先週金曜日から、日本人事総研(JIP)の企業研究会で沖縄に行ってきた。
JIPの顧問先企業の人事制度の説明を受けるのが目的であるが、その前に沖縄県庁で、沖縄の産業についてのレクチャーを受けた。
沖縄の産業は、公共事業、基地収入、観光収入によって成り立っているが(3Kといわれているらしい)、最近は情報通信産業・IT関連企業の誘致が活発に進められている。
当初はIT関連企業の中でもコールセンターの比率が多かったが、ここ数年は情報サービス業やソフトウエア開発といった企業の進出が増えているという。
沖縄は全国一失業率が高く(07年は全国平均3.9%に対し、沖縄は7.4%)、特に若年者の失業率が高いのが特徴で(15歳以上29歳未満について、全国平均6.7%に対し、沖縄は12.8%)、一人当たりの県民所得は、本土復帰以降ずっと全国最下位が続いている。
これら情報産業の進出は、雇用の創出という面で大いに期待が集まるところだが、県が誘致を進める理由の一つに、沖縄は日本で一番地震の危険度が低いことがあるという。本土とは断層が異なっているそうである。近年の防災意識の高まりの中で、首都圏に集中している中央官庁や金融機関のデータのバックアップの拠点としてのメリットを職員の方は強調しておられた。
企業見学(沖縄のリーディングカンパニーということで、大変先進的な取り組みもされており、こちらも非常に勉強になった)のあと、夜は懇親会となったが、地元沖縄の社労士さんと同じテーブルになり、大いに話が弾んだ。昼間のIT企業誘致の話になり、こちらは地震が少ないとは知りませんでしたと何気なく話したところ、次の一言で泡盛でほろ酔い気分になっていたのが吹っ飛んだ。「でも戦争になったらココが真っ先に狙われるのですけどね」。
沖縄に住む人にとって、戦争とはかくも身近なものなのか。
そういえば県庁で、IT企業誘致の話に先立って伺った観光振興計画のお話や、観光施設の紹介の中に、ほとんど沖縄戦跡や基地のことが触れられていないのが気になった。
最初は沖縄の人にとっては触れられたくない過去なのかと、複雑な心境を勝手に想像していたが、それは決して過去の遺跡ではなく、現在につながる日常の問題であるからかもしれない。(ある意味広島の原爆ドームが世界遺産になっているのと対照的である)
沖縄の社労士さんからは、基地から地代(大半は日本の税金だが)をもらっている人や、米軍関係者を相手に商売をしている人たちにとってみては、基地がなくなったら困るという感情もあるということ。(普天間基地の返還など、あと50年かかっても実現できるか…とも)また、高失業率といわれても、地元の人間は家族や親戚の援助が受けられるケースも多く、さほど深刻には受け止めていないという現実的なお話も聞くことができた。
私が沖縄に来たのは3回目だが、今回現地に来てはじめて知ることも多く、沖縄の抱える問題の奥深さを感じた。本土に住むものは、感情面での断層の違いにも気づかねばならないと思った。
参考文献:前泊博盛『もっと知りたい本当の沖縄』岩波ブックレット(2008年)
JIPの顧問先企業の人事制度の説明を受けるのが目的であるが、その前に沖縄県庁で、沖縄の産業についてのレクチャーを受けた。
沖縄の産業は、公共事業、基地収入、観光収入によって成り立っているが(3Kといわれているらしい)、最近は情報通信産業・IT関連企業の誘致が活発に進められている。
当初はIT関連企業の中でもコールセンターの比率が多かったが、ここ数年は情報サービス業やソフトウエア開発といった企業の進出が増えているという。
沖縄は全国一失業率が高く(07年は全国平均3.9%に対し、沖縄は7.4%)、特に若年者の失業率が高いのが特徴で(15歳以上29歳未満について、全国平均6.7%に対し、沖縄は12.8%)、一人当たりの県民所得は、本土復帰以降ずっと全国最下位が続いている。
これら情報産業の進出は、雇用の創出という面で大いに期待が集まるところだが、県が誘致を進める理由の一つに、沖縄は日本で一番地震の危険度が低いことがあるという。本土とは断層が異なっているそうである。近年の防災意識の高まりの中で、首都圏に集中している中央官庁や金融機関のデータのバックアップの拠点としてのメリットを職員の方は強調しておられた。
企業見学(沖縄のリーディングカンパニーということで、大変先進的な取り組みもされており、こちらも非常に勉強になった)のあと、夜は懇親会となったが、地元沖縄の社労士さんと同じテーブルになり、大いに話が弾んだ。昼間のIT企業誘致の話になり、こちらは地震が少ないとは知りませんでしたと何気なく話したところ、次の一言で泡盛でほろ酔い気分になっていたのが吹っ飛んだ。「でも戦争になったらココが真っ先に狙われるのですけどね」。
沖縄に住む人にとって、戦争とはかくも身近なものなのか。
そういえば県庁で、IT企業誘致の話に先立って伺った観光振興計画のお話や、観光施設の紹介の中に、ほとんど沖縄戦跡や基地のことが触れられていないのが気になった。
最初は沖縄の人にとっては触れられたくない過去なのかと、複雑な心境を勝手に想像していたが、それは決して過去の遺跡ではなく、現在につながる日常の問題であるからかもしれない。(ある意味広島の原爆ドームが世界遺産になっているのと対照的である)
沖縄の社労士さんからは、基地から地代(大半は日本の税金だが)をもらっている人や、米軍関係者を相手に商売をしている人たちにとってみては、基地がなくなったら困るという感情もあるということ。(普天間基地の返還など、あと50年かかっても実現できるか…とも)また、高失業率といわれても、地元の人間は家族や親戚の援助が受けられるケースも多く、さほど深刻には受け止めていないという現実的なお話も聞くことができた。
私が沖縄に来たのは3回目だが、今回現地に来てはじめて知ることも多く、沖縄の抱える問題の奥深さを感じた。本土に住むものは、感情面での断層の違いにも気づかねばならないと思った。
参考文献:前泊博盛『もっと知りたい本当の沖縄』岩波ブックレット(2008年)