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恩田陸さん、大河、競馬、旅行などの趣味など徒然なるままに書いています。コメントなどいただけるとMsiさん喜びます(笑)

『フランス革命 ~革命をめぐるイデオロギー~』 vol.1。

2005-05-12 23:19:27 | 自由への試論。
序文…『フランス革命の定義』(研究動機)

   :市民革命か大衆革命か


■フランス革命とは、一般に1789年7月14日の『バスティーユ牢獄襲撃』事件から1799年11月9日のナポレオンによる『ブリュメール18日のクーデター』までの、約10年間にわたるフランス社会の大動乱を指すことが多い。そしてまたこの大革命は、フランス社会を根底から変革しただけにとどまらず、同時に全ヨーロッパに及び近代社会成立の転換点となったともいえる。
 たしかに商工業面について論じるならば、当時イギリスでは既にフランスに先んじて産業革命を済み終え、来るべき資本主義的・ブルジョワ的社会へと着実に進行していた。
 だが、現代ヨーロッパにも通じることではあるがイギリスという国は「島国」というその地理的要因にもより、素直に「ヨーロッパ」と表現しにくい部分があることもたしかではある。
 その意味において、やはり18世紀末当時、絶対王政の名の下に国王が君臨していたフランスという大国の動静がそのまま全ヨーロッパの動静に直結していたと考えることに大きな誤りはないであろう。

 
■そんなフランス革命であるが、この歴史的大事件は、その真実を見定めることが非常に困難を伴う作業であると言わざるをえない。歴史の教科書を紐解けば、ルイ16世やマリー・アントワネット。ミラボー、マラー、ロベスピエール。そしてナポレオン。などなど、歴史上の有名人物を列挙し続けることは容易い。
 だが、問題なのは、そうであるにも関わらず10年にわたる期間常に一貫した政治思想をもって歴史の表舞台に立ち続けた人物がきわめて少ないということである。そのいずれもが失脚、あるいは文字どおり革命の露と消えていった。最終的にフランス革命を終焉させ新たに皇帝に君臨したナポレオンにしても、彼が歴史の表舞台へと登場したのは革命中期以降である。
 
■以上の点から、私は「特定の歴史上人物」の視点からこのフランス革命なるものを考察する術を選択はしない。
 そこでそれに代わる研究視点として選んだものが、「市民」「大衆」という相反する2つの社会的階層の思想・視点からみたフランス革命である。

 ※この時代の「市民」とは現代社会における「市民」とはニュアンスが異なる。
  簡単にいえば「貴族たちのような特権階級ではないけれども、経済的・知識的にある一定の水準を超えた富裕階級」といったところか。

 
■バスティーユ牢獄襲撃やヴェルサイユ行進に代表されるように、フランス革命を「イメージ」的に捉えた場合、『大衆蜂起』という印象はきわめて強い。都市下層民たちが、「自由・平等・博愛」を理念としたフランス人権宣言を実現するために支配層階級と戦い続けていた、と。
 それもまた事実のひとつではある。
 また私自身、この研究において「市民」「大衆」という2つの視点は持ちつつも、主に革命期を通じての「大衆」の動向にその主軸をおいている。
 しかし、現実にはそのような大衆の暴走とは裏腹に、フランス社会が革命以後、ナポレオン帝政・王政復古といったプロセスを経て、19世紀においては「資本主義社会」という形へと移行していったこともまた歴史が証明している。
 
■では、この結果は果たして大衆の支配層階級に対する敗北を意味しているのだろうか? と同時に、それではこの革命を思想的面からに指導していったイデオロギーは何であったのか? そもそも、そんなものが存在していたのか?

 このフランス革命なるものは市民革命であったのか? 大衆革命であったのか?
 そしてこのフランス革命なるものは次代に何を遺したのか?


 以上の点を中心に、私はこの論文を進めていきたいと思う。
 

 ※なお、この論文においては「市民=ブルジョワ層」、「大衆=サン・キュロット層(都市下層民・マニュファクチュア従事者などの総称)」と定義して書き進めることをまずはじめにお断りしておく次第である。


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