TAOコンサル『もう一度シネマパラダイス』

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偏屈だが気高く生きる男の衝撃的感動作『グラン・トリノ』

2009年05月07日 | 心に沁みる映画
 クリント・イーストウッドの新作映画を2か月も続けて見るとは、何と幸せなことか。3月封切の監督作品『チェンジリング』については先に書いたが、この『グラン・トリノ』も心に沁みる衝撃的な感動作だ。それに、今回は俳優としての久しぶりの出演である。もう俳優業は控えようと考えていたイーストウッドが脚本を読むなり出演を決断したとのこと。「私を思い浮かべて書いたのではないかと思うような男だ」とイーストウッドは語っているが、自分と似ているこの時代遅れのような男に共感したのだろう。

 主人公ウォルト・コワルスキーは朝鮮戦争に従軍した経験があり、妻に先立たれたばかりの男である。頑固で口が悪く、偏見に満ち、人にも心を許さない。神も信じない。子供たちとも疎遠である。しかし、自分だけの正義感を持って生きている。そんな男が、毎日磨き上げている愛車『グラン・トリノ』を盗もうとした隣に住むモン族の少年と次第に心を通わせる・・・。そして、事件は起きる。それにしてもなんという結末だろう。その衝撃的なラストには圧倒させられるが、ここで語る訳にはいかない・・・。

 主人公コワルスキーの人物設定は、アカデミー監督賞に輝いた『許されざる者』のアウトローや、『ミリオンダラーベイビー』のフランキー・ダンと共通するものが感じられる。それぞれの物語の底辺に流れるのは、何らかの罪を背負って生きてきた男の贖罪の意識と言っていいかも知れない。そう言う意味で、イーストウッドの映画はどれも重いが、観る者を深く静かに感動させる。・・心に沁みる映画だ。」


映画『グラン・トリノ』