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3号機

2013-03-14 17:24:36 | 脱原発依存
c. 3号機

① RCICやHPCIによる延命はどのような影響を伴ったか
3号機原子炉建屋における爆発の後、最上階から水蒸気の白煙が激しく立ち上るのが観察され、自衛隊のヘリコプターによる散水が行われるきっかけとなっている。

やはり原子炉建屋が爆発した1号機においても同様な状況であったと推測されるが、このような規模の漏えいを生じさせ、閉じ込める機能を失った原因は、効果的な原子炉の冷却が行われるまでに長時間を要したことによって、格納容器が長時間にわたって著しい高温・高圧環境にさらされたためであったと考えられる。

結局、RCICやHPCIの運転による延命は、後にこのような影響を伴う潜在性を秘めていた。

② 直流電源が生き残ったにもかかわらず、事故を回避できなかったのはなぜか
3号機の場合、直流電源盤は浸水を免れ、SR弁操作やベント操作のための空気作動弁の開操作が可能な状態が3月13日2時42分まで維持され、また、HPCIも運転可能だった。しかし、状況が複雑化し混乱した中では、この幸運を十分に生かすことはできなかった。

後日、ある国外のBWRプラント運転事業者が、本事故に臨んでどのような運転上の対応を行うことで早期に事態の収束を図ることができていたかを評価し、その趣旨を論文にして発表している[50]。その骨子は、原子炉水位の維持に拘泥せず、注水ポンプの吐出圧力を下回るまで速やかに原子炉を減圧し、その後に間髪を入れずに注水して一気に原子炉圧力容器を冠水するというものである。

直流電源の喪失を免れ、SR弁の操作が可能であった3号機にのみ、この実行による原子炉事故回避の可能性があった。しかし、発電所内外に依頼した救援もその優先順位は全電源を喪失した1、2号機よりも劣後し[51]、注水のための消防車は全台1号機の対応のために充てられた。また、他の災害援助の要請との錯綜や交通網への影響のために迅速な対応が期待できず、実行のための好機を逸した。

やがて原子炉水位が低下し、HPCIが自動起動した3月12日12時35分時点でも直流電源は維持されていたのであるが、翌日の3月13日2時42分、ついに直流電源が消耗してからは実質的に1、2号機と同じ状況に陥ったことになり、その後の原子炉の強制的な減圧操作や格納容器のベント操作はやはり困難を極めた。しかも、ようやく成功したベント操作は、確かにその後の復旧活動を前進させる上で不可欠な役割を果たしたが、その一方で、4号機原子炉建屋での爆発を誘発してしまった。

2号機

2013-03-14 17:22:17 | 脱原発依存
b. 2号機

① RCICはなぜ長時間運転できたか、長時間運転していなかったらどうなっていたか

2号機のRCICは、約70時間にわたって運転が持続した。この理由としては、直流電源の喪失によってRCICに対するあらゆる安全保護のインターロック機能が失われていたことが考えられる。

本来は、RCICポンプによる注水機能によって原子炉水位が上昇し、あらかじめ設定された上限値(L-8レベル)に達したところで自動的にRCICタービンを停止させる保護機能がある。過剰な注水によってタービンを駆動する蒸気配管に水が混入するのを避けること、SR弁に「開固着」の現象が発生することを回避するためである。しかしこの保護機能が働かず、実際に上限値を超える原子炉水位に達していたはずであるにもかかわらず、そしてRCICタービンには蒸気に混じって多量の水も流れてきていたはずであるにもかかわらずRCICは働き続け、その間、原子炉の冷却を維持し続けた。SR弁に「開固着」が起こらなかったことも幸運であった。

やがて圧力抑制室の温度が上昇し、RCICタービンの排気管の圧力が上昇していった。本来ならば、これに対してもある設定値で「排気管圧力高」による保護機能が働きRCICタービンは停止するはずであったが、直流電源の喪失によってその信号が発せられることもなくRCICは運転を続けた。

このように、総じてさまざまな困難を強いた直流電源の喪失も、2号機のRCIC運転に関しては、図らずもそれによって驚異的な長時間運転を支えた可能性がある。

ただし、そのような運転能力に確実性があったわけではなく、どこで運転が途絶えるかは全く不可知な状況であった。しかも、最終的に何によってRCICが停止したのかは定かではない。しかし、RCICの運転が約70時間にわたって持続せず、早めに停止していた場合には、2号機の原子炉事故の進展が3号機のそれと重なり、対応をより困難にしていた可能性があった。同時に、2号機からの放射性物質の放出のタイミングが早まり、現在の状況と全く異なる放射能汚染の模様を描いていた可能性もあった。

なお、直流電源の喪失とRCICの運転性に関しては、本事故後、米国においてある論議が起こっている。本来RCICの運転性は、直流電源を供給するバッテリーの枯渇とともに停止するとされている。そこで、いわゆるB.5.b 対応の一環として、その後のさらなる炉心冷却を確保するため「RCICの手動運転」が加えられた。しかし、実際にそのような「手動運転」が可能かどうかについては、NRC内にも疑念を呈するスタッフがいたとのことである。結局、2号機におけるRCICの運転実績は、バッテリーの枯渇どころか、最終的な起動操作後、間もなくして瞬時に直流電源を喪失してもその影響を受けることなく、いわんや「手動運転」のための人手を要することもなく、そのまま働き続けたことを示している。