桜屋旅館から11kmぐらい・・・
神山町の気持いい車道を歩いて2時間半・・・
「大桜トンネル」手前で、10数名の職人さんたちが、
休息を取っておられました。
「こんにちは」とあいさつをすると、
「よかったら休んで行かんか」と誘われました。
「せっかくですから、ご一緒させていただきます」
皆さんの輪に入って、座り込みました。
あたたかい味噌汁におにぎりとおしんこが、
私の手元にも配られました。
昨日、おにぎりを処分するという悲しい過ちを犯してしまったため、
今日からは、お昼は持ち歩かないことに決めました。
考えてみると、歩き始めて三日間、
昼食はとっていませんでした。
歩いていると、食べたくなくなるのです。
とびきりの自然の中で、楽しい仲間とおにぎりをぱくつく・・・
最高ですね・・・・
皆さんといろいろなお話をしました。
聞くところによると、今歩いてきた道沿いからこの先の森林公園まで、
1万本のしだれ桜を植樹しているとのこと・・・
10年後には「神山町」をしだれ桜の名所にするのだと、
熱く語ってくださいました。
「よかったら記念に一本植樹していかんか?」
と誘われました。
「はい」と言えばよかったのに、
なぜか遠慮をしてしまいました。残念。
「どこから?」
「京都です」
「京都はいいところでしょ」
「以外と地元に住んでいると、観光地とか知らないのです」
「そんなもんやな・・・
わしらもここに住んでいると、ここの良さが見えんことがある・・・
京都の人から見て、
「神山町」の魅力は、 どんなところや?」
「なんといっても美しい山です。
昨日「焼山寺」できつい思いをして、
やっとふもとに降りてきたとき、
山々が、ほんとうにやさしく包むように、
僕を迎えてくれたんです。
あんなすばらしい感覚を授けてくれる山々は、
「神山町」のたからだと思います。
桜並木ができたらさらに魅力的な町になるでしょうね」
「そう言ってもらえるのがわしらとしては、
一番うれしいね。
いつも見ていると、この景色も当たり前になってしまう。
おかげでわが町の魅力を再確認させてもろた。
ありがとう・・・・
この先も気をつけて、お参りください。
そして、いつか、必ず桜並木を見に戻ってきてください」
「必ずまた来ます。
皆さんも素晴らしい桜並木を完成させてください」
そんな会話を交わして、ひとり一人の方と握手をして別れました。
私が歩きだすと後ろでこんな声がかかりました。
「お遍路さんにたっぷり勇気をもろうたな・・・
さあ仕事を始めようか・・・」
僕は心の中で思いました。
・・・いいえ、勇気をいただいたのは僕のほうです・・・
こんな出会い、歩き遍路の魅力です。