まだ20代終わりのころだったと思うのですが、東京に用事があったときはすきや橋のレコード店「ハンター」を覗くようにしていました。中古レコードを売っていたからでした。このレコードケースをうしろから1枚ずつ見るのがとても好きでした。うしろから見る方が効率的だったからなのはレコードファンならご承知だと思います。そんなことを続けていたときに1枚のレコードが見つかりました。
「セブンシーズ」レーベルのメンデルスゾーンのスコットランド交響曲とリストの交響詩「レ・プレリュード(前奏曲)」がカップリングされたレコードでした。このレコードを選んだ理由は、フランツ・コンヴィチュニーの指揮だったからです。なぜか自分はこの指揮者が好きだったのです。それまでに、この指揮者とライプチッヒ・ゲバントハウス管弦楽団のコンビによるベートーヴェン交響曲全集を持っていて馴染んでいたのと、雑誌「レコード芸術」や、ジャケ裏(レコードジャケットの裏)の解説などからコンヴィチュニー像をつくりあげていたからだったのでしょう。野武士のような朴訥剛毅な音楽づくりをしている指揮者というイメージを自分はつくりあげていました。
その日はそれ1枚しか買わなかったと思いますが、帰ってレコードに針を落としました。曲の冒頭からメンデルスゾーンの憂愁に満ちた音楽が奏でられていきます。ステレオ録音のレコードですが音質は最悪でしたが、そんな中からメンデルスゾーンの最高傑作だと自分は思っているのですが、憂愁ということばにふさわしい音楽が悠然としたテンポで奏でられます。そして終楽章の特徴的なコラール風の終曲に入ります。この部分をテンポを速めながら結ぶ演奏が多いのですが、このレコードは、あくまでも悠然と奏でつつ曲を終わります。これこそスコットランド交響曲の演奏だと、自分は深く感動しつつ思いました。
この日からコンヴィチュニーのこのレコードは自分の愛聴盤の一つになりました。そしてメンデルスゾーンが自分にとって、モーツァルトやベートーヴェン、ブラームスと並ぶ作曲家になりました。
ピアノ三重奏曲第1番に出合ったのも偶然でした。ピアノ三重奏曲のことをピアノトリオと言いますが、名曲がたくさんあります。そのひとつにシューベルトの第1番があげられると思います。自分は、この曲が目当てで、スークトリオが演奏するこの曲のレコードを買いました。ところが、このレコードにはこの曲ともう1曲がカップリングされていました。これがメンデルスゾーンのピアノトリオ第1番だったのです。この曲も憂愁にいろどられた美しいメロディーに満ちた端正な曲で、冒頭チェロがメンデルズーンならではのメロディーを奏でて始まります。自分は、すぐに大好きになりました。ヨゼフ・スークのヴァイオリンの音もとても美しくいまでも愛聴盤になっています。シューベルトをメインに思っていたのに、メンデルスゾーンの方が自分にはメインになってしまったのです。
この二つの曲は短調の曲です。交響曲はイ短調、ピアノトリオはニ短調です。メンデルスゾーンの曲で最も有名であろうヴァイオリン協奏曲はホ短調でした。モーツァルトも、短調の曲にはなにか特徴的な味わいがあり、やはり大好きなのですが、メンデルスゾーンもそれに近いようなものがあると感じます。
でも、長調の曲にも大好きな曲があります。変ホ長調の弦楽八重奏曲です。第1楽章の冒頭のメロディーはとても素敵で大好きなのです。この曲にはFM放送で初めて出合ったのだと思いますが、室内楽の範疇に入る曲なのに、とても伸びやかで雄渾な曲であるのを知り、すぐにレコードを探しました。これも、スメタナ四重奏団とヤナーチェック四重奏団が共演しているレコードが東京で見つかり、輸入廉価盤の中古レコードを買い求めたことを思い出します。
なぜ、メンデルスゾーンなのかについて、自分にはうまく説明できません。ピアノ曲集「無言歌」もそうですし、さまざまな曲のメンデルスゾーンのメロディーが自分の琴線に触れてくるからなのだとしか言いようがありません。
先の日曜日のNHK教育テレビでスコットランド交響曲が放送されていました。とてもいい演奏だったと思いますが、自分には若干の違和感があり、コンヴィチュニーの演奏が思い出されたのです。メンデルスゾーンについて、ちょっと書いてみたくなったのです。
なお、ここに書いたレコードはすべてCD化されており、自分は、いま専らそちらを聞いています。コンヴィチュニーのスコットランドも随分音質が改善されています。
「セブンシーズ」レーベルのメンデルスゾーンのスコットランド交響曲とリストの交響詩「レ・プレリュード(前奏曲)」がカップリングされたレコードでした。このレコードを選んだ理由は、フランツ・コンヴィチュニーの指揮だったからです。なぜか自分はこの指揮者が好きだったのです。それまでに、この指揮者とライプチッヒ・ゲバントハウス管弦楽団のコンビによるベートーヴェン交響曲全集を持っていて馴染んでいたのと、雑誌「レコード芸術」や、ジャケ裏(レコードジャケットの裏)の解説などからコンヴィチュニー像をつくりあげていたからだったのでしょう。野武士のような朴訥剛毅な音楽づくりをしている指揮者というイメージを自分はつくりあげていました。
その日はそれ1枚しか買わなかったと思いますが、帰ってレコードに針を落としました。曲の冒頭からメンデルスゾーンの憂愁に満ちた音楽が奏でられていきます。ステレオ録音のレコードですが音質は最悪でしたが、そんな中からメンデルスゾーンの最高傑作だと自分は思っているのですが、憂愁ということばにふさわしい音楽が悠然としたテンポで奏でられます。そして終楽章の特徴的なコラール風の終曲に入ります。この部分をテンポを速めながら結ぶ演奏が多いのですが、このレコードは、あくまでも悠然と奏でつつ曲を終わります。これこそスコットランド交響曲の演奏だと、自分は深く感動しつつ思いました。
この日からコンヴィチュニーのこのレコードは自分の愛聴盤の一つになりました。そしてメンデルスゾーンが自分にとって、モーツァルトやベートーヴェン、ブラームスと並ぶ作曲家になりました。
ピアノ三重奏曲第1番に出合ったのも偶然でした。ピアノ三重奏曲のことをピアノトリオと言いますが、名曲がたくさんあります。そのひとつにシューベルトの第1番があげられると思います。自分は、この曲が目当てで、スークトリオが演奏するこの曲のレコードを買いました。ところが、このレコードにはこの曲ともう1曲がカップリングされていました。これがメンデルスゾーンのピアノトリオ第1番だったのです。この曲も憂愁にいろどられた美しいメロディーに満ちた端正な曲で、冒頭チェロがメンデルズーンならではのメロディーを奏でて始まります。自分は、すぐに大好きになりました。ヨゼフ・スークのヴァイオリンの音もとても美しくいまでも愛聴盤になっています。シューベルトをメインに思っていたのに、メンデルスゾーンの方が自分にはメインになってしまったのです。
この二つの曲は短調の曲です。交響曲はイ短調、ピアノトリオはニ短調です。メンデルスゾーンの曲で最も有名であろうヴァイオリン協奏曲はホ短調でした。モーツァルトも、短調の曲にはなにか特徴的な味わいがあり、やはり大好きなのですが、メンデルスゾーンもそれに近いようなものがあると感じます。
でも、長調の曲にも大好きな曲があります。変ホ長調の弦楽八重奏曲です。第1楽章の冒頭のメロディーはとても素敵で大好きなのです。この曲にはFM放送で初めて出合ったのだと思いますが、室内楽の範疇に入る曲なのに、とても伸びやかで雄渾な曲であるのを知り、すぐにレコードを探しました。これも、スメタナ四重奏団とヤナーチェック四重奏団が共演しているレコードが東京で見つかり、輸入廉価盤の中古レコードを買い求めたことを思い出します。
なぜ、メンデルスゾーンなのかについて、自分にはうまく説明できません。ピアノ曲集「無言歌」もそうですし、さまざまな曲のメンデルスゾーンのメロディーが自分の琴線に触れてくるからなのだとしか言いようがありません。
先の日曜日のNHK教育テレビでスコットランド交響曲が放送されていました。とてもいい演奏だったと思いますが、自分には若干の違和感があり、コンヴィチュニーの演奏が思い出されたのです。メンデルスゾーンについて、ちょっと書いてみたくなったのです。
なお、ここに書いたレコードはすべてCD化されており、自分は、いま専らそちらを聞いています。コンヴィチュニーのスコットランドも随分音質が改善されています。