つらつら日暮らし

『浄土布薩式』「大科第十 請師」①(『浄土布薩式』参究19)

ここ数回『浄土布薩式』の本文を学んでいる。当作法は、冒頭で布薩の日程を出した後で、実際の作法に入っていくのだが、今回は「大科第十 請師」の項目を学んでいきたい。

大科第十に請師 其の勧請の詞に曰く、
 一に霊山浄土の釈迦牟尼如来を請し奉る、我の為めに戒和上と成り玉へ、吾れ和上に因る故に、頓教一乗円戒を受けることを得、如来哀愍の故に、来りて道場に入り、一乗の事戒を授与し玉ふ、是の故に礼すること一拝すべし〈仏の生身の御足を礼するの念を作すべし〉。
    『続浄土宗全書』巻15・78~79頁、訓読は原典に従いつつ拙僧


なお、この「請師」項だが、全体で五段になっている。よって、記事1回で一段ごと検討してみたい。まずは、釈尊を勧請しているのだが、その場所が「霊山浄土」とあるため、いわゆる『妙法蓮華経』「如来寿量品」の文脈を採用していることが分かる。それから、釈尊を戒和上にするとは、大乗菩薩戒ではかなり一般的で、それこそ『観普賢菩薩行法経』でもその通りなので、やはり『法華経』系の位置付けだといえよう。

また、「頓教一乗円戒」「一乗の事戒」という表現は、浄土教と天台宗との思想を組み合わせた印象を受ける。特に前者は、「頓教一乗海」という用語が善導和尚『観経疏』に見える表現であるが、「円戒」は明らかに天台宗由来である。なお、「一乗の事戒」は意外と本書以外は容易に見られない。

ただし、この「事戒」を授与されることから、釈尊への礼拝について、「仏の生身の御足を礼するの念を作すべし」という意図が附記されているのである。しかし、「事戒」という表現は難しい。『大智度論』を引いて、十善戒を指す場合もあるが、本書の場合はそうではあるまい。詳細はまた、今後の連載で明らかにされることだろう。

【参考資料】
・宗書保存会『続浄土宗全書』巻15、大正14年
浄土布薩式(新編浄土宗大辞典web版)

仏教 - ブログ村ハッシュタグ
#仏教
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

※ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最近の「仏教・禅宗・曹洞宗」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事