つらつら日暮らし

第二十六条・布施条(『僧尼令』を学ぶ・26)

連載は26回目となる。『養老律令』に収録されている『僧尼令』の本文を見ているが、『僧尼令』は全27条あって、1条ごとに見ていくこととした。まずは、訓読文を挙げて、その後に当方による解説を付してみたい。なお、『令義解』の江戸期版本(塙保己一校訂本・寛政12年[1800]刊行、全10巻で『僧尼令』は巻2に所収)も参照していきたい。

凡そ斎会には、奴婢、牛馬及び兵器を以て、布施に充てることを得ざれ。其れ僧尼も輙く受けることを得ざれ。
    『令義解』14丁裏を参照しつつ当方で訓読


さて、意味として、まず「斎会」への理解が必要であろう。基本的には、僧尼を招き、供養としての斎食を施す法会のことを指す。しかし、その食事に合わせて様々な供物も布施することがあったわけで、その際に、供物として不適切な物を挙げている。奴隷、牛馬、兵器は布施に相応しくないということになる。ただし、牛馬については、明らかな労働力として位置付けられていたと思うが、それを布施してはならないとなっている。

それから、これらの物を布施されたとしても、僧尼はたやすく受けてはならないとしている。

ところで、この一条については、註解が見られるのでそれを見ておきたい。

謂わく、若し違法にして輙く充て、及び之を受けたる人は、各おの違令の罪に当つ。上条の僧尼、財物を畜へし法に准じて、其の物は皆な須く没官するなり。
    同上


まず、上記の通りで、違法な物を施した者、或いは、受けた僧尼の両方について、罰せられることが理解出来ると思う。更に、僧尼の側は、財物を蓄えた罪に引っかかったようである。これは、「第十八条・不得私蓄条」を指していると思われる。その際には、「凡そ僧尼、私に園宅財物を畜え、及び興販出息することを得ざれ」とのみあって、罰則が存在しないのだが、『令義解』を見ていくと、没収すべきだとされているので、この第二十六条でも同様に、没収されることを定めているのである。

この『僧尼令』も残り一条となった。まずは、次回も本文を確認しながら、その内容を検討してみたい。

【参考資料】
・井上・関・土田・青木各氏校注『日本思想大系3 律令』岩波書店・1976年
・『令義解』巻2・塙保己一校(全10巻)寛政12年(1800)本
・釈雲照補注『僧尼令』森江佐七・1882年

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