大学ニュース

某大学で職員をやってる中年おっちゃんです。少しでも若い受験生たちの役に立てばと思い綴っていきます。

中央大学の都心回帰?

2012年09月11日 | 日記
「早慶明治も戦々恐々!? 中央大学都心回帰で他私大が大打撃?」
http://topics.jp.msn.com/wadai/cyzo/article.aspx?articleid=1355073

なにやら最近突然降って湧いたように出てきましたね。
私はこういう業界に身を置いているもんで、この記事が出る少し前に「中大が都心回帰か」という情報を聞いていました。
ただ大学業界の間では、正直「本当かなあ?」という雰囲気が強かったんです。
しかしこの記事を読んだときには、申し訳ないですがさすがに苦笑いしてしまいました。

中大の都心回帰がそれほどこうした有力大学にとって脅威なのか?
うーーーーーん・・・・・・・・・・・・。
考えちゃいますねえ。

といいますのも「果たして本当にできるの?」としか思えないからです。
その理由として、まず中央大学の規模が大きすぎることがあります。
学部の学生数は約2万5千人。このうち郊外の多摩キャンパスに配置されている人文・社会科学経学部の学生は約2万人以上です。
中大の理事長の構想によると、まず看板学部の法学部と経済、商の三学部の都心回帰が優先されるだろうとありますが、中大は元々が社会科学系中心の大学ですからこの三学部の学生だけで1万5千人前後になります。
この1万5千人の規模を収容できるキャンパスを都心部に設けるとすると最低でも明大の駿河台キャンパス以上の規模が必要になります。すでに都心回帰を果たしている東洋大学や来年からそうなる青山学院のように元々一定規模のメインキャンパスを都心に持っている大学などとは異なり、中大はかつて駿河台に持っていたキャンパスはビル1棟分を除きすべて売却してしまっていますから土地も校舎もすべて一から見つけて購入するということになります。
しかし明大駿河台キャンパス規模のキャンパス構築のための新規投資となると多分1千億円くらいでは済まないでしょう。
いくら大手大学の中大とはいえそんな巨額の投資はどう考えても無理でしょう。
仮に借り入れをするにしても、せっかく30年前に購入した多摩キャンパスの返済が終わったのにそれだけ大きな借り入れをできるとはとても思えません。それに中大は数年前に多摩校舎に使われているアスベストの改修工事で150億円ほどの出費をし、そのうち3分の1は国からの補助でしたがそれでも100億円の出費でした。
それにもし仮にこの三学部を都心に移したとした場合、多摩キャンパスに残るのは文学部と小規模な総合政策学部だけになってしまい、それだけの学生数であの巨大な学食や図書館を維持するのは不可能です。多摩キャンパスは学部ごとに教室棟がありますから不使用の教室棟だらけになり、中大の最大の売りである資格実績のための「炎の塔」も無駄になってしまいます。

そう考えるともし都心回帰をするとしても、できるのはせいぜいこの三学部の学年割れによるものではないでしょうか。
つまり法、経済、商の三学部の3,4年生だけを都心のキャンパスに通えるようにするということです。
でもこれってそんなに意味があるんでしょうかねえ?
東大、慶應、明治あたりがこの学年割れ体制ですけど、中大は東大や慶應ほどブランドのある大学でもないし、これら三大学はメインキャンパスとサブキャンパスの距離がそれほど遠くありません。特に東大、明大の両キャンパス間の距離は近く便利です。
しかし多摩キャンパスは郊外といってもモノレールで通うほどのかなり不便な場所ですから都心にキャンパスを作っても両キャンパス間のつながりを持てないでしょう。
結果的に地方から出てくる学生は1,2年生と3,4年生で住居を変える必要がでてくる場合もあり、それに中大のご自慢の資格支援体制もキャンパスが分散すれば逆効果にしかならないでしょう。
資格勉強の中心である3,4年生が多摩にいなくなれば当然中大明星大駅周辺にある資格学校はお客を失い撤退します。
そうなると入学後早期から資格学習をはじめる環境が狭まりますから実績はさがる危険性があります。

それに仮にこの三学部の3,4年生だけを都心キャンパスにしたとしても、文学部や総合政策学部だけでなくこの三学部の1,2年生は多摩キャンパスに通うわけですから、千葉や埼玉などの受験生にとっては通いづらい大学であることには変わりはありません。今年まで渋谷と相模原の学年割れである青山学院も来年はいよいよ人文社会科学系全学部が4年間渋谷のキャンパスに通えるようになります。そうなると青学や立教は4年間都心キャンパス、明治は学年割れですが中大よりずっと条件の良い学年割れですから、結果的に現在のマーチの中の下位クラスの地位から這い上がることは難しいというのは誰にでもわかります。
つまりそうしたことを考えるとこの記事の内容は大学関係者にとって笑うしかない内容であるといえます。

もし中大が社会科学系三学部の3,4年生を都心に置けたとしても、それくらいではマーチの他の大学はさして気にしないでしょう。まして早慶などでは話題にも上がらないと思います。
司法試験や会計士試験もかつてほど価値のある資格ではなくなりましたしね。
それに何年もかけて多額の投資をして試験に受からなかった場合には就職はまともにできなくなり目も当てられない事態になるかもしれません。
この記事を書いた方はけっこう有名なジャーナリストなんですが、随分面白い記事を書くようになったというか、こういうものを書いてしまうと今までのご立派な実績を汚してしまうことにもなるんじゃないかなと心配したりもします。
まあこの手の記事はこの方が自分から書いたというのではなく多分中大に依頼された広告みたいなもんじゃないかなと思います。
大学業界にはこうした提灯記事の作成はよくあることです。

それにしても中大の理事長さんもあんな大層なことを言い切ってしまって責任取れるのかな?
もうかなりの御歳のようですから多分その前に辞められるんじゃないかな。