水政策チェック(WAPOC)ブログ

世界の水情報をお伝えします。

三井物産がメキシコで水処理事業を落札

2007年05月26日 | 民営化/私営化
【NIKKEI NET】三井物産、メキシコで水処理事業
 三井物産はメキシコで水処理事業を始める。メキシコで浄水供給と下水処理の事業権を入札方式でそれぞれ獲得した。総事業費は合わせて3億ドル(約360億円)で、三井物産などが現地の水道局と20年間の契約を結んで事業運営にあたる。新興・途上国の人口増や工業化に伴い、世界各地で水不足が深刻な問題になっている。同社は安定した収益が見込めるとみて、今後、南米や豪州などでも水処理事業を手がけたい考えだ。(以下略)

三井物産のほかにスペインやメキシコのゼネコンなど4社の共同出資会社が事業を請負い、三井物産は主に銀行との交渉などの金融部門を担当するそう。

南足柄市で神奈川県内初めて水道を民間へ

2005年04月22日 | 民営化/私営化
水道法改正以降、日本でも水道の民間委託が進められていますが、新たに神奈川県南足柄市での包括的業務委託が実施されています。受託先は東芝。以下に報道を掲載します。
元記事全文はこちらから

 南足柄市では、これまで民間業者に個別発注していた水道施設の維持管理業務を、一社にまとめて委託する「包括的業務委託」を平成17年度より実施した。今年度は「株式会社・東芝」(本社・東京都港区、岡村正社長)が受託。水道事業体が民間と包括的業務委託の契約を交わすのは県内で同市が始めてのケースになる。
 契約金額は6千405万円(税込)。主な委託業務は、市内の水道関連施設55ヵ所の運転維持管理や巡回点検業務、水質等検査、各種保守点検、清掃、軽微な修繕業務などになる。
 同市では平成14年度から、水道施設の維持管理委託を約13社に個別発注し実施していたが、職員の専門的知識や技能習得にかかる育成経費や設備の修繕・更新費用の問題、業務の個別発注による責任範囲の不明確さなどの問題を抱えていた。今回の包括的業務委託により、民間の技術力やノウハウを活用した技術レベルの向上、管理体制の強化、前年度比6%減を見込んだコストの削減を図る。
 南足柄市水道事業管理者でもある沢市長は「今後は委託範囲の拡大や複数年の継続契約などを実施して、経営の効率化や一層の市民サービス向上を目標にしていきたい」と話している。
タウンニュースより)

今月から加古川市の水道事業が民営化

2004年12月06日 | 民営化/私営化
加古川市(兵庫県)は今月より、水道局業務のうち営業と浄水部門の一部を民間委託している。これにより、財政上経費節減(2003年度末の累積赤字は6億8000万円。また6月から水道料金を15%値上げした)、また業務の効率化などを目指している。また、市民サービスの向上として、月2回の土曜日午前中に窓口がオープンするという。(こちらの加古川市水道局HP内記事などを参照して下さい。またこちらの契約情報も参考になります。)

営業部門を委託する企業は「第一環境」(14,385,000円で請負)。水道使用・中止届けの受付と滞納料金徴収を行う。来年度からはメーター検針・収納・開閉栓などが追加される。市の営業課職員は15人削減されて7名に(6000万円程度の経費削減という)。浄水部門は「日本ヘルス工業」に中西条浄水場委託(1,995,000円で請負)。浄水場の運転管理と汚泥処理などを行う。これにより今後5年間で3200万円の効果があるとのこと。
(詳細は、神戸新聞記事を参照して下さい。)

マレーシアで水道事業の民営化分割管理

2004年10月20日 | 民営化/私営化
こちら(9/22)の記事の続報。

マレーシア政府は首都圏の水道事業民営化にあたって、複数企業に給水権を与える案を検討している。現在、対象地域では「ブンチャク・ニアガ・ホールディング」「SPLASH(シャリカット・ブングルアル・アイル・スンガイ・スランゴール)」「コンソーシアムABBAS」が営業をしているが、内1社がこの案を提案し、地理的・経済的に2~3区域に分けて、給水権を得た企業が担当をするという案。利益率が高い上水事業とそうではない給水事業を両方行うことで損益を補填する形式。政府は民間委託によって老朽化した水道管の交換に伴う支出を軽減できる。

もともと2003年に前述の「ブンチャク…」社が首都圏を請け負うことで交渉が進んでいたが膠着状態に陥っていた。というのも、民営化を行った複数の州でさまざまな問題が起こっているがため。例えば、「ブンチャク…」社はスランゴール州で水道料金を45%値上げする計画があったりした。政府は「国家水道委員会」という独立組織によって、関連規則の策定や国内の水源管理、水質・価格などの監督などを行う予定で、年末までに設立の見通し。(詳細はNNA@Yahoo!ニュースの記事を参照してください。)

正直、きちんと終えていないため、正確なところと繋がりが今ひとつ不明(ごめんなさい)。ただし、民営化を巡る政府と企業の間の問題、そして地域における住民の生活に大きな影響を与える物であるのは事実。9/22のブログにもある通り、ここには日本の国際協力銀行(JBIC)の融資計画「バハン・セランゴール導水計画」と大いに繋がりがある。つまり、皆さんの郵貯や年金などを減資として行われている援助によって起こっている問題でもあることは確実。注視したい。

JBICのアジア初の上下水道整備ファンド

2004年10月16日 | 民営化/私営化
国際協力銀行(JBIC)が、2006年にフィリピンで上下水道整備のためのファンドを設立するという。正式なプレスリリースがJBIC、また一緒に設立するアメリカ国際開発庁(USAID)から出ていないため、日経新聞記事にその内容は拠るところになるが、新しいファンドは総額100億円規模になる予定で、JBICによる円借款(=有償資金援助。要は借金)が3割で残りが民間からの調達によるもので、USAID民間からの調達の半分に信用保証を与えることになるという。ファンド設立に先だって、約20億円の協調融資をスタートするという。

このファンドは、地方自治体や上下水道事業者が上下水道整備に用いる資金を融資するもので、アメリカではこの方式が普及している。これによって、民間資金の上下水道事業への投資を促進することになる。

第3回世界水フォーラム以降の官民連携(PPP)の名の下での民間資金の投入は、水の商品化・民(私)営化をより一層推進していくことになる。ひとつのケーススタディとしてフィリピンのこの事業の問題はじっくりと監視していく必要があるだろう。

ブラジル大統領「途上国は再植民地化されている」

2004年09月24日 | 民営化/私営化
ブラジルの大統領、ルーラの国連演説は胸を打つ内容だった。それは、現在の途上国がおかれている状況を的確に示し、先進国、そしてそれに率いられる国際機関、そして何よりもアメリカに対する痛烈な批判、糾弾だった。

アナン事務総長に続いて演説したルーラ大統領は、現在の国際経済システムが「貧困国から搾取し、富裕国へと注ぎ込む」ものだとして、途上国が先進国によって再植民地化されていると話した。そこには、いわゆる「構造調整プログラム(SAPs)」と呼ばれる世銀・IMFによる押しつけの民営化もまた含まれている。

ルーラ大統領はこう語った。

国際通貨基金(IMF)に対し、インフラ整備や上下水道工事、住宅建設などブラジルの債務返済能力を高める生産的融資へ必要分信用を供与するよう要請した」(ニッケイ新聞<ブラジル>より抜粋)

現在の世界銀行・IMF、いわゆるブレトンウッズ・システムがもたらしている問題を批判している。それは、途上国がまさに求めている問題に的確に答えていないと言うことだ。昨日のブログ内容で触れたデビット・ホールの論文には上水道に関して、世界中、とりわけ途上国で起こった問題がいくつかの具体的な例を挙げながら国際機関が進める「民営化」となっているか?ということが明らかにされている例を見ても分かるだろう。公共事業の民営化という手法は、確かに現在においては「流行」かもしれないが、それは決して、「そこに住む人々」のためではない。そして「これからそこに住むだろう人々」にとっても。

世界的にも水道事業を公共事業として見事に再生させた都市、ブラジル・ポルトアレグレで開催されてきた「世界社会フォーラム」にも出席し、世界の市民とともに「オルタナティブ」を考え、議論してきたこの大統領がいるブラジルが何をするのか?ということに目が離せない。

「民営化を!」ではなく「よりよい公共部門を!」

2004年09月24日 | 民営化/私営化
こんなニュースが出た。

「政府は23日、上下水道や公共交通、公共施設の管理など国・地方自治体などが独占的に事業を行っている「官製市場」を開放し、民間の参入を進めるため、具体的な要望や規制改革の提案などを広く募集することを決めた」(共同通信<Yahoo!ニュースへのリンク>

 言うまでもなくポイントは「民間参入を進めるため」に意見・提案を募集すると言うところだ。上下水道や公共交通機関、公共施設などを一緒くたに語ってしまう恐ろしさは言うまでもないが、それ以上に、現在抱えている問題がさも「公共」であるがゆえに起こっていると言ってしまっているのにもひとしい点だ。この記事の最後はこう締めくくられている。

「要望について、内閣府規制改革・民間開放推進室が関係官庁などと調整、規制を撤廃し参入の道を開くよう促す。同推進室は「こんな公共サービスを受注したい」など幅広い要望が寄せられることを期待している」(同上)

 上下水道事業にしぼってのみだが、国際公務労連(PSI)リサーチ・ユニットのデビット・ホールの論文「水を公共の手に(Water in Public Hands)」(邦訳はこちら)を読んで頂ければ、問題は「民営化していないこと」ではないということは明確に分かる(民営化、とりわけ上下水道の民営化問題に関心がある方は是非一読頂きたい)。

日本の水道事業が多くの負債を抱えていることは、公共事業であるからではない。例えば、先日このブログでも紹介したマレーシアの例もそうだが、福岡の小石原ダムの建造のように、さまざまな政治的な思惑が絡まり、また市民の事業への積極的な参加を求める体制が整っていないという問題点があるということだ。

来月18日から翌11月17日まで提案募集をする予定だという。そこへは推進室が望む「こんな公共サービスを受注したい」という意見ではなく、もっとよりよく公共で行えるような仕組み作りへの市民の要望を届けていくことが必要だと思われる。

水道料金の値上げの裏にあるのは?

2004年09月22日 | 民営化/私営化
水情報を検索していると、南国新聞という記事でマレーシアのセランゴール州、そして首都のクアラルンプール、プトラジャヤ地区で水道料金の引き上げ(2~4%)を考えているというのを見つけた。(参照:南国新聞記事)

本記事を辿ってみると、マレーシアの新聞STARに記事を発見。確かに南国新聞記事に出ている通りであるが、この裏には水道事業の民営化の問題が隠れているように見える。この記事にあたって初めて問題を知ったので、詳しいことは何も分からないのだが、それは日本も大いに関係しているかもしれないという気がする。

ひとつは、京都などの第3回世界水フォーラム時に、FoE Japanが配布していた冊子『開発惨禍』にも書かれていた、ケウラダムの問題だ。詳しくはFoE Japanの『マレーシア:ケウラダム建設計画』のページを参照して頂きたいが、日本の国際協力銀行(JBIC)経由で出される日本のODA(円借款)、820億円超の供与計画だが、住民移転や河川生態系への影響とともに、大きな問題となっているのが、水供給システムのロスを隠して新たな導水事業を進めようとしている点だ。

そう、このケウラダムはセランゴール州への導水計画も含まれている。実際、セランゴール州での水供給システムの不具合、つまりは漏水の問題もまた上のマレーシア紙『STAR』のなかでも論じられている(漏水を防ぐことだけでは負債をカバーできない旨)。FoE Japan、また現地のNGO「SOS Selangor」によるとただでさえ、セランゴール州、そしてクアラルンプールでの水供給は東京やロンドン、シドニーをさえ上回る、世界でも1,2を争う供給量があるという。

漏水・盗水の40%は確かに異常であるが、ケラウダムを建設し、おそらく既に何らかの形で企業が水道事業に参画しているであろう(Perbadanan Urus Air Selangor Bhd (Puas)というのがそれか?ホームページはここにあるが、英語ではないので分からないのです…)。

詳細をご存じの方はご一報下さい。

追伸:"Water & Wastewater International"というサイトで、『マレーシアは民営化計画を見直すだろう』という記事を見つけたが、この記事はどう関係するのだろう??