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冬の駅から#9

2021年04月27日 | 焼き芋みたいなショートエッセイ
焼き芋みたいな
エッセイ・シリーズ  (47)

冬の駅から #9


文化祭の余韻が、僕の中にまだ強烈に残っていた頃、
バスケ部だったデンスケが「一緒にバスケやらないか?」と誘って来た。
じつは僕は、中学に入学した時、前年に患ったウイルス性の重い肺炎のせいで、
数年間は
激しい運動を避けるように医者から
止められていた。
その為、
どの部活にも入らず
暇そうにしていた僕を見て、
デンスケが誘って来たというわけだ。


早速その日の放課後、僕はデンスケに連れられて入部届けを出しに行った。
「うーん、2年生の今から始めるとなるとずっと補欠のままだぞ。それでもいいか?」
顧問の先生にそう念を押されたが、それでもいいと言って入部を許可された。

始めるにはかなり遅かったが、僕は毎日練習に励んだ。元々スポーツはなんでも好きで、
小学生時代は少年野球チームのピッチャーだったし、冬はスキージャンプ少年団に
所属してオリンピック選手を本気で目指していたこともあった。
年に一度開催される市内マラソン大会でも小学生部門で2位を獲ったりと、
体を動かすことは大好きだったのだ。   
  
当時、バスケットボール部は地区大会で9連覇中の優勝常連校で、
途中入部の僕は試合にはほとんど出れずベンチを温めるだけだったが、
皆に混じって汗することは楽しかった。バスケットボールにもすぐに慣れたし、
何より、体育館の床に響くキュッキュッというシューズ底の音が妙に心地良かった。

                              

そして3年になる頃、僕はまさかのレギュラーに選ばれた。
このチームにはひとつの伝統儀式があって、レギュラー選出は監督からではなく、
卒業する先輩から直々に呼び出されて成立する習わしになっていた。
先輩が使っていたゼッケン入りのユニフォームを直接手渡されることが、
レギュラーになった事を意味するのだ。

ある日、ある先輩から「明日家に来いよ」と言われドキドキしながら家に行くと、
洗濯されたゼッケン入りユニフォームを「頑張れよ!」と手渡してくれた
「やった!」と内心ガッツポーズをしたものだ。

いち早くユニフォームを手にしていたデンスケも僕の事が気になっていたらしく、
受け継いだユニフォームを見せると「よかったよかった!」と喜んでくれた。
それからは更に練習に熱が入り、デンスケとの連携プレーでポイントゲッターに
なった試合もあった。中学最後の大会では、バスケ部は地区で優勝し10連覇を成し遂げた。
練習はきつく監督も厳しかったが、あの時期、体を鍛えていて
本当に良かったと思う。
おかげで現在も腹筋はかろうじて健在だ。

               



                ー続ー



          星空Cafe、それじゃまた。
            皆さん、お元気で!

  

              



        







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