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税金~一言コメント~ わたなべ税理士事務所

会計税務経済などについて好きなことを言ってみよう。少しは、役立つ情報になるかも? 何卒よろしくお願いいたします。

共有名義の不動産の賃貸収入について

2014-02-21 00:17:22 | 税金 申告
共有名義の不動産の賃貸収入について
質問がありましたので、関連するコメントを載せてみました。

質問
現在、会社員をしています。転勤族の為、以前居住用として購入した一戸建てを賃貸しています。
この一戸建ては、共有名義(建物=1/2 土地=1/1 借入に関しては夫1/1 妻連帯債務者)となって
 おりますが、家賃収入は、知らずに100%私(夫)の不動産所得として4年間申告していました。
このまま、100%私の所得として申告してよろしいのでしょうか?

考察 (所得税と贈与税両面からアプローチしてます)
1. 原則的には、共有名義の不動産を貸し付けている場合、共有者それぞれがその持ち分の
割合に応じて、不動産収入を受け取り、必要経費を負担すると考えられています。
     所得税についても、この考え方にしたがい、資産から生ずる収益を享受する者が誰であ
るかは、その資産の真実の権利者が誰であるかにより判断すべきであると規定されています。
(実質所得者課税=資産から生ずる収益を享受する者が誰かは、その収益の起因となる資産
の真実の権利者で判定する)
    
つまり、共有名義の不動産を貸し付けている場合の確定申告は、その不動産の権利者、す
なわち名義人のそれぞれが、その持ち分に応じて計算した収入や必要経費に基づいて行う
ことになります。
     しかし、一人あたりの年間所得が110万円(贈与税基礎控除)を超えず、贈与税の課税の
心配がない場合は、不動産の名義人のうち一人が、不動産収入を一括して受け取ることもあ
るかと思いますが、このような場合であっても、所得税については、上記の考え方に基づき、
不動産の名義人全員が確定申告をしなければなりません(上記原則的考え方)。
     
また、共有は区分所有とは異なりますので、アパートの1号室はAのもの2号室はBの
ものといように部屋ごとに分けて申告することはできません。
しばしば、共有であるのに部屋ごとに申告している方が見受けられますがこれは間違った
申告です。
     以上から、不動産に係る法定果実(家賃収入等)は名義人全員が、持ち分に応じて確定申
告をする必要があります。

2. 所有者以外の所得とできる場合があるか
     親が所有する土地を月極駐車場として利用する場合を考えてみます。
駐車場の契約者を子にした場合には、駐車場収入は子に帰属することになるのでしょうか。
   結論としては、管理人などが常駐しているような事業実態がある駐車場などでもない限り
、子の収入とすることはできません。
資産の所有者である親が申告すべきことになります。

なお、子は親所有の土地を借りて駐車場運営しているのだと述べたとしても、所得税の考
え方では
単純に子の収入にさせることはできません。
また、このケースでは土地の貸借は使用貸借なのか賃貸借なのかが本質ではありません。
子の所得と認めてもらうには、子自身がある程度の資産設備(例えば立体駐車場など)を
所有することにより資産から生ずる収益とするか、何らかの付加価値がある事業を行ってい
ることによる収益とする必要がありそうです。

   3. 上記1.2.から不動産から生じる所得をその契約者を形式的に変更することにより所有者
以外の人のものにすることはできません。
     この場合、一次的には所有者に帰属した所得を、二次的に所有者以外の人に分配してい
るものとして金額によっては贈与税の課税問題(共有持分に関する使用収益権の贈与の問題)
が生じる可能
     性もあります。

     また、不動産を賃貸借契約にて貸し付けていたとしても、それが単なる転貸借に準じたよ
うなものであれば、その実態は不動産管理に過ぎないとして、管理料相当以上の所得は賃借
人には移転しないと見られる可能性もあります。

     要するに、不動産所得を移転するためには資産の所有がポイントとなります。
 
     マンション・アパートなどであれば建物そのものを売買や贈与によって賃貸人に移転する
必要があるということです。

   4. ここで土地についてもう一考。
     この場合、土地を移転する必要はないのでしょうか?
    先に結論を書けば、建物だけの移転で問題ありません。何故なら、賃貸建物から生じる収益
は建物から生じるものですから、賃貸収入の移転だけを考えれば問題ないからです。
     ただし、移転後の土地所有者と建物所有者が異なる結果となるため、借地権の問題が生じ
ないよう親子などの個人間であれば土地は使用貸借とするのが一般的と考えられます。
  
     なお、建物所有者が土地を無償利用した場合には、理論的には地代相当の利益を得ている
     として贈与税の問題が生じるという考え方もあります。ただし、実務上は贈与税の課税は
     行われないのが実情です。


    以上を踏まえて、上記質問にお答えすると、
      所得税の申告は、共有者それぞれがその持ち分の割合に応じて、不動産収入を受け取り
      、必要経費を負担する必要があり、本来の名義人に帰属する収入や所得は贈与されたも
      のとされます。

      解りやすく言えば、受け取る財産が本来は妻が受け取るべき財産を夫が受け取ることに
      なるため贈与となる。
      また、妻が貸主、借主が第三者、財産を受け取るのが夫であれば、生活費の贈与とはな
      りませんので(通常必要と認められる、扶養義務者間での生活費や教育費の贈与は非課税
      )、贈与金額が基礎控除を超える場合は納税が必要となります。

     使用貸借については、民法593条に「使用貸借は、当事者の一方が無償で使用及び収益
     をした後に返還をすることを約して相手方からある物を受け取ることによって、その効力
     を生ずる」と記載されています。

     無償で使用貸借をすることは出来ます。
     しかし、その収益等が贈与の対象にならないとは民法、税法のどこにも記載されていない
     ようです。

      従って、夫が妻から無償で使用貸借契約を結び第三者に貸付て収益を受け取った場合な
     どは、妻は受け取れるはずであった家賃分が不動産所得となり減価償却等を差し引いた金
     額を不動産所得として申告する必要があります。
      また受け取れるはずであった相当分の金額が妻から夫への贈与となります。
     (これが、基本)


      ただし、贈与の部分に限って言えば、課税上弊害がない場合には、その適用はしなく
     て良い取扱いになっています。
        (下記 通達による)
         相続税基本通達9-10(無利子の金銭貸与等)
         夫と妻、親と子、祖父母と孫等特殊の関係がある者相互間で、無利子の金銭の
         貸与等があった場合には、それが事実上贈与であるのにかかわらず貸与の形式
         をとったものであるかどうかについて念査を要するのであるが、これらの特殊
         関係のある者間において、無償又は無利子で土地、家屋、金銭等の貸与があっ
         た場合には、法第9条に規定する利益を受けた場合に該当する
         ものとして取り扱うものとする。
          ただし、その利益を受ける金額が少額である場合又は課税上弊害がないと
         認められる場合には、強いてこの取扱いをしなくても妨げないものとする。


 結論
   では、どうすれば良いかですが、
   (例)
     奥様がほかに所得がなく、ご主人がそれなりに給与所得があるような場合、共有の
     不動産はそれぞれの共有者の不動産所得とした方が所得計算や所得税課税上有利です。

      奥様の年間の不動産収入が100万円、共有持分が1/2なので50万円、不動産所得は
      20万円以下と仮定すると、そこから基礎控除などを差引くと課税所得は0円。所得税
      は当然0円となります。
      では、ご主人の所得とした場合、配偶者控除などがあるので、奥様の共有持分を自分
      の所得とした場合には、一概に言えませんが、少なくとも課税所得が20万円程度は
      増加することになります。
      この場合、ご主人にはほかに給与所得があるので所得税の税率が10%以上となると
      仮定すれば、少なくともご主人の所得とした方が所得税は多くなります。
      ご主人の不動産所得としたときは所得税に関しては不利な状況となります。

      しかし、上記は申告の仕方は間違っていますが、所得のすべてを申告しており、本来
      の所得者ではない者の所得として申告してはいますが、納税額を不当に減少させてい
      るわけでもありません。
      むしろ、必要以上に払っていることになります。
      また、奥様は所得が20万円以下の為、給与と退職所得以外の所得が20万円以下の場合に
      該当しそうですので、申告の必要がないことを考えると、課税庁側から見れば課税上弊
      害はなさそうですから、無理な修正は要請されないのではないか?(あくまでも予想)と
      思われます。

      仮に、お尋ねされたら、事情を説明する程度になりそうです。

       しかし、納税者側から見るとその分必要以上に納税をしている可能性がありますので
       、旦那さんは、平成23年12月2日以後法定申告期限が到来する国税については、法定
       申告期限から5年間。
       それ以前に法定申告期限が到来する国税ついては、法定申告期限から1年間更正の請求
       によって税額を取り戻すことができる可能性があります。

      
      少なくとも今後の申告については、原則通りの申告をすることをお勧めします。



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