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永崎士道の建設業徒然なるままに、時々国防とグルメも

主に建設業の話題を書きたい。
私自身建設会社の社長だったので、
業者贔屓の発言も大目に見てください。

談合(カルテル)ブレーンストーミング(その24)

2012-07-13 | 談合

予定落札価格(以下、予定価格)が、役所の上限価格だということは前々回説明した。 しかし、ここでよく間違う業界外部の人が多くいる。 無駄な経費も含んだすごい贅沢な価格だ、という勘違いである。 確かに、工事の種類によって非常に利益率の高いものがあったのも事実である(このことはおいおい書いていく)。 一部の工事だが、ぼろい儲けも期待できた。 しかし、談合が消滅した現在、そのようなものはない。 むしろ、赤字にならなければ御の字といった工事がほとんどである。

まず、予定価格は、建設物価調査会という財団法人の調査を基に作られている。 調査は毎年、全国約数万社の賃金台帳を調べて行われる。 最近は賃金台帳のほかに、社会保険庁に提出している標準月額報酬まで持参させられる。 個々の発注者が気まぐれや推測で決めた価格ではない。 あくまでも全国及び各地域の実際の賃金を基礎にした標準価格として作られている。 

問題なのは、予定価格が過去の落札率も基準に作成されることだ。 たとえば、去年、予定価格の100%で落札していれば、今年も100で作られる。 しかし、今年予定価格の80%で落札すれば、来年は予定価格自体が80になる。 さらに、来年度も80%で落札すれば、その次の年の予定価格は初年度の64%になってしまう。 実際にはこう単純ではないが、談合崩壊で安値競争が常態化すると、予定価格自体が毎年安くなっていく。 早くから談合根絶に取り組んだ自治体で、生活保護との逆転現象が起きているのも、世間がこのような仕組みをまったく理解していないからである。

テレビなどでやる説明は、いつも予定価格に対する落札率ばかりが問題にされる。 年々安くなっていく構造的な仕組みを一切説明しない。 世間では常に予定価格より15%以上も安くて当然だ、という認識ができてしまった。

さらに、民間工事と比較して公共工事の高さを批判するものもよくあった。 最近はあまり見聞しなくなったが、毎年のように予定価格が下がり、今では民間工事よりも易くなってしまった感があるからだろう。 ただ、私が言いたいのは価格の高低ではない。 そもそも公共と民間では管理コストが全く異なるから、単純な価格比較はできないということだ。

民間工事は価格にシビアだが、工事のやり方は業者に一任である。 だから、業者も利益が出るような工程とやり方を組む自由がある(もちろん、手抜きではない)。 ところが、公共工事では、発注者が工事のやり方や工程にも口を出してくる。 発注者の都合で何日も、時には受注してから一カ月以上も仕事をストップさせられることは珍しくない。 アメリカなら間違いなく裁判だが、日本の業者はおとなしく従っている。

今日はここまでにします。 おやすみなさい。 


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