【申告】
ホームボタンを押しても電源が切れなくなり、切れたら電源が入らなくなりました。
【診察】
2021年7月にセガトイズから発売されたスマホおもちゃです。
グリーン、パープル、ピンク色があり、今回の患者さんはピンクです。
キャラクターと2ショット写真が撮れたり、ムービー撮影もできます。
全部で10種類以上のゲームと40以上のアプリがあります。
ホームボタン(電源SW)を押しても電源が入りません。おもちゃ病院には荷が重い患者さんですが、確認出来る基本箇所を検査します。
内部基板の構成図です。
配線切れなどは無く、ホームボタンのクリック感にも異常を感じません。
次に電源系の回路把握と検査です。
回路は、次のようになっていました。
これから制御系電源とおそらく液晶バックライト系の電源に分かれているようです。そしてSig1からSig3の信号のいずれかの信号が入るとQ101がONする論理和回路(*1)であり、かつLCDバックライト電源出力制御信号が入った時LCDバックライト電源が供給されるようです。IC106とIC104は、降圧型のレギュレータ(電源IC)です。
そこで、ホームボタンを押せばSig1からSig3のいずれかが入りQ101がONすると考えました。しかし、Q101はONしませんでした。そこでホームボタンのチェックパターンTP101とTP102を短絡させると、LCDが点きました。そこでホームボタンスイッチの接点で短絡を確認するとやはり開放のままでしたので、クリック感には異常を感じませんでしたがホームボタンの故障と思われます。
表面実装型のホームボタンスイッチを交換すると、無事LCDは点き正常動作を確認することが出来ました。
【治療後記】
食べず嫌いをすると治療不能で受付を遠慮したいおもちゃですが、幸いにしてホームボタンスイッチの故障がわかり、交換することで治療することが出来ました。おもちゃ病院でこのような高機能のおもちゃを治療できる範囲はごく限られていますが、配線、ヒューズ、スイッチ、電源回路、水晶振動子、リセット信号の確認などをすれば、助けられる命もあります。この他のLSIの破損がわかったとしても、カスタムLSIがほとんどなので入手もできませんし、仮に汎用LSIであっても購入費用などを考えると現実的ではありません。
最初にホームボタンの機構的確認の他電気的確認をすれば、もっと早く治療ができました。でも、電源回路の追いかけも出来ましたので、この後同じ患者さんが来院するときのための治験アップとしましょう。(^_^;)
【おまけ】
*1:論理和回路とは
複数の入力があった場合、その内1つの入力が有効な状態になったとき出力が有効な状態になる機能回路を言います。電球を点けるスイッチで考えると容易に理解できると思います。参考までに論理積の回路も併記しましたので比較してみて下さい。論理積回路とは、複数の入力があった場合すべての入力が有効な状態になったとき出力が有効な状態になる機能回路を言います。