つくすの折にふれ

旅の思い出などを

初めての小笠原旅行 ③

2018-04-14 06:39:28 | 旅行
 さっそくチューハイをいただきました。とても香りがよくておいしくて2本をあっという間に空けてしまいました。ホンワカしたいい気分でいると、停泊していたクルーズ船が出航のときを迎えたようで動き出しました。この船は「新ニッポン丸」であることが分かりました。昨日と同じように観光船が、クルーズ船に伴走しての見送りが行われています。この風景は何度見ても、とても気持ちのいいものです。そんなこんなしているうちに、ちょうどいい時間になったのでふくちゃんへ夕食に出かけました。開店と同時にお店に入りました。昨夜と同じ席に座りました。
 早速お酒を頼みました。この日は「越の景虎」をいただきました。まぐろの燻製とセロリのピクルス、おでんなどでのんびり呑みました。この日は、業務に関するお問い合わせが携帯電話入り、店を出てその対応に当たりました。その処理を終えて呑み直しました。そして、お店をあとにしてから、周辺をすこし歩いてみました。人通りはありませんが、賑やかな声が聞こえてくるお店がいくつかありました。一回り散歩してホテルにもどりました。シャツなどを洗濯してから休みました。
 父島3日目の朝です。朝から雨が降ったり止んだりしています。いつもどおりの朝食をとって様子を見ていました。天気予報では昼前で上がるということでした。そのとおり雨が上がりましたので、この日の観光に出発しました。この日はレンタルバイクを借りて、バスで行けない島の東側にある景勝地を訪ねる予定にしていました。バイクは5時間で1,500円です。自分の借りたバイクは自賠責しか入っていないとのことで、それらを確認する書類などにサインして出発しました。
 まず、ウェザー・ステーション展望台へ向かいました。歩きではけっこう大変だった道もバイクではラクラクです。残念ながら昨日と同じような海の色でした。次に宮之浜海岸へ行きました。ここもきれいな海岸です。若い男性がシュノーケリングをしていました。そんな様子を見て出発したのですが、雨が降ってきてしまいました。濡れるのも構わず、行程を進めようとしたのですが、だんだん雨が強くなってしまい、中断してホテルへもどりました。なかなか雨がやみません。けっこう強く降っています。そこで、カップ麺で昼食にしました。今日はダメかなと諦めかけたのですが、幸いなことに雨があがりました。
 では、行けるところまで行こうと再出発しました。まず、長崎展望台へ向かいました。この展望台からは隣の兄島と、父島と兄島の間の兄島瀬戸が展望できます。ここからの眺望の写真をフェイスブックにアップして次へ進みました。旭平展望台へ寄りました。ここからも海岸美を見ることができたのですが、このあたりからだんだんと低い雲の中に入ってしまったようで、あまり眺望が得られなくなりました。電波望遠鏡が見えたのでそばまで行ってみました。国立天文台VERA小笠原観測所でした。直径20メートルの電波望遠鏡で宇宙を観測している施設です。ここで写真を撮ろうとしたら、突然望遠鏡が音を立てて動きました。偶然だったのでしょうが、電波望遠鏡が動くところを見ることができてラッキーでした。
 次は初寝浦展望台へ行きました。そこへ通じる道がかなり冠水していて歩きにくかったのですが、とりあえず行ってみました。するとコンクリート製の旧軍用施設がありました。雲がかかってとても暗い中で見る大きな施設はすこし不気味でした。また、展望台からは初寝浦海岸が見下ろせるはずでしたが、その眺望はまったく得られませんでした。
 ここから先には一般人が入れる観光ポイントはありませんでした。ただ道路沿いにかなり高いフェンスが延々と立っている場所がありましたが、この島の固有種を守るための設備なのだそうです。地面とフェンスの間も隙間なくしっかり作られていて物々しいものでした。そんな道を走っているうちに、バイクはいつのまにかバスが通る道へと出ていました。
 小港海岸、コピペ海岸を再度見て、亜熱帯農業センターを見て、バスを待った扇浦海岸へ出ました。ここに小笠原諸島を発見した人を祀る小笠原神社があります。そこを参拝してから街へともどりました。バイクは満タン返しのため、島で唯一のガソリンスタンドで給油しました。0.7リットルしか入りませんでした。バイクを返してホテルへもどりました。
 この日がホテルへ泊まる最終日です。すこし荷物の整理をしてバッグに詰めました。そんなことをしているうちに最後の夕食時間になりました。開店時間に合わせてふくちゃんに入りました。「皆勤です」と入って行ったら女の子たちも笑ってくれました。同じ席に座って、さっそく高清水とセロリのピクルスを頼みます。このピクルスがさわやかでおいしくてお酒にとても合うのです。サワラのお刺身、イカ焼き、サワラの塩麴焼きなどでお酒をゆっくり楽しみました。最後に、おにぎりをお土産にしてもらいました。明日の朝食にするつもりでした。ごちそうさまとお店を出たとき、女の子たちと大将から気持ちの良いあいさつをいただきました。またの機会はないかもしれませんが、自分にとってはいいお店となじみになれたような気がしました。
 街をぶらついてからホテルへもどりました。ホテルの1階には、2軒のお店が入っています。その一つに「あめのひ食堂」があります。一度も入っていなかったので部屋へもどる前に寄ってみました。すると、お客さんでいっぱいでした。なんとかカウンターに座らせてもらうことができて、小笠原最後の夜の最後の一杯を飲ませていただきました。テキパキとしてなかなか感じのいい女将さんがいました。すこしおしゃべりもさせてもらったのですが、残念ながら記憶には残っていません。そして部屋へともどりました。こうして、最後の夜は終わりました。
 4日目の朝です。この日は気持ちよく晴れ上がっていました。昨夜のお土産のおにぎりで朝食です。豪快なくらい大きなおにぎりでしたので、1つだけにしておきました。チェックアウトの時間までに荷物をフロントへ下ろして預かってもらい、船の出航時間まで最後の観光をします。
 まず、大神山公園に行きました。かなり広い公園なのですが、これまでは入り口近くしか行っていません。もっと全体を見ようと思いました。手前にある展望台から奥にある展望台を目指します。昨日の雨の影響で、道はぬかるんでいました。滑らないように気を付けて歩きました。奥の展望台を見てから、植物公園ゾーンへと下りました。亜熱帯らしい植生が見られます。木道も整備されています。野鳥の声も聞こえます。自分のほかには人があまりいないようです。そんなところをのんびり散策していくと街へ出ました。
 次は、ビジターセンターに行きました。前回は映像を中心に見ましたので、見残したところをゆっくり見学しました。それから海岸を歩いて公園で休憩しました。船の時間は15時30分です。まだまだ時間があります。ここで昼食にすることにしました。木陰のベンチで、お土産のおにぎり、残りの2個をいただきました。それから文庫本を読んで時間を過ごしました。
 そのうちに、船客ターミナルの方へ行く人の流れが少しずつ多くなっていきました。自分はスーパーマーケットを覗いて、24時間の船旅で食べるものを探しに行きました。そして、あご入りのちくわやさきイカなど、音のしない食べ物を仕入れました。そして、ホテルに預けた荷物を取りに行き、待合所近くで乗船時間を待ちました。
そのうちに乗船が始まりました。上級の船室は上のフロアにあります。一番安い自分のフロアは3デッキです。上級船室から乗船が始まり、最後に自分たちの番になりました。今度の席は、片側は壁の端の席でした。両側に人がいるよりは気楽な感じです。荷物を置いて、上のデッキに出ました。
 宿泊先の人や観光業者さんなどかなりの人が桟橋で見送りに来てくれています。和太鼓のグループも来ています。そのうちに、出航の銅鑼の音が流れ、タラップが外されロープ作業があり船が動き出します。太鼓の音も響きます。見送りの皆さんは「行ってらっしゃい」と声をかけてくれています。船が桟橋を離れると、大小の観光船が船の両脇を追って送ってくれています。この日は10隻の船が送ってくれていました。沖合に出ると海へ飛び込んで泳ぎながら手を振ってくれています。これを見ているととても胸が熱くなりました。忘れられない思い出でになりました。
 帰りの海は少し荒れ気味で、往路よりもすこし船が揺れました。船中での24時間は、いいちことおつまみ、文庫本、レストランを楽しんで過ごしました。しっかり眠ることもできました。いいちこも全部吞みました。文庫本も2度目に入りました。レストランやラウンジも使って楽しみました。ほぼ、やろうと思っていたことはやれた船旅になりました。
東京湾近くまでは予定より遅れていた船でしたが、竹芝桟橋へ着いた時には数十分早く着いたようでした。そのあとも空いた時間に電車に乗ることができて、座って野田市までもどることができました。
 初めての小笠原の旅は、安さを意識したため、ホエール・ウォッチングの観光船を割愛したりしましたが、自分には十分に楽しめた旅行となりました。因みに総費用は10万円余でした。
ただ、自分たちのグループにもいますが、歩くことに不安がある人や海のレジャーが苦手な人には、6日間の日程いっぱいを楽しめる旅になるだろうかと疑問符が付くような気がしました。
また、自分は行くことができるでしょうか。
 (了)

初めての小笠原旅行 ②

2018-04-13 04:33:36 | 旅行
 部屋で時間調整をしているとき、大きな汽笛が聞こえました。窓から見ると、停泊していたパシフィック・ビーナスが動き出していました。出航のようです。すると、まわりを観光船が5、6隻ついて行きます。有名になっている出航見送りのようです。かなり遠方まで、乗組員が手を振りながら見送る様子を垣間見ることができました。それから、開店時刻17時30分に合わせてお店に向かいました。場所は確認していますのですぐにつきました。暖簾が出るのを見てお店に入りました。
 居酒屋ふくちゃんです。すこし暗めの照明で落ち着いた雰囲気です。とても若いお嬢さん方が働いています。カウンターの奥から3番目に座りました。まずは生ビールをいただきました。よく歩きましたので沁みるおいしさでした。セロリのような地元の野菜とお刺身の盛り合わせを頼みました。2杯目からはお酒に切り替えました。このお店では「越の景虎」と「高清水」を置いていました。高清水の燗を大徳利でいただきました。そのうちに、続々とお客さんが入ってきます。左隣には自衛隊の方が、右側には札幌から来たというお酒を飲まないお客さんが座りました。
 そのうちに何となく話すようになりました。札幌の方は、数年前に奥様を失くされた方で、なんと特等船室をシングルユースで来られたという優雅な身分の方でした。自衛隊の方とは、自分が行ったことのある呉や大湊とかの話をしました。お酒をお代わりして、マグロの燻製などをいただいてのんびり楽しみました。自衛隊の方にはお仲間が加わり、札幌の方は席を立たれましたので、自分も切り上げることにしました。料理もおいしく、お嬢さん方の接客もキビキビしていて気持ちよく呑むことができました。
 いつもの旅行では、これから飲み歩くのですが、この日はホテルへもどって、明日の観光コースの検討をすることにしたのでした。いいちこを軽くやりながら、ガイドブックやガイドマップを見て考えました。その結果、村営バスを使って行けるところを観光することに決めました。それから小笠原にいることをメル友へ報告して寝ました。
 父島2日目です。とてもいい天気です。いつもどおり4時半には目覚めましたのでさっとシャワーを浴びて身支度しました。そして、モーニングいいちこをいただいてから朝食です。そのとき大きな客船が停泊しているのに気づきました。真っ白なパシフィック・ビーナスとは違って、船体が濃い青色の船でした。船名は目を凝らしても読めませんでした。朝食は今朝も赤いきつねです。お米は特製の「焼き干し飯」です。軽く済ませてから8時前にホテルを出て小笠原丸の桟橋前のバス停「船客待合所前」に行きました。
 ベンチへ座って待っていると村営バスが通り過ぎて行ってしまいました。まだ時間前でしたので回送バスなのだろうと思って待ったのですが、なかなか来ないので若干不安な気持ちになってしまいました。でも、数分遅れでバスが来ましたので安心して乗り込みました。車内で500円の1日券を買いました。ここから南に向かって一番離れている「小港海岸」に向かいます。
 20分ほどで着きました。ここから景勝地の「中山峠展望台」まで登ります。このバス停で降りた人は5、6人いたのですが、海岸の方へ向かったようで峠へ登る人は自分だけでした。一人だとすこし不安ですが登って行きました。でも途中で下ってくる人に遭えて、一人だけではないことが分かりました。そして、15分ほどで峠に着きました。
 北方向には小港海岸、コピペ海岸が、南方向には南島、ブタ海岸がきれいに見えます。ここで、タブレットで写真を撮って、フェイスブックに投稿しました。そのうちに後続の人が登ってきました。でもその人は、ブタ海岸の方へ下って行きました。ここから20分かかります。自分は無理せずに小港海岸へ下ることに決めていました。しばらく景観を楽しんで下りました。
 小港海岸はとてもきれいな砂浜でした。海岸にはほんの数人がいるだけです。静かです。こんなとき、だれか一緒にいてくれたら、同じ景観も感じ方が違うのだろうなとなどと、余計なことを思ってしまいました。そして、となりのコピペ海岸へ向かうことにしました。ところがこのころには気温も上がってかなり暑くなってきていました。
 次の海岸へ出るのには、整備された遊歩道を行くのですが、なかなか険しい上り下りの道なのです。小さなバックに、タブレットといいちこを入れて持っていたのですが、いいちこは余計だったと思い知らされました。とても呑むことなんかできない厳しい道でした。薄い上着を羽織っていたのですが、これも余計で、大汗をかくことになり、脱ぎました。上り階段では、息が上がってすこしフラついたりしてしまいました。体力に不安を感じはじめところで、なんとかコピペ海岸へ出ることができました。
 こちらの海岸には若い女性たちのグループが水遊びしていました。この海岸まではクルマが通行できる道路があるのでした。駐車場にはバイクが何台か停まっていました。彼女たちはレンタルバイクでここまで来たようでした。自分は、街へもどるためバス停まで行かなくてはなりません。扇浦海岸というバス停まで歩いて行きました。
 この海岸もとてもきれいなところでした。何人かの観光客が、カヌーの講習を受けて、波静かな海を移動して楽しんでいました。次のバスまで40分近く待たなくてはなりません。海岸の四阿で、持っていた文庫本を取り出して時間をつぶしました。因みに本は佐伯泰英の「鎌倉河岸捕物控16・八丁堀の火事」でした。そのうちにバスが来ました。ほぼ満席の乗客が乗っていました。これで、ホテル近くまでもどりました。ちょうどお昼前の時間でした。まだ、お客が入っていないうちに昼食をとることにしました。
 港前の「ぼう家」に入りました。パッション・リキュールがありましたので、ロックでいただきながら「島魚寿司」をいただきました。漬けになった魚の握りずしでした。おいしくいただきました。これで一旦ホテルへもどりました。午後はどうしようかとガイドブックなどを広げて見ているとき、旅行社からもらったサービス券が目につきました。その中に、いま食べたぼう家さんの8%引きの券がありました。つまり消費税分がサービスされる券でした。ほんの少し損をした気がしました。
 午後は、ウミガメを飼育している「海洋センター」に行くことにしました。また、船客待合所前のバス停から乗りました。そして、海洋センター近くで降りて歩いて行きました。海洋センターには、数十人の観光客がいました。ワゴン車とマイクロバスが停まっていましたので、今朝入っていたクルーズ船のお客さんたちだったのかもしれません。その人たちといっしょになって亀を見ました。小さいものから何十歳という大きな亀までが飼育されていました。亀を育てて海へ放流している施設です。ここで、大きい亀の餌にはキャベツが使われているのを知りました。
 ひととおり見学して施設を出てバス乗り場の方へ向かったのですが、残念ながら、少し先をバスが通り過ぎていくのが見えました。ちょうどいいバスを逃してしまいました。次のバスを待とうかとも思ったのですが、バスを待つのにいいロケーションでもないので、歩いて街までもどることにしました。30分ほど歩いてホテル近くまでもどりました。
 まだ15時前です。何をするか考えたのですが、もう少し見物しようと思いました。街からすこし離れた夕日のスポットまで行くことにしました。父島の北部にある「三日月山」にある「ウェザー・ステーション展望台」です。ただ残念ながら空は曇り空に変わっています。
 それでも一度決めたのだからと、勾配のきつい道路を上って行きました。上へ行くにしたがって「砲台跡」とかが残されています。この島は戦場にはならなかったのですが、こういう軍事施設が作られていたのを知りました。そして、その展望台につきました。残念ながら曇ってしまったので、海の色はグレーです。でもなかなかの眺めです。シーズンのときには、クジラのブロウやブリーチングが見られるとのことでした。
 しばらくいて下ることにしました。そこへ携帯に電話が入りました。野田市からの同窓会関係の問合せでした。小笠原から対応しているのを申し訳ないように感じました。下りは、当然ながらラクで早く街まで降りられました。そして農協の直売所で、船客にサービスされる記念品をいただきました。タバスコを意識した辛味調味料「オガスコ」と「島ラー油」のセットでした。試供品ではなく製品のようでトクした気分になりました。ただもらうだけでは申し訳ないので、小笠原産のパッションフルーツを使ったチューハイを買いました。また、スーパーではカップ麺を買ってホテルへもどりました。
 (つづく)

初めての小笠原旅行 ①

2018-04-12 04:46:27 | 旅行
 旅行をした時からこれを書くまでにかなりの時間が経過してしまいました。記憶を元にして書いていますので誤りがあるかも知れません。ご承知おきください。

 初めて小笠原の父島を訪ねてきました。一人で、しかも安上がりを意識して旅して来ましたが、いい景色と、自分の日常とはすこし違う空気感があり、十分に楽しめた旅となりました。
 自分の最大の趣味は旅です。さまざまな機会をとらえて旅に出かけていますが、いまだ訪れたことのないところの一つが小笠原でした。あまり歳を取らないうちに行きたいと考えていました。そんなとき、三女の出産が予定より早まり、無事二人目の孫が誕生したので、3月初旬にまとめて時間が取れる見込みとなりました。そこで、小笠原専門の旅行社の安いパック旅行に申し込んでみました。
すると、第一希望ではありませんでしたが、予約が取れたため、まだまだ寒いこちらから暖かいあちらへと行ってきたのでした。
 小笠原への船便は、日曜日に東京・竹芝桟橋を出て翌日父島港へ着き、木曜日に父島を出て、翌日金曜日に東京・竹芝桟橋へもどるというのが、通常の運航パターンなのだそうです。現在は3代目になる1万1千トンの「小笠原丸」が就航していて、1千キロ離れた父島とを24時間で結んでいます。
 日曜日の8時47分発の電車で野田市駅を出発しました。柏で品川行きに乗り替えて、浜松町で降りて竹芝桟橋へ向かう予定でいきます。ところが、ここで凡ミス、上野東京ラインは浜松町には止まりません。そのことを承知していたのですが、新橋で乗り替えるのを忘れて品川まで行ってしまい、浜松町へもどることになってしまいました。滅多にしないミスをしました。
 浜松町の駅から竹芝桟橋はすぐです。少しローラーが傷んだためか、ちょっとうるさい音を出すカートをひいてターミナルへ向かいました。10時30分過ぎについて手続きです。もう乗船出来ますよとのご案内で小笠原丸に乗り込みました。
 一番運賃が安い2等和室ですので、3階フロアにあります。席は指定されています。幅80センチほどの区画で分けられています。その幅のマットレスなどがセットされています。頭が壁際になるようになり、足が部屋の中央で反対側の人と向き合うようになります。だいたい1室で15人ほどの席があります。とりあえず、自分の席に荷物を置いて、上のデッキに出てみました。この日はとてもいい天気できれいに晴れあがっていました。そのうちに銅鑼の音がスピーカーから流れて、出航5分前を告げます。
 船の出港や帰港の際に行われる船と桟橋とのロープのやり取りは、見ていてなかなか楽しいものですが、これを見て楽しみました。そしてタラップが出航時間ちょうどに外されて船が動き出します。桟橋の方では、見送りの人が手を振っています。横断幕もありました。港でのこの風景はなかなかいいものだと思います。船旅独特のものがあり、旅情を感じさせてくれます。
 しばらく東京湾からの風景を眺めて、写真を撮ってメル友にメールしたりしました。そして、席にもどり、予定していた時間つぶしをすることにしました。この旅行に、文庫本を3冊、いいちこシルエットを2本、焼き干し飯などのおつまみ、切子のマイグラスを持ってきています。まず、無事の出航を祝ってひとりで乾杯しました。
 出港時からしばらくは、グループごとのおしゃべりの声が賑やかでしたが、いつの間にか、耳が慣れ、また、静かにもなっていき気にならなくなりました。これからす24時間は船の中なのです。飲みたいときに飲む、読みたいときに読む、眠る、船内を歩く、と、マイペースでゆったり過ごすつもりで来たのですが、往復とも想定どおりに過ごすこととができました。
 当然のことですが、東京湾を出て館山から離れると携帯の電波が圏外になり画面のアンテナが立たなくなりました。伊豆七島の島の近くを通るときにはアンテナが短時間立つようになります。ですが、ほとんどのときは携帯の電波がつながらなくて、海の上であることがよく感じられました。
 そのうち、レストランを会場にして、小笠原のことを学ぶ勉強会も開かれましたので、自分も参加してみました。そんなことをして過ごしているうちに夕闇が迫ってきました。そこで、レストランで夕食をいただきました。日本酒を燗してもらって、おでんや、タタキで楽しみました。価格は、セルフサービスなのでリーズナブルでした。味も良く、窓際の席で、丸窓から海を眺めながら、夕闇が宵闇になる時間を過ごしました。いいちこを飲んですこし下地がついているところへ2本いただきましたので、ホンワカといい気分になりました。席へもどって読書を始めましたが、すぐに眠くなって眠ってしまいました。
 そのあと、トイレに起きたりしましたが、家でも目覚める時間の4時ごろまでよく眠れました。周りの人たちも、ずっと寝ている人、スマホやタブレットを見ている人、様々でしたが、そんなことがあまり気にならず過ごせました。若い人が7,8割、残りが自分と同じような年代の人という感じだったでしょうか。6時だったと思いますが、照明が明るく点灯して、朝の作業が始まりました。自分も洗面所へ行こうとして、忘れ物に気づきました。洗面用具を持ってこなかったのです。いつもの旅行では、ホテルや旅館泊まりなものですから洗面用具やタオルを必要としないものですから、バッグに入れておく習慣がなく、うっかり忘れました。
7時になると、レストランやラウンジ、売店の営業が始まりました。早いうちに自分もラウンジへ行って、焼きおにぎりを食べてきました。まだ、あと4時間近く船の中です。読書したりして時間を過ごします。そして、上のデッキへ出ると小笠原列島が見えてきました。とてもいい天気で、気温が高いのが感じられました。父島の二見湾には、真っ白なクルーズ船「パシフィック・ビーナス」停泊していました。そして、11時に父島港に接岸しました。
 着込んでいたセーターを脱いで、バッグへしまい込んで下船のときを待ちます。一番下のフロアにいますので、下船は最後になります。下船までけっこう時間がかかりました。桟橋には、宿泊先からのお迎え、観光業者などのお迎えの人たちがたくさん待っていました。自分の宿泊先は、桟橋の目の前にありますのでお迎えはいません。すこし暑く感じるような日差しを受けて、自分の宿「父島ビューホテル」へチェックインしました。
 自分の部屋は、3階の3ベッドでミニキッチンが付いた部屋でした。浴槽はありませんがシャワールームが付いています。広々としてゆったりしています。まずはシャワーを浴びて着替えをすませました。そして、備え付けのポットでお湯を沸かし紅茶を飲んでから、街の散策に出かけました。
 今回の旅では、これから4日間の過ごし方を決めていませんでした。できれば、まず島内観光をと思ったのですが、予約していませんでしたので、案の定、定期船入港日の午後だけに設定されている「島内半日観光」には乗ることはできませんでした。
 そこでまず昼食をと思ったのですが、船が入ったばかりのせいか、食事ができるどの店もとても混みあっていました。それではと、2つある小さなスーパー・マーケットを覗いてみました。そのどちらのお店でも、着いたばかりの船で届いた品物の値付けと陳列に忙しそうでした。そんな様子を見ながら「赤いきつね」を買って部屋にもどり、軽い昼食にしました。
 すこしのんびりしてから、街を歩いてみることにしました。まず、目についた神社へお参りしました。「大神山神社」です。かなりの急な石段を上っていきます。ですから当然の如くすばらしい展望を楽しめます。さっきまで乗ってきた小笠原丸、パシフィック・ビーナスがきれいに見えます。参拝してからは街を歩きました。まずは、ガイドマップで見つけた夕食の候補店を見てみました。なんとなく自分に合う気がして夕食はここにすることを決めました。
次は「世界遺産センター」を見学しました。小笠原が「世界自然遺産」に指定されたのか、その特別な成り立ちなどを紹介してありました。大陸と一度も陸続きになったことのない島なので、動植物は他の影響を受けることなく進化したため、 島には固有種がたくさんあることなどが紹介されていました。固有種は植物で36%、昆虫類で28%、陸産貝類では94%にもなるそうです。そういうことが高く評価されたようです。
次は、海岸線の方へ出て「ビジターセンター」に行きました。この建物はいわば博物館のようなもので、小笠原の自然や歴史がくわしく紹介されていました。
 見学していると、ビデオを上映するというので、それを見ることにしました。世界遺産センターとは違った小笠原諸島全体がよく分かる展示でした。最近の噴火で大きくなった「西之島」のこと、激戦が行われた「硫黄島」のことなども展示されていました。センターのすぐ前は砂浜で、見学のあと出てみました。
 海沿いを歩いて、小笠原丸の桟橋の方まで行きました。小笠原丸を間近から見上げてからホテルへもどることにしました。すると、すぐそばに大神山公園の入り口の一つがありました。それでは、運動しようと公園へ入りました。ここもきつい上りです。しばらく頑張ると展望台へ出ました。港がある「二見湾」全体がきれいに見えます。ホエールウォッチングなどに出ていた船が何隻も港へもどってくるのが見えました。そして、街の方向へすこし下ると、先ほど参拝した神社に出ました。さらに下ってホテルへともどりました。
 (つづく)