作者の百田氏はあまり好きではありませんが、
上巻では、
明治、大正、昭和の日本の企業経営の変遷、
太平洋戦争と日本経済(石油)の関わりが手に取るように判り、
良作だと思います。
また、下巻で、タンカーがイランに向かう隠密航海は、
まさに手に汗を握る緊張感と迫力がありますし、
高度成長期の同社の業績の向上には目を見張るものがあります。
ただ、
国岡商店の店員(社員)があまりにも優秀で滅私奉公する姿ばかりが描かれており、
現実離れした感がありますし、
店主(社長)の人徳だけでそれが成し遂げられるはずもなく、
もう少し具体的な社員教育方針などの記述が必要でしょう。
店主は作中で褒められてばかりで頑固以外の個性が伝わってきません。
もちろん偉大な経営者であることには疑いがありませんが、
重役の意見を無視して突き進む姿勢は晩年を迎えた独裁者のようにも感じます。
家族経営を重視するのは良いのですが、身内を重用するのにも違和感があります。
ともあれ、経済小説としても歴史小説としても冒険小説としても、
息つく暇もないスピーディーな展開で惹き込まれます。
モデルは、出光興産の創業者である出光佐三ですが、
当の出光興産は、会社として、この小説を全く評価していないようです。
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