オータサンが1994~95年に在籍した日本のレコード会社であるフォーライフから発表された2枚の旧譜アルバムから、権利関係が再びクリアになった2000年代に新たに編纂されたベスト盤。両アルバムについては拙稿で既出であるため、そちらも併せて参照頂ければと思う。
出典元であるオータサンの旧譜アルバム二枚を製作したフォーライフは1975年に設立されたレコード会社で、小室等・吉田拓郎・井上陽水・泉谷しげるという日本を代表するフォークシンガー4人らが発起人となって旗揚げされ、当時の日本の音楽業界において現役のミュージシャンが自らレコード会社を設立するという前例はなかった事から大きな社会的反響を呼んだ。もちろん海外では先行して60年代後半にビートルズによるアップル設立も当然伏線としてあったことだろう。
こうした設立の経緯からも明らかなようにフォーライフはフォークから始まってJ-POPへの流れを主導したレーベルであり、90年代後半から盛り上がりを見せたウクレレ再評価の兆しを見ていち早くオータサンのCD時代における日本再デビュー契約を獲得したのが同社であった。しかしオータサンが二枚のアルバムを出して同社を離れたのち、当時レーベルを代表する看板スターであった坂本龍一や今井美樹が相次いでレーベルを離れ、新人の売り上げ不振やスタジオを備えたビル投資などが重なり経営状態が悪化、2001年に会社は解散してしまう。
この解散した旧フォーライフの原盤を引き継いだのが2002年新たに設立されたフォーライフミュージックエンタテイメントで、これによりようやくオータサンが90年代に日本で吹き込んだ貴重な旧譜アルバム二枚からの音源も正式な形で再リリースが可能になったのが2003年リリースの本盤という流れ。
したがってあやうく幻の作品となりかけた90年代の旧譜二作からの音源が正規に再発、というところに本盤の価値があり、新たな未発表音源などが収録されるなどのサプライズもなく、すべて既発曲。
日本のレコード会社におけるオータサンの音盤は、それぞれレーベル毎にアーチストとしてオータサンを日本市場に向けて売り出そうとするカラーが異なり、ハワイアンに寄せたビクター、ジャズに寄せたアルファミュージックとあるが、フォーライフ時代のAOR風サウンドには、裏方を務める90年代J-POPの仕事人たちのテイストも感じられて面白い。
1.SIMPATICO
2.WHILE MY LADY SLEEPS
3.JUST IN TIME
4.TAKE THE "A" TRAIN
5.CAROLINA
6.MALAGUENA
7.MY FUNNY VALENTINE
8.TEARS IN HEAVEN
9.SUNNY
10.SAMBA DE ORFEU
11.MOONLIGHT SERENADE
12.IN THE MOOD
13.OH,WELL
14.SWEET GEORGIA BROWN
15.BLUESETTE
16.I'M NOT THE FOOL NO MORE
17.SOPHISTICATED LADY
18.SOMETHING A LOT LIKE ME
19.AS TIME GOES BY
20.STRANGER IN PARADISE
出典アルバム
Ukulele (1994)[2,3,4,5,6,7,11,12],
Ukulele In Paradise (1995)[1,8,9,10,13,14,15,16,17,18,19,20]