春映画2作品

昨秋に観た映画のスピンオフ作品とpartⅡが、２作品とも春に公開となりました。秋ほどのテンションではなかったものの、どちらも公開を楽しみにしていたことに違いありません。今回はその映画の感想を。

まずは『相棒シリーズ　鑑識・米沢守の事件簿』。大好きなドラマ『相棒』の鑑識さんが主人公の作品ですから、それなりに期待しておりました。で、率直に申しますと、確かに面白かったのですが「映画じゃなくて２時間ドラマでも良かったんじゃない？」というところでした。

映画なのでこういう言い方はヘンなのかもしれませんが、リアリティがまったく感じられなかったんですよね。「作り話臭すぎる」と言いましょうか…。本家の劇場版『相棒』の方が派手な爆破とかあったのに、スケールがデカ過ぎたはずなのに、この作品よりもリアリティが感じられたのはどういうことなんでしょう。
たとえば、米沢さんの奥さんが置いて行った離婚届と結婚指輪も、まったく帰って来る気がない人が、あんな指輪の置き方とかしますかね？　しかも白い花を添えますかね？　
全体的にちょっとツメが甘いような気がして「だったら２時間ドラマでも…」と感じてしまい残念でしたが、ラストに流れるエレファントカシマシの主題歌は相当良いです。米沢さん夫婦の幸せな映像に乗せて流れる曲はグッときます。映像と音楽から判断するに、やっぱりこの夫婦が別れる理由なんてどこにもないんだけどなぁ～。

そして、お待たせ（？）しました『レッドクリフpartⅡ』。
いわゆる『三国志』ファンからは悪評しか聞こえてこないもので、特にこのpartⅡはケチョンケチョンに言われていたりします。でも私はpartⅠを観たときに『これはジョン・ウーの“オリジナル三国志”だから』と悟って（あきらめて）おりますので、今回も随所に突っ込みを入れつつ楽しもうと決めていました。
しか～し！　映画が始まると「随所に突っ込みを入れつつ」では全然足りない。突っ込みを入れなくても良いところがないくらいのストーリー展開。『三国志』ファンからケチョンケチョンに言われる理由が分かりました。

小喬や尚香がどうのこうのと言うよりも、とにかく「酷いな…」と思ったのは登場人物の描き方でした。『三国志』の面白さは、個性的で魅力的な人物がたくさんいて、知力と武力をもって対立したり認めあったりってところなのに、それがまったく感じられなかった。
曹操もかなり酷かったけど（あれじゃあただのエロボケオヤジだし…）、結局孔明も中途半端だったけど（あれじゃあただの男前の気象予報士だし…）、劉備なんてあれじゃあまるで痴呆が始まったおじいちゃんじゃないの！　特に孔明を残して一方的に撤退するときと冬至のお団子を作っているときの劉備の言動には、さすがにこの映画に関して広い心をもって臨んだ私でもあいた口がふさがらず、しばし呆然…。おまけに後半でその劉備にもワイヤーアクションをさせちゃうジョン・ウー！
「おじいちゃんに何させるのよ～！」

結局ジョン・ウーは、この映画で『三国志』の世界を描きたかったのではなかったのですね。これは1800年前の中国を舞台にした反戦映画です。戦争ってこんなに惨たらしいものなのだと、戦争の勝者などいないのだということを訴える映画としては成功だったでしょう。私はそう理解しました。迫力や凄みは十分に感じられましたしね。ただ「三国志の赤壁」を楽しみにしていた２年前の自分を思えば、ちょっと可哀想でしたけど…。

「レッドクリフ」鑑賞後もずっとモヤモヤしていましたが、こんなときのためにこそ読むべき本を思い出し、たくさん笑ってスッキリしました、とさ（白井さんの漫画は新刊『劉備くん 青天の赤壁』が出ました～♪）。