あ可よろし

「あきらかによきこと」は自分で見つける・おもしろがる
好奇心全開日記(不定期)

幸せだなぁ~

2022-11-01 | 本(文庫本)
浅田次郎さんの『大名倒産』を読みました。
久しぶりに浅田節が帰ってきたという感じの作品でした。『一路』に通じるテイストがあり、面白くて楽しくて、長編なのにすらすら読めてしまいました。

江戸の末期。丹生山松平家は260年の間に借金が積もりに積もり、その額何と25万両。年の利息だけでも3万両。12代当主は庶子の四男・小四郎にとっとと後を継がせて隠居し、密かに「倒産」を計画し始める。そんな父の計画に対して、糞がつくほどの真面目で誠実な小四郎は、倒産を防ごうと必死の「経営再建」に乗り出すのだが……。

幕末のほとんどの大名家は借金まみれだったらしいです。戦国の世から平穏な時代になって久しければ、平和ボケの大名が名前ばかりの領主になってしまってもおかしくないのかもしれません。それが200年以上続いて代々ツケを回し続けてきた結果が!
主人公である小四郎も、初のお国入りのための参勤行列も倹約に倹約を行って実行し、国家老も商人も巻き込んでなりふり構わぬ金策に動くのですが、とにかく借金の額がとんでもないためにすべてが焼け石に水となってしまいます。完全に小四郎の味方になる一方、勝手に計画倒産を企てる親父にむかつくことこの上なし。こういう勝手な親に振り回されてしまう子どもって、確実に現代でもいますよね。
そこに現れるのが七福神で、とても神様とは思えない人間っぽい神様たちが動き出して、ピンチの状況に少しずつ変化が出てきます。実は神様の中でのMVPが貧乏神、ってのも愉快です。
ユーモアだけでなく、登場人物すべてに愛情が注がれるのも浅田さんの作品らしいところで、好き勝手なことをしちゃう先代の親父だって根っからの悪人じゃないのですね。いちばんの和みキャラは次兄の新次郎とお初ちゃんの夫婦で、何かと足りないカップルだけど、庭づくりの名人でキラキラ生きています。その雰囲気を知れるだけでも幸せな気分にさせてもらえます。

ここまで書いていて「見どころしかないじゃないか!」と気づかされますが、本当にそういう作品でした。人間、愚直に生きているのがいちばん幸せだって思える、幸せな読書時間でした。そして無性に鮭が食べたくなるのでした。

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2 コメント

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Unknown (ハナキャップ)
2022-11-01 11:55:57
ステキステキ!
コチラのググッと寒ーーくなってきた夜長に、こういうの欲してるかも!
ハートがほっこりしたい!七福神に会いたくなりました♪
図書館予約しちゃお

そして前稿の町中華も、色々といい塩梅なのがすっごく伝わってきて、
あぁぁ〜~食べたーい!とお口がすっかり中華モードになりましたー
餃子はともかく、玉子とキクラゲの炒め物みたいなのって、
本当に相性よいお店ってなかなか出会えないので、一か所でも見つけるとそこばっかり行っちゃうのよねー
返信する
ハナキャップさん (とみ)
2022-11-03 22:13:02
ここのところ浅田作品に対して「ん?」の方が多かったので、
これだけの大ホームランは「お帰りなさい」って言ってしまいそうなくらいでした
秋の夜長にでも、もうすぐやってくるお正月休みにでも!

赤坂の町中華、これも私的には「大ホームラン」でして、
次はランチタイムに一人で行ってしまいそうです。
ラーメンよりもチャーハンで!
いや、チャーギョーで
返信する

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