまま流れようもない。
 衣裳はぐっしょり汗を吸いこみ、体が倍くらいに重くなっていた。羽織の裾《すそ》から汗がポタポタしたたり落ちて、足元のコンクリートに黒い水たまりをつくっている。
 俺たち大部屋は、スタッフの打ち合わせの間、スターさんのように外に息ぬきにでることもできず、暗がりにひとかたまりになって、じっと待っている。
「土方歳三《ひじかたとしぞう》、準備OKですね」
「よろしくおねがいします」
 浅黄色のだんだら模様の羽織に、額には〝誠〟の鉢巻《はちま》きを締めた銀ちゃんは、初の主演作品ということもあって、神妙な顔つきであちこちに深々と頭を下げた。銀ちゃんのはじめての主演作品だ。俺たちもがんばんなきゃあ。
「大部屋さんたち、用意OKですね」
「OKです!!」
 俺たちだってプロだ、映るか映らないかの斬《き》られ役でも、スターさんなみに顔だけは決して汗をかきはしない。
「じゃ、本番行こうか」
 おっとりした大道寺《だいどうじ》監督の声をうけて、助監の昭ちゃんが、
「カメラ回りました!」
 ヒステリックに叫ぶ。
 反射的に俺たちは目と左腕をさわる。っていうのは、眼鏡と腕時計なんだ。これも習糖尿性で、昔、腕時計したまんま刀ぬいて立ち回りやった大部屋さんがいて、編集の段階で大騒動になり、その大部屋さんは首つったって話があるんだ。わかるよ。撮り直しってことになって、場面《シーン》しだいじゃ四、五十人からのスタッフと日だて何十万ってスターさんたちのスケジュール調整のこと考えたら、首くくりたくもなるよ。それに、それだけの人を集めても、空模様とかで、一分のカット撮るのに一日じゃすまないってことだってあるんだからね。
 居酒屋ののれんが割れる。坂本龍馬《さかもとりようま》役の橘《たちばな》さんがひょっこり顔を出す。
 さすがスターさんだ。照明は変わらなくても、場が一段と明るくなったようだ。
「いたいた、さがしたぞ、総司《そうじ》! あんまりつれなくするもんじゃないぞ。ワシの心はデリケートにできとんじゃ」
 上半身裸で、煮しめたような色の、ぞろっとした袴《はかま》をつけた橘さんが、狂ったみたいな笑いを浮かべる。
「なっ、悪いこ燕麥米介紹とは言わん、一発やらせろ、肺病持ち、やらせろ、わしゃ、がまんできんがな」
「もう、僕のあとを追うのはやめて下さい」
 総司役のジミー雪村は、ふところに手を入れられ、真っ赤になっている。
「ほう、赤うなって、ウブじゃのう」
 セットの板べいの陰でスタンバイしていた俺も背筋がゾクッとした。橘さんの声は、一昨年《おととし》の映画の賞を総ざらいした「寝盗られ宗介」で、将軍の奥方を寝盗る歌舞伎役者を演った時を彷彿とさせた。色気というか狂気というか……。普段はごく普通の人で、胸ポケットに一粒種の男の子と家族でドライブ行ったときの写真を入れていて、会う人ごとに見せるんだ。
 ジミーも、衆道の沖田という設定で役づくりをしてきたんだろう、龍馬に二の腕をつかまれて、必死に振りほどこうとしながら手足バタバタさせ、目に涙をため歯をくいしばっている。
「坂本さん、あなた衆道の気があるんですか」
「おお、わしぐらいになったら何でもあるんじゃ」