人と仕事を考える

HRM総研代表・八木裕之のブログ

実務と理論

2006-07-30 23:17:25 | Weblog
 名古屋で開かれた日本労務学会の全国大会に出席してきた。同学会は主として大学の研究者が主な構成員であるが、一定の条件のもと、一般社会人も会員となることができる。私も正会員にしてもらって初めての参加であった。
 業務の都合で、プログラム全体の半分ほどしか聞くことができなかったが、いろいろな示唆と刺激を受けることができた。
 米国のジェームス・マジソン大学のギャラガー教授の報告では、米国においても労働者の高齢化が進んでおり、2010年までに55歳から64歳までの労働人口が50%増えるのに対し、35歳から44歳までは10%の減少になる事を捉え、引退する人と仕事との橋渡しに関する政策がとられていることが紹介されていた。その政策内容は、短時間労働や、仕事の転換、雇用形態の変更であったり、確定拠出型の企業年金の問題であったりと、日本と共通する施策も多く見られるようである。
 米国には日本と違い「定年」という概念がないから、より自立(自律)的に自分の職業人生を考えなければならないという事情があるが、日本においても今後高齢者の雇用と活用については、さらに重大な問題となりことは明らかである。

 また、特に最近は社会人として会社勤めをしながら大学院に入って研究をする人も多く、自らの体験と実務に関連したテーマで発表されている方も複数見かけた。
 かくいう私も、2年前までは大学院(博士課程前期課程)に身をおき、一応研究の真似事のようなことをさせてもらう機会があった。同じような境遇の方を見ていると、これからも自分なりに研究を続けられるのではないかと思えてくる。

 映画のせりふではないが、労務管理は人々が働く現場でおきているのであって、研究室で考案された法則に従って、ことが運んでいるわけではない。
 しかしながら、人が社会を形成したときから発生した労働という問題は、労働者の保護に関する考え方や、反対に企業が人材を活用する手法など、一定の理屈・法則のもとにとり行われていることも事実である。現代社会においては、自社の都合のみで人に対するマネジメントを行うことは、ある意味不可能になっている。

 「実践なき理論は空虚である。理論なき実践は無謀である。」―最近仕入れた言葉であるが、一人納得している今日この頃である。

自由業のタイムマネジメント

2006-07-09 23:30:25 | Weblog
 会社員を辞めて独立したとき、気づいたことが二つある。ひとつは給料日がなくなったこと。もうひとつは始業と終業の時間規制がなくなったことである。
 自由業者は究極の成果主義の適用者なのだが、特に後者については仕事をするスタイルが大きく変わる要因となる。平日の昼間に映画を見ようが、散髪に行こうがその時間にお客さんとの約束が入っていなければ、とがめだてされることもない。
反対に仕事が終わらなければ休日もなく働くことになる。
 先日某サウナに行ったとき、「お昼寝プラン」として平日の昼間割引コースのキャンペーンポスターが貼られているのが目に付いた。そこには、「成果が上がればこれもありかな」とのキャッチコピーが書かれていた。いまやサラリーマンといえども成果主義のもとでは、時間管理は各自の腕次第ということか…。

 現在厚生労働省ではホワイトカラーの労働時間管理の方法を見直し、一定の賃金水準を超える労働者については時間管理の概念をなくす、ホワイトカラーエグゼンプションという考えの下に法整備が検討されている。
 確かに現在の労働基準法は、戦後まもなく工場労働者を想定して作られた側面が大きい法律であるので、サービス業化が進んだ今日においては、時間管理になじまない職業も増えている。一方でこのようないわゆる「残業代が出ない」労働契約の設定が可能となったとき、その趣旨を超えた運用による弊害も懸念され、法制化にはなお高いハードルがあるようである。

 一方、自由業者には、もとよりそのような規制は無いので、働き放題、また収入の懸念さえなければ遊んでいてもすべて自己責任である。
 先日私は誕生日をむかえた。また一つ歳を重ねたわけだが、最近では特に誕生日に感慨はなかった。ところが、今年は一つ節目にしようかと思う。
 ついだらだらと、目の前の仕事をこなすスタイルでここまでやってきたが、ここにきてもう一度自分の仕事の仕方や生活習慣を見直して、将来に向けたビジョンを立てるべきではないかと。人にはえらそうにキャリアデザインの重要性を説いたりするが、自分が後10年後に同じスタイルの仕事の仕方でやっていけるのか。これからは毎年、誕生日という人生の経営年度の「期初」に人生設計を考えてみようと思う。
 ちなみに先ほどのサウナは、平日の昼間に行きました。サラリーマンの皆さん、すみません…。