京都市西京区 「十輪寺・なりひら桜」 (古都探訪 99)

京都市の西の郊外、小塩山の麓にひろがる大原野の一角に佇む十輪寺は、平安時代初期に創建された天台宗の古刹。

平安時代の歌人として名高い在原 業平(ありわら の なりひら)が、晩年過ごした地として伝わり、別名「なりひら寺」とも呼ばれる。

その静かな境内にある1本の枝垂桜が、3月下旬、満開を迎えた。

寺同様「なりひら桜」とも称される桜は、2014年・春のキャンペーン「そうだ京都、行こう」の舞台にも選ばれた、知る人ぞ知る隠れた名木でもある。

高廊下の屋根に被さる枝を眺めつつ進むと本堂に至る。 ゆるやかな曲線を描く本堂の屋根は、鳳輦形(ほうれんがた)と呼ばれ、御神輿をモチーフにしたもの。

本堂に上がり回廊を渡り「三方普感の庭」から、なりひら桜を眺める。

高廊下、業平御殿、茶室に囲まれたこの小さな庭は、それぞれから立・座・寝と3通りの見方で、趣の違いを楽しめることからその名が付いた。

たとえ1本の桜であっても見場により、これだけ変化に富んだ趣のある表情を魅せる木は、そうそうお目にかかれない。

最後に裏山にのぼり庭を見下ろせば、それまでとは違うダイナミックな情景に暫し見惚れる。

人もまばらでゆっくりと桜を愛でることができるのも魅力の一つ。 是非!
photo by OLYMPUS OM-D EM-5Ⅱ