おひとり様てるこの日記

てることいいます。50歳過ぎましたが気ままに生きてます。人生の危機感ゼロ。

リコンの時の子供の気持ち3

2020-03-02 00:42:00 | 日記
話は中学生の頃に戻る。

母が中学校に来てから、私は母を警戒して、暫く正式な校門を使わないで、校庭を横切ったところにある門を使った。部活の昼ごはんを買いに行く時は必ず友人と行った。でも母は中学校にはもう現れることはなかった。今度は違う方法で私と弟の前に現れたのだ。

ある日、祖母からAちゃんから電話があって新居に遊びに来ないかと言ってたよ、と言われた。Aちゃんは幼なじみで、同じ団地に住んでいた時は家族ぐるみで付き合いがあった。私たちより先にその団地を出て、建て売りの一軒家に引っ越していて、何度か遊びに来るよう誘われていた。しかし、両親の離婚のゴタゴタなどで、ずっと新居に遊びに行けないでいたのだ。

早速私はAちゃんに連絡をして、土日に泊まりに行くことを約束し、弟も一緒に行くことになった。家族ぐるみで付き合いがあったので、弟も誘われたことを少しも疑問に思わなかった。

Aちゃん一家は素敵な一軒家に住んでいた。ずっと団地暮らしで一軒家に憧れていた私は、ワクワクしていた。友達のママ達の中で、唯一戦後生まれで若くてオシャレだったAちゃんのお母さんはインテリアもきっと素敵に違いないと思っていた。そしてきっと素敵に飾られているリビングに通された途端、私はびっくりして立ち止まった。

趣味のいいインテリアの真ん中で母がソファに座っていたからだった。

この人は!!私たちにまた嘘をつかせるつもりなのか!母に会ってはいけないと言われているのをわかっているのになんでこんな卑怯な手を使って私たちに会おうとするのか。母に会ったことを知ったら、祖母の機嫌が悪くなる。父だって私たちに対する態度を変えるかもしれない。せっかく母がいない生活に慣れてきて、私と弟も母のことを口にしなくなって、平和になったのに。私たちはまた祖母と父に対して、母に会ったことを黙っているという嘘をつかなければいけなくなる。そうしないと祖母から嫌われる。もしこのことがバレて、私たちの意志で母とこっそり会っていると思われたらどうしてくれるんだ!!

大人だったらうまく言えたかもしれないが、まだ子供の私はしれっとソファに座っている母に怒りを爆発させるしかなかった。泣きながら「帰る!いやあんたが帰れ!弟に会うな!」と叫び始めた私に周囲の大人たちはびっくりして、私を宥め始めた。どうやら母がいたことにびっくりして泣き始めたと思ったらしい。

大人たちに宥められてなんとか泣き止んだが、その日はずっと母を無視していた。母は私のそんな態度に戸惑っていたが、嬉しそうに弟の面倒を見ていた。弟も普通に接していた。そんな母を見て、私はAちゃんの家に来たことを後悔していた。弟を連れて早く帰りたかった。

その夜は母と同じ部屋で川の字で寝るように言われたが、Aちゃんとおしゃべりをするんだ、と言い訳をしてAちゃんの部屋に寝た。

翌日はみんなで遊園地に行った。私は前の日と打って変わって、母と話を積極的にした。でも、私の中でもう決めていた。

二度と母とは会わない。

やっと訪れた平和な時間を乱す母には二度と会わない。

今思えば、母だけが悪いから離婚したわけではないことはよくわかる。父も祖母も大人として話し合いをするべきだった。特に父は気難しい祖母の言いなりだったし、母を庇うということがほとんど無かった。突然、気が合わない二人が一緒に暮らすなんて不可能だし、私たちを世話する人が必要と思うならば、学童保育があったし、いろいろ考えなきゃいけなかったと思うんだけど。

しかし、そんなことは大人になったからわかることで、子供の私にはそこまで考えは及ばないどころか想像もできない。関係ない。とにかく、自分たちが母と会っていることがバレたら、祖母の機嫌がまた悪くなり、最悪怒って家を出てしまうかもしれないし、そうしたら父も私たちに怒るかもしれないし、家の空気は悪くなるだろうし。

帰り道、家の最寄駅まで送ると言う母を拒否して、電車に弟と二人で乗った。母は私たちを抱きしめるとかそんな肌の触れ合いとかも一切なく、私たちを見送った。電車の中で弟に、家に帰ったら母に会ったことは絶対に言うなと釘を刺した。小学生低学年の弟はたぶんわからないなりに私の気持ちを察したのか、父と祖母が待つ家に帰っても、母のことはひとことも言わなかった。

Aちゃん一家はそれから何回か一緒に遊びに行こうとか、家に泊まりに来いとか誘って来たが、何かと理由をつけて断り続けた。私が高校に入学した時は、どこの高校に入ったのか教えて欲しい、という感じの手紙をAちゃんが書いて送ってきたが、返事は書かなかった。

そこからAちゃん一家からの連絡は無くなっていき、私もいつの間にかAちゃん一家のことは忘れていったのだった。




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